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Project03

クラウド型省エネルギーマネジメントサービス 「GeM2」

快適な環境提供とコスト削減を可能にした「クラウド型省エネルギーマネジメントサービス」で、既存の空調設備を改造することなくクラウドからの自動制御による大幅な空調費削減を実現する。

*GeM2(ジェムツー):Green energy Management by MKI
*クラウド型サービス:インターネットを利用したデータ管理、アプリケーション提供サービス

高い快適性が要求されるシネマコンプレックス。 劇場の快適な空調サービスを実現する。

従来のデマンドコントローラー(電力需給者の最大値を抑えるための装置)のような発停管理だけでなく、温度やモードなどのきめ細かい制御で、快適さを維持しながら大幅な省エネを可能にする「GeM2」。全国の家電量販店への導入を開始し、順調に実績を積み上げてきた。その実績をベースに、よりきめ細やかな快適性が求められるシネマコンプレックスへの導入をミッションとしたプロジェクトが立ち上がった。
2009年にシネマコンプレックスを運営する松竹マルチプレックスシアターズ様での実証試験がスタートし、2010年から「GeM2」の導入が決定した。そうした実績が評価され、その後TOHOシネマズ様へと拡販していった。全国のシネマコンプレックスへの導入シェアは40%を超えている。そして、現在もある国内大手シネコンへの導入を進めている状況だ。その舞台裏では失敗を恐れず強い意志で、プロジェクトに取り組んだメンバーたちの力があった。

「最初のご提案から導入決定まで、数カ月かかることはよくあり、長ければ1年近くかかることも珍しくありません」と語るのは営業の河野だ。シネマコンプレックスは、ショッピングモールに入っている複数のスクリーンを持つ映画館。当然、導入に際してはショッピングモールなど他のオーナーの承諾が必要になる。またショッピングモールはすでに空調機器が設置されており、その空調機器メーカーが保守運用を担当している。
「オーナーさんは既存設備を変更することに消極的ですし、空調機器メーカーは省エネ対策なら自社で行っているという理由で、最初はあまり協力的でない場合があります」と技術担当の野﨑はいう。そうしたシステム導入の関係者を地道に説得していくところからミッションが始まっていく。電力機器に計測機器を設置したりするため、配線などの電気の知識はもちろん、建築の知識も必要になる。幅広い知識とコミュニケーション力が求められる仕事である。

「省エネを前面に出してアピールするのではなく、お客様の課題のすべてを把握して共有し、課題解決策を明確に出していくことで良好な関係づくりをしていくのです。お客様と一体になることができなければ、関係各所に納得してもらえません」という河野の言葉に、野﨑が続く。「すぐに納得してもらうというより、お客様の課題を解決してより快適な空間を実現するために、関係各所との協力体制を築いていきます。相手の立場も尊重しつつ、力を合わせればよりよい結果が出ることを理解してもらうのです」

人の感覚に依存する部分が大きい快適性。その快適性を維持しながら空調コストを約30%削減。

「『GeM2』はクラウドサービスですので、現地に設置する設備はとてもコンパクトで、さほど場所をとりません。この機器を設置するまでの各種の調整が大変なのですが、本当に大変なのはもちろん設置した後です」と河野。暑い寒いという感覚は個人差があり、人の感覚に依存する部分が大きい。また、建物の構造、観客数、人の動き方などによって温度は大きく変わってくる。年によって猛暑だったりという気象条件も影響する。こうした要因に対して、きめ細かい対応をシステム上で実現していくのである。
「GeM2」の最大の特長は、スペースごとにきめ細かく無駄やムラを省くことで、空間の快適性を維持しながら空調コストを削減できる点にある。それを実現していくためには、建物の特性や使われ方、電気・ガスなど空調利用に伴うエネルギー使用状況、室温や外気温の変化や推移などのデータを収集する必要がある。「導入3カ月は、データを取るために実証試験期間を設けています。その間に収集したデータをベースにしたアルゴリズムによる管理によって、快適さを提供し省エネに結びつけていく。それらをクラウド環境上で提供するのが『GeM2』なのです」と野﨑。

GeM2制御盤設置状況

「どんなにデータを取得し管理していても、劇場のお客様から個別のご要望があった場合などは、空調システムを一時的に停止することもあります。劇場の場合、最悪のケースはクレームによる料金の払い戻しということもありえますので、きめ細やかな対応や個別の設定が必要なのです。さまざまなケースを想定しながら、安定したエネルギーマネジメントの実現を考えていきます。そうした積み重ねが、快適さと省エネを両立させていく秘訣です」と河野は語る。
「導入後、空調機器に何か問題が生じた時などは、まず私たちに連絡がすぐにきます。空調設備の運用・保守の窓口としての役割も担っていますね」と笑いながら野﨑。本サービスが、いかに信頼されているかの証である。空調管理ではなく空調機器そのものに問題がある場合などは、空調機器メーカーと連絡を取り合って対応策を一緒に考えていく。「問題が私たちのシステムにあるのか、空調機器などによって生じているのか。原因をスピーディーかつ的確に探して、ベストな対応をするとこが、エネルギーマネジメントサービスを提供する私たちの使命なのです」と河野は語る。

MKIだからできるエネルギーマネジメントサービスは、未来に向けて進化・発展していく。

「現在、省エネに関連する事業者は星の数ほどあるといっても過言ではありません」と野﨑。その中で、「GeM2」のシェアが拡大しているのは、メンバーたちの推進力であることは間違いない。また「GeM2」というサービスを実現できた背景には、アプリケーションに定評があった企業、コンピュータによるシステム監視とプロセス制御を行うSCADA(監視制御システム)に強みを持つ企業、ネットワーク技術を得意とする企業の幅広い技術領域を集約しているMKIの歩みにある。「自社ナレッジを最大限に活用したサービスであり、私たちだからこそ提供できるサービスだという自負があります」と西村はいう。

ICT企業としてさまざまな技術を融合させたサービスだからこそ、単なる省エネシステムの提供だけでなく、快適性を維持したコスト削減を可能にしているのだ。「今では、センサーを増やしたい、既存の空調機器にインバーター機能を付加したいといった相談もあります。お客様と私たちが目指す方向が同じだから信頼関係も深くなっていきます」と野﨑。
「現在は、ある国内大手シネコンの半分以上の劇場への導入が決定しています。残りの劇場も将来に向けて導入を前向きに検討いただいている段階です。今後は先に導入した劇場のデータが判断基準になってきますので、きちんと数字を出していかなければいけないと、気持ちを引き締め直しています」と河野はいう。
「GeM2」は国内での実績を確立しつつあり、今後は海外への展開も視野に入れているという。「まずはアジア地域で、シンガポールのシネマコンプレックスで実証実験をスタートさせる。また、アメリカではマーケットリサーチを始めたところです。海外は日本以上に競合が多くて厳しい環境ですが、シネマコンプレックスの数は日本より多く、そのマーケットはとても魅力です」と西村。「GeM2」は受託開発というスタイルの事業ではなくサービス型の事業だ。マーケットの状況やニーズ、さらなる新技術の融合によって日々進化していく。西村は「「GeM2」のプロジェクトはそれ単体で終わりではなく、今後のMKIの柱の一つとなることを目指したスマートサービス事業の先駆けとして、重要なビジネスです。このビジネスを成功に結びつけていくために、一人ひとりがさらなるスキル向上に努めていますし、スペシャリストとして活躍してくれる人材を今以上に増やしていきたいと考えています」と語る。

電力の自由化を見据えた制御分野の拡大と、スマートグリッド対応に向けた、事業展望。

「GeM2」は空調コストの削減をメインとした需要家向けクラウドサービスとして展開しているが、供給サイドである再生可能エネルギー事業向けにメガソーラー発電所の遠隔監視クラウドサービスもスタートさせている。複数の大手事業者の標準監視システムとして採用されるなど、そちらもダイナミックな展開が実現している。さらに今後は工場などの電力監視から、再生可能エネルギーと蓄電制御の組み合わせなどの分野へ拡大していくことを考えている。その先にあるのは、電力の自由化を視野に入れた、MKI独自クラウドによる仮想発電所・アグリゲーター(需要家の節電量を取りまとめる中間業者)や電力最適化ビジネスへの参入を目指している。また、リモートによる制御サービス技術とインフラ機器を組み合わせたガス・水道、LED街路灯、防犯・災害対策など、スマートシティ分野でのM2M事業の拡大にも積極的だ。
「『GeM2』はそのための導入部分です。今は、ICTという武器を持って、異業種の人と接していくことで、さまざまなノウハウを蓄えている段階です。それらを一つひとつ確実にクリアしていく先に、スマートサービスVisionの実現があるのです」と西村は熱く語った。

*スマートグリッド(次世代送電網):通信機能を活用して、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる送電網

Profile of the project members

※内容は、取材当時のものです。