不動産業界×IT「不動産テック」とは!?

2018/02/22
 
システム技術グループ カスタマーソリューション第一技術部

そもそも不動産業界とは

「不動産業界」と聞いて、皆さんはどのような仕事を想像するでしょうか。
一番身近なのは、住宅を借りたり買ったりするときにお世話になる不動産会社ではないかと思います。個人の住宅だけでなく、オフィスや店舗を探すための専門の不動産会社もあります。
また、マンションにお住まいの方で管理人さんにお世話になっている方もいらっしゃるでしょう。しっかりと管理されている建物は年数がたっても資産価値が下がりづらい傾向にあります。マンションだけではなく、オフィスや店舗、商業施設、ホテル、公共施設などでも建物管理は必要不可欠です。
不動産業界とは、その名の通り不動産(土地・建物)で私たちの暮らしやビジネスの屋台を支える重要な業界と言えます。
こんな「不動産業界」の仕事を4つに分けて、その内容をご紹介します。

開発

住宅街やオフィスビル、商業施設、ホテル、リゾート施設などを企画し、建築していく仕事です。事業用地の取得から建物の設計、建築およびそれらに関わる様々な事業や関係者をマネジメントしてプロジェクトを推進していきます。
(余談となりますが、まるでシステム開発におけるプロジェクトマネジメントのような印象を受けた方もいらっしゃるかもしれません。基本的なシステム開発技法とは、特に不動産の建設プロセスに大きな影響を受けて構築されてきたとも言われています)
このようにして開発された不動産が、後述する流通や運営管理などの別の仕事に発展していきます。

流通

 

流通の主な仕事は、開発した不動産の販売と仲介です。仲介とは、住宅やオフィスビルなどの不動産を保有する法人や個人の「貸したい・売りたい」オーナーと、その不動産を実際に利用しようとする「借りたい・買いたい」お客様との間で双方の要望を繋ぐ役割を担う仕事です。
オーナーとお客様を引き合わせ、契約条件の調整などを行い、物件の引き渡しまでをサポートします。

運営管理

 

オーナーから委託された賃貸住宅やオフィスビル、商業施設といった不動産の運営全般を担う仕事です。
設備等のメンテナンスや改修工事、賃料交渉や回収、トラブル対応など、不動産運営に必要な全ての業務をオーナーに代わって行います。
この運営を通して不動産そのものの価値を高めることが運営管理業務の目的であり、そのために必要な施策をオーナーに提案することも含まれます。
商業施設などでは集客力を高めるための広告やイベントを立案することも仕事の一つです。

投資

 

不動産を投資対象として賃料収入などの利益を得ようとする仕事が不動産投資です。不動産への投資は他の一般的な投資対象と比較して高額となるケースが多いのですが、その出資額を抑えてリスクを分散させるための仕組みとして生まれたのが「不動産投資信託(REIT)」です。
近年、投資家の要望に応える形で多種多様な投資手法が生み出されてきましたが、その一つとして、不動産は証券化可能な資産として扱われるようになりました。
そのため、不動産投資で成功を収めるための戦略的な運営管理手法が注目されるようになってきています。

不動産業界を支えるIT

不動産業界も他業界と同様にIT化の波が押し寄せています。10年ほど前までは、賃貸物件を探したいと思えば地元の不動産会社に出向いて担当から説明を受け、紹介された物件を下見に行く方法が主流でした。しかし現在ではわざわざ不動産会社まで出向くことなく、パソコンやスマートフォンでどこにいても条件に合った物件を探すことができます。
また不動産会社も、百科事典のような分厚い物件紹介の冊子を常に携帯することはなくなり、お客様の要望に添った物件の情報をスマートデバイスから瞬時に検索できるようになりました。
賃貸物件のオーナーは入居者と家賃を記した帳面から解放され、パソコン上で収支をひと目で管理できるようになりましたし、長期的な視点で収入と支出をどのように計画していけば利益が最も大きくなるか簡単にシミュレーションできるようになりました。
たくさんの住宅やオフィス、商業施設の運営管理を受託している会社であれば、それこそ毎月何千何万という賃料の請求や業者への支払などを処理しており、もはやITなしでは業務を進めることは出来ないと言えるでしょう。

近年、様々なメディアで「不動産テック」という単語を見かける機会が多くなりました。
もともとは、金融の分野において「フィンテック(ファイナンシャル+テクノロジー)」などと呼ばれた「IT技術を活用した業界の刷新」を指す造語が元だそうですが、不動産業界においても同様に、ITを駆使した様々な業務への取り組みのことを「不動産テック」と呼ぶようになってきています。
当社も様々な不動産テックを提供していますが、以下に私が現在までに担当してきた代表的な不動産テックをご紹介します。

パッケージ・ソリューション

 

不動産業務を業態毎に最適化し、パッケージ化して不動産企業に提供している商品です。

・販売システム

・賃貸システム

・仲介システム

・運営管理システム  等々


パッケージ商品といっても、ほとんどの不動産会社はこれらの商品に対して自社特有のカスタマイズを加えて導入しています。各社の業務にマッチしたITを導入することで、業務の効率化や差別化を図っています。
当社では不動産業界向け運営管理システムをパッケージ化し、様々な企業へ導入しています。

セキュリティ

 

近年、様々な業界において個人情報の大量漏洩の事故が頻発しています。

ITによる情報セキュリティ対策は不動産業界に限った話ではありませんが、業務の特性上特に多くの個人情報を扱う必要がある不動産業界では、他業種と比較してもその重要性が高いと考えられます。

※不動産業界において取り扱う可能性がある個人情報の一例

 

    氏名

    住所

    電話番号

    メールアドレス

    家族構成

    勤務先

    年収

    等々

 

 

ひとたび情報漏洩を起こしてしまえば、お客様への多大な影響と社会的信用の失墜は免れません。そのために多くのコストを費やすとしても、セキュリティ対策は不動産各社にとって避けては通れないものとなってきています。

インフラ

 

ITを支えるインフラも重要な不動産テックの一部と言えます。
当社が提供するデータセンターサービスは、高信頼のセキュリティと高品質なノウハウによって、お客様に安心してITをご利用いただくことが可能です。
また近年ではデータセンターサービスだけでなく、各種プラットフォームを活用し、プライベートなオンプレミス型からパブリッククラウド型まで不動産業界の様々なニーズに対し柔軟にサービスの提供を行っています。

不動産テックの今後

 

AI

 

急速に広まっている「AI」技術は、不動産業界にも浸透してきています。膨大な物件情報から不動産価格や賃料を蓄積し学習することによって、目的の物件の査定価格や家賃をシミュレートするサービスは既に各社が開始しています。また不動産投資シミュレータにAIを組み入れることによって、投資リスクを最小限に抑える試みもなされています。
現在の不動産仲介業務においては、「宅地建物取引業法」により「対面での重要事項説明」と「書面による交付」が義務付けられていますが、インターネットによる説明と交付が可能となるよう規制制度改革の動きが始まっています(※)。このような国の取り組みが追い風となり、今まではどうしても人が対面で対応せざるを得なかった業務が非対面で行えることとなるため、顧客への説明や問合せ対応などの仕事は今後、AIが担当していくことも考えられます。
※参考:国土交通省ホームページ “ITを活用した重要事項説明等に関する取組み“
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000092.html

ビッグデータ

 

ITの発展により、今まで蓄積はしていても活用が難しかった各種の膨大な業務データの分析と有効利用が進んでいくと考えられています。
不動産の過去の取引価格や賃料、面積、立地条件、入居したお客様の情報はもちろん、商業施設のPOSデータ(商品をレジに通す際に作成されるデータ)やビル内の空調設定の記録まで、様々なデータを分析することによって、新しいサービスの創生や既存業務の効率化に繋がるのではないかと期待が寄せられています。

VR・AR

「VR(ヴァーチャル・リアリティ)」技術を活用した不動産テックとして「物件内覧」サービスを開始した企業もあります。
今までは不動産会社立ち会いのもと現地に足を運んで確認するしか手段が無かった物件の内覧を、スマートフォンを使用してどこからでも簡単に実現できるようになり、物件を探している人にとっては、今までより少ない労力でより多くの物件を確認できるメリットがあります。
また不動産会社も希望者を現地に連れて回る必要が少なくなり、業務効率化や人件費の削減に効果が期待できます。

IoT

 

IoTとは俗に「モノのインターネット」と呼ばれます。
スマートフォンやタブレット端末のような身近なデバイスから、テレビやエアコン、ドアなどの家具まで、様々な「モノ」をインターネットに接続する技術を指します。
不動産IoTを代表する事例として、スマートフォンを物件の「鍵」代わりにするサービスが開始されています。
既に述べたように、賃貸物件の内覧には不動産仲介会社の担当者が立ち会う必要があります。これは物件の「鍵」を管理しているのが不動産仲介会社であるためです。それがスマートフォンを鍵代わりにすることで、特定の人に特定の時間だけ鍵を付与することが可能になりました。このことにより、不動産仲介会社は鍵の実物保管から解放され、内覧に立ち会う必要が無くなり、また鍵の盗難、紛失リスクも無くなりました。

おわりに

このように、我々にとって非常に身近で重要な不動産業界でも着実にIT化が進んでいます。
いつか、不動産会社も店舗すら構えることなく、インターネット上で不動産の売買が行えるようになる日がやってくるかもしれません。
当社は長年培った不動産業界の知識とIT企業としての知見を活かして、「不動産×IT」がもたらす不動産テックの未来にこれからも貢献していきます。

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