コンサルタントが見た海外事業会社のIT事情

2018/01/25
 
エマージング技術グループ ITマネジメント部

国内市場の成熟化に伴い、世界中に日本企業が進出しています。MKIの親会社である三井物産をはじめ、海外に事業会社を持ち、そこから配当収益を得る会社が増えてきました。
MKIには、この4月に開所したMKI-USAヒューストン支店を含め、3か国6都市の海外拠点があります。私たちコンサルティング部門は、こうした海外拠点と連携しながら各国の事業会社におけるIT活用やセキュリティの改善を支援しています。今回はこれらの支援を通じて肌で感じてきた海外IT事情をご紹介します。

 

MKI グループの海外ネットワーク

MKIは、アメリカ、ヨーロッパ、アジアに拠点を置いています

1.セキュリティ意識の高まり

今、世界中どこへ行っても共通した悩みは、サイバー攻撃をどう防ぐかです。ひとたび被害にあえば会社の情報漏洩や信用問題に繋がるほか、事業に支障が出る事態も起こりえます。公開サーバへの攻撃、ウェブサイトの改ざん、振り込め詐欺、ランサムウェアをはじめとするマルウェア等、様々な攻撃に応じた対策が求められます。
一方で事業会社は一社一社の規模が小さいところが多く、ITセキュリティの専任者をアサインできない会社もあります。こうした事業会社に対しては、私たちはアセスメントと定期巡回を行うことでセキュリティレベルが向上するように支援をしています。
セキュリティの基本となるのは「サポート切れのOSやソフトを使わない」「最新のパッチを適用する」「エンドユーザも含めたリテラシ教育を行う」といった一見当たり前のことです。しかしながら海外に多くの拠点を持つ日系企業の本社から「海外のIT現場の運用実態が見えない」というご相談を頂くことも多く、基本的なところからの実地調査と改善支援のニーズがあることを実感しています。
訪問先には、首都ではなく地方都市も多く含まれ、ロシアではシベリア鉄道を使って移動することもあります。対向車両に載る数十台の戦車を見た時には、さすがロシア…と思わされました。またセキュリティ用の機器・ソフトもロシア独自のものが多く、キリル文字と格闘しながら製品の機能調査をすることもあります。

 

地方都市間をシベリア鉄道で移動

 

 

首都モスクワの中心地には近代的なビルが立ち並ぶ

2.世界のサーバルーム事情

システムの基盤となるサーバやネットワーク機器は、データセンタに預けている会社もあれば自社内のサーバルームに設置している会社もあります。少なくとも、最低限のネットワーク機器を格納するサーバラックは大抵どこの会社にもあります。
各社を訪問すると必ずチェックするのがこのサーバルームです。金融系の会社などは各国の金融当局による厳しい監査を乗り越えてきているためか、ケーブルの取り回しやタグ付けなどが非常によく整備されているなと感嘆することが多いです。
対照的なのが、ある販売店を訪ねた時のことです。店舗部分の見た目はとてもきれいで、広々としたスペースが確保されていました。一方でIT部署を訪ねると、2階、いえ、屋根裏部屋のたたみ2畳程のスペースにサーバラックが置かれ、ラックの扉も片方向しか開けられない…という状態でした。ラック内にあるハードウェアも古いものが多く、IT部隊も構成・配線に苦労していました。
このような状態は経営者からはなかなか目につかないところですので、私たちはIT部隊を代弁し、経営者に対してリスクとIT予算の必要性を進言し、改善を促します。

 

限られたスペースで苦労している様子

3.プロジェクト管理

ITセキュリティの専任者をアサインできない会社が多い、という話をしましたが、同じように悩みを抱えているのがプロジェクト管理です。
国内に比べ相対的に規模の小さいことの多い海外では、IT担当者は日々のユーザからの問い合わせ対応や、ネットワーク・サーバ管理といったインフラに強みを持つ方の割合が多く、アプリケーションやプロジェクト管理の専任者はいない会社が多いです。小さな会社では、プロジェクトといっても5年に一度会計システムのリプレースがあるだけというところも多く、そのために専任者を置くのは難しいのが実態です。
専任者の代わりにお抱えのアプリケーションベンダがサポートをしているのですが、ベンダができるのは開発や保守に限られます。会社としての要求仕様を整理してプロジェクトを管理していく機能は、やはりその会社自身に求められる機能です。
 こうした会社に対しては、私たちはプロジェクトの管理を補佐しています。計画を策定し、工程やタスクの細分化を行い、定期巡回やテレビ会議を行って進捗管理やよろず相談に乗ることで、プロジェクトが計画通り完遂するように支援をしています。

 

4.経営者のITのかじ取りを補佐

事業会社支援において一番大切だと感じているのは、私たちはIT部門の支援を通じて経営者を支援している、という意識です。事業会社では日々本当に様々なことが起こっており、邦人出向者をはじめとする経営者の方々は一人で何役もこなしながら対応されています。多忙を極める中で、ITについても色々な悩みを抱えられており、例えばこのような相談を受けます。

 

・他社と比べてうちのIT環境はどうなのか

・IT部隊の選んだ次期基幹システムのパッケージは業態・業務に合っているか

・IT投資は過不足ないだろうか

・IT担当者のスキルは十分だろうか。評価が難しい

・セキュリティ対策は十分だろうか

 


私たちは他の事業会社を幅広く見ている目線、そして技術の会社という立場から、ITの方向性や改善計画を提言して経営者が正しい方向にかじを切っていけるよう支援しています。時には、経営者自身のセキュリティ強化策(複雑なパスワードを強制する、HDDを暗号化する、等)について、IT部隊が「実は直接言いづらかった」と相談してくるケースもあります。経営者だけ特別対応をされているケースは意外と多いのですが、リスクと改善の必要性を確りと伝えれば、苦笑いをしながらも受け入れてくれるものです。

 

5.ITは世界中に活躍の場がある

今やどの会社でも、ITは欠かせないものとして当たり前のように使われています。それはつまり、ITという技術の武器を磨くことでどんな業種の会社に対しても価値を提供できるということです。
事業会社支援で一番やりがいを感じるのは、訪問先のIT部隊からどんどん相談がくるようになったときです。現場に信頼され頼りにされるというのは何にも代えがたい喜びであり、良い関係がつくれた、価値を提供できているんだ、と実感する瞬間でもあります。頂いた相談には技術者としてのプライドと責任を持って丁寧に応え、更なる信頼関係の醸成を目指しています。
何か事件が起きてから報告がくるのではなく、普段からこうしたよろず相談がくる関係作りこそが、「ITガバナンスが効いている」状態ではないでしょうか。物理的にも言語的にも距離のある海外事業会社の管理は本当に大変です。そんな中でもITだけは安心して頂き、「うちはITもしっかり見ているよ」と言って頂けるよう、私たちコンサルティング部門は今日も世界の一社一社を巡っています。
(長いときには10時間、15時間、6時間と3つのフライトを乗り継いで移動することも)  

 

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