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徳川美術館とMKI、スマホとWi-Fiを利用した美術館ガイドの実証実験

Wi-Fi提供にとどまらない付加価値を評価

 今年、開館80周年を迎える徳川美術館は、愛知県名古屋市東区に位置する私立美術館である。同館は徳川家康の遺品(駿府御分物)を中心に、徳川御三家筆頭で徳川家康の九男・徳川義直を祖とする尾張徳川家伝来の大名道具を所蔵。この分野では質・量とともに日本有数のコレクションを誇り、国内外の美術ファンから高く評価されている。最近ではFacebookなどソーシャルメディアでの双方向プロモーションにも力を入れており、進取の気性に富んだ美術館でもある。

徳川美術館  同館では、公共性の高い施設としての使命感から、以前より無料Wi-Fiの提供を検討してきた。しかし、「Wi-Fi機能だけでは物足りない」と逡巡していたところへ、三井情報株式会社(以下、MKI)から実証実験協力の依頼があった。無料Wi-Fiを提供し、そこで取得できる来館者の位置情報を活用して、展示物にまつわるガイド、トリビア情報、レコメンド情報などを館内用Wi-Fiロケーションアプリから配信するとともに、来館者に関する統計データ分析を行う。このような付加価値に魅力を感じて徳川美術館は協力を快諾した。公益財団法人 徳川黎明会 会長・徳川美術館 館長 徳川義崇氏は次のように語る。

 「MKIの提案には、無料Wi-Fiの提供以上の付加価値がありました。例えば情報のプッシュ配信。これまで展示物情報の提供には音声ガイドがありましたが、これは音声のみ。しかし、プッシュ配信では、テキスト、静止画、動画、音声などさまざまなメディアを駆使できます。それもお客様の趣向に合わせた情報を配信できるかもしれません。ただ、お客様の目を展示物から離してしまう懸念はあり、実はこれまで美術館は展示室内で電話やスマートフォンは禁止という立場でした。しかし、変革の時期かもしれない、取り組むなら先駆けて、と、一歩踏み出すことにしました」
 徳川氏がもう一つ大きく期待している点が、取得した位置情報データの統計的利用だ。従来は、来館者の数はチケット販売で把握できたが、その滞在時間や属性について、正確につかむことは不可能だった。しかし、位置情報が取得できれば、来館者がどの展示物をどれだけ時間をかけて閲覧したかといった細かなデータを把握できる。それは、今後の企画展示やマーケティング施策を考える上で重要な参考資料となる可能性がある。

徳川美術館
徳川美術館

異業種コラボなど、さらなる可能性を秘める

 実証実験は2005年1月9日に無料Wi-Fi提供がスタート、3月から館内用Wi-Fiロケーションアプリによる情報配信サービスが始まった。まだ実証実験のさなかではあるが、徳川氏は現時点での評価を次のように語る。
 「チューニングを進めていけば、室内でも精度高く位置情報を取得できるレベルの高いシステムだなと感じています。専用アプリを使った機能の検証はこれからになりますが、そこで配信する情報のあり方や、取得できた位置情報の分析方法、活用方法なども含めて、MKIには引き続き強力な支援をお願いしたいですね」
 一方、美術館でWi-Fiロケーションサービスを担当する、公益財団法人 徳川黎明会 徳川美術館 企画推進部 係長 鈴木裕之氏はこう語る。
 「展示物情報のプッシュ配信では、コンテンツ管理を行う必要があります。美術館の場合、コンテンツは数百単位になるので作業効率は非常に重要です。このシステムは非常に分かりやすく使いやすいので、大量の展示替えの際も問題なく対処できると思います。多言語対応も音声ガイドより容易になりそうで、こちらにも期待しています」
 実は、最近、あるブラウザゲームに徳川美術館所蔵の刀剣が登場。これを見ようと若い来館者が急激に増えているという。将来は、美術館とゲームメーカー、Wi-Fiロケーションサービスのコラボレーション、などというのも実現するかもしれない。今回の取り組みは、地方自治体や他の美術館からも注目を集めているといい、まさに観光×ICTの今後を占う実証実験となっている。

公益財団法人 徳川黎明会 会長 徳川美術館 館長 徳川 義崇氏 公益財団法人 徳川黎明会 徳川美術館 企画推進部 係長 鈴木 裕之氏