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特別インタビュー 4年に1度の感動と安心のために

スポーツの感動体験をICTで高める

—2020年のスポーツの祭典まであと5年となりました。今回、ICTの観点から何がキーポイントになると予測されていますか。

三井情報株式会社 ビジネスアライアンス部  企画管理室 室長  伊藤  章

伊藤  大きく二つあります。一つは、スポーツそのものの感動体験を高めるICTの提案です。本質的な「おもてなし」ですね。その頃には4Kや8Kといった超高精細映像技術が普及段階に入っているでしょうし、それに対応する映像配信関連テクノロジーも伸びていると予測されます。

スポーツの映像配信に関して、画像情報もさることながら、選手の属性情報やチームの戦績といった文字情報も非常に重要です。それによってより深く試合を観戦することができるからです。こうした情報を、テレビやインターネットで観戦している人々のみならず試合会場にいる人々にも届けられるテクノロジーに、スタジアムWi-Fiソリューションがあります。

—MKIではすでに株式会社楽天野球団様に導入した実績がありますね。

伊藤  はい。球場のような人口が密集する環境では、Wi-Fiは途切れたり繋がりにくい状況に陥りがちですが、MKIが提供するスタジアムWi-Fiソリューションはスタジアム向けの設計で観客は球場内でWi-Fiをスムーズに使うことができます。このWi-Fiインフラを活かして、球場側では様々なファンサービス、例えば専用アプリで試合のビデオを再生できるサービスや試合情報の提供が可能になります。オンラインで飲食グッズを購入することもできます。先行している米国球場の例では、注文した飲食品を売店で並ばずに受け取れたり、ホームランが出たときに発売される特別商品をすぐさま手に入れられたり、とファンサービスの目線でICTが活用されています。これはまた運営側にとっても収益向上策の一環となっています。

安全を守るために多くの"目"を持つ

—もう一つは何でしょうか

伊藤  セキュリティです。近年、世界的なスポーツイベントはテロの標的になりやすいため、開催期間中の安全を高いレベルで守ることは非常に重要なテーマです。これはもはやイベント会場周辺だけの問題ではなく、ホストする都市または国全体で考えるべきことです。

—具体的に、どう対策すればよいでしょうか。

伊藤  ベースとなるのは、迅速に異変を検知するための"目"を多く持つことです。人海戦術には限界があるので、この分野では進化の著しいIPカメラが有力な対応策になります。MKIは、2005年開催の愛知万博でもIPカメラ敷設に携わりましたが、当時はまだ白黒画像で画素数も粗く、「何か不審物が映っている」というレベルの画像情報が関の山でした。しかし今は1,000万画素級の高精細カメラが登場し、カラー画像で人の手の中にある紙幣の種類まではっきり分かるようになりました。しかも、ネットワークスイッチの進化で、複数のカメラ画像の高速切り替えが可能です。動き始めた鉄道や不審者を追いかけたいというときに大きな威力を発揮します。

三井情報株式会社 ビジネスアライアンス部  企画管理室 室長  伊藤  章

さらに、これまではカメラ専用のネットワークを敷設していましたが、MKIが提供するIPカメラ統合ネットワークソリューションは業務用ネットワークインフラとの統合敷設が可能です。これはSPB(Shortest Path Bridging)と呼ばれるネットワーク仮想化技術をベースとしたもので、簡単な設定でネットワークレイアウトを変更・拡張できるのです。「将来的にデジタルサイネージ用ネットワークを追加したい」といった場合も簡単に追加することができます。MKIは、このソリューションを、IPカメラはパナソニックシステムネットワークス株式会社、ネットワーク機器はAVAYAといったそれぞれの分野で強みを持つベンダーと協力しながら展開しています。鉄道や都市、商業施設、さまざまな単位で導入可能です。

ネットワーク中のデータはビッグデータ解析素材"目"を持つ

—このソリューションにおけるMKIの役割は、ネットワーク構築ですか。

伊藤  もちろん、それもあります。加えて、この統合ネットワークに集まってくる非構造化データを構造化し、有用な情報として顧客に届ける。このようなビッグデータ解析にまで踏み込んでこそ、MKIが関わる意義があるといえるのではないかと思っています。

例えばIPカメラは、画像を送るだけでなく熱や衝撃などを検知するセンサーとしても機能し始めており、ネットワークで取得できるデータの幅が大きく広がっています。これはまさにIoT(Internet of Things)。取り組みとしてはかっこうのテーマなのです。

—なるほど。

伊藤  ビッグデータ解析分野では、すでにMKIには需要予測/自動発注ソリューションという形で実績があります。過去の実績データや関連データを素材に需要の予測、在庫の把握、発注量の決定といった発注業務を強力にサポートし、効率化できるソリューションです。

実は、ビッグデータ解析技術では賞も獲得しています。「SAP HANA INNOVATION AWARD」といって、インメモリコンピューティング SAP HANAを使って、革新的なビジネスシナリオやビジネスアプリケーションを創造するというコンペティションがあるんですが、その2015年大会のTechnology Trailblazer(技術先駆者)部門ビジネスアプリケーションで世界第3位になりました。Technology Trailblazer部門はビッグデータ/IoT活用がテーマで、私たちはインテリジェントサーチエンジンを提出したのです。

今後はビッグデータの活用コンサルティングもMKI、そういっていただけるように努力していきたいですね。

「イベント後」への目配りも重要

—こう見てくると、2020年のスポーツの祭典は、MKIを含め日本のICT企業にとって大きなビジネスチャンスですね。

伊藤  確かにそうですが、留意点もあります。ソリューションをそのイベントだけに照準を合わせないということです。一過性の投資ではなく、その後も継続してビジネスとして成り立たせることができるか。そこは事前に十分検討しておかなければなりません。どこまで遠目が効くかが、ソリューションを創造するICT企業の真価となってくると思います。