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子どもを守り育てるICT

町全体で子どもを育てる保育園

東京都中央区人形町。江戸の情緒がそこはかとなく残る町の中に「まちのてらこや」はある。オフィスビルの一角ながら、入口には老舗を思わせる商標入りの黄色いのれん。室内も木と畳が取り入れられた和風のしつらいで、明るくなごめる空間となっている。ここは、どこか懐かしくて新しい子どもたちの居場所だ。小規模の保育園と学童保育を併設しており、「まちのみんなが先生で、まち全体が保育園」というコンセプトのもと、町全体で子どもたちの成長をサポートすることをめざしている。

代表を務めるのは、新進気鋭の起業家 高原友美氏だ。同氏は幼いときから紛争や貧困で苦しむ人々を助けたいという思いが強かった。産業や仕事を作り出すことでそうした国々をサポートしようと三井物産に入社した。同社ではブラジルの金属工場の経営支援や新規鉱山開発に従事、産業創出で街が劇的に発展するさまを目の当たりにして感銘を受けたという。

その一方で同氏は日本の未来にも思いをはせていた。この先この国をもっと良くするにはどうしたらよいかを考える中で目をむけたのが、女性の社会進出や仕事と育児の両立という課題だった。そこで、町全体で子育てにかかわることで働く女性をサポートする「まちのてらこや」を構想した。

2015年9月、まちのてらこや保育園を開設。朝の準備が大変な他の保育園と異なり、両親は手ぶらで子どもを預けられ、また街の人々と子供たちが積極的に交流するというこれまでにない特徴も話題を呼んで、開園やいなや続々と入園希望が寄せられた。現在、高原氏自らも保育の現場で子どもたちと触れ合う忙しい日々を送っている。

kidsnote

「きっずノート」でリアルタイム交流を

保育園には、子どもの保護者とコミュニケーションを図るために連絡帳という仕組みがある。これは、子どもを預けるときにその日の体調や様子を保育士へ報告したり、保育園から園での子供たちの様子を保護者に報告するものだ。

これまで連絡帳といえば文字どおり紙でやりとりされていたが、高原氏は「まちのてらこや」開園にあたってMKIの提供する連絡帳アプリ「きっずノート」を採用した。高原氏はその理由を次のように語る。

「『まちのてらこや』を立ち上げる前、経験を積むために別の保育園で実習を行っていたのですが、紙の連絡帳だと、朝保護者から保育園に提出いただいて、夕方保育園から保護者にお返しするといった具合に、一日一往復しかできません。でも、毎日ご報告したいことはもっとたくさんあるんですよね。それもリアルタイムにです。

たとえば健康の問題。子どもの体調は変化しやすいので、朝、子どもの調子が少しよくなかったとしたら、その後どうなったか保護者はずっと心配だと思いますし、園で毎日どのような昼食やおやつを食べているか、元気に遊んでいるかといったところも気になるところだと思います。

こうしたアプリを使えば写真つきでその場その場で送ることができますし、LINEのように往復を繰り返すやりとりも可能です。保護者の方も、電話だと仕事場では出にくいかもしれませんが、スマートフォンやタブレット端末を通じたメッセージなら、すきま時間に見ていただけると思いました」

また、別の理由として高原氏が前職時代からICTになじみ、その利便性を引き続き保育の世界でも生かしたいと思っていたこともある。また、子どもたちの保護者もすでにデジタル世代で、ICTを使ったコミュニケーションに支障がなかったことも同氏の背中を押したという。

当時、類似する製品やサービスは他に存在せず、「きっずノート」はこれまでになかったコミュニケーションを可能にするツールとして「まちのてらこや」に選ばれたのだった。

「きっずノート」の概要

紙の連絡帳と違い、保護者とリアルタイムにやりとりできる点が魅力

それでは「きっずノート」とは具体的にどのようなアプリケーションなのか。

画面①は、「きっずノート」トップのサンプル画面だ。連絡帳、お知らせ、アルバム、カレンダー、本日の食事、文書などの機能で構成されている。

連絡帳は、これまでの紙の連絡帳に替えて保護者と保育園や幼稚園の間での相互報告に利用できる。そこでは、機嫌や体調などルーティン項目に関してドロップダウンリストから選ぶだけで入力でき、手間が極力省けるようになっている(画面②)。連絡帳にはまた画像を添付することが可能で、園での子どもの様子や特に画面で伝えたいことなどをいつでも保護者に送信することができる(画面③)。

お知らせは、園からの一斉同報機能だ。伝えたい内容が簡単に入力可能で、送信先も、全園児の保護者、特定クラスの保護者など、柔軟に設定できる(画面④・画面⑤)。ここで遠足などイベント情報が入力された場合、その情報はカレンダー機能にも反映される。

一方、アルバムは子どもたちの写真を保護者へ共有できる機能である。スマートフォンなどで撮った写真を簡単にアップロードでき、子どもたちのとっておきの表情やしぐさをリアルタイムに保護者に伝えられる。

画面 画面

カレンダーは、文字どおり園の予定を入力したり、子どもたちの誕生日を書き入れて備忘録とすることができる。入力する情報が住所を伴っている場合、それを地図情報として表示することも可能だ。
(画面⑥・画面⑦)

本日の食事は、園で提供した食事を保護者に知らせる機能だ(画面⑧)。これもスマートフォンで撮った写真を簡単にアップロードできる。子どもの食事に関心の高い保護者は多く、重要な機能の一つとなっている。

保護者や祖父母から感激の声

導入から約半年、「きっずノート」の利用は「まちのてらこや」の運営にどのような効果をもたらしているだろうか。

「保護者の方からはとても喜ばれています。特に写真つきでわが子の様子を毎日把握できるのは画期的、とおっしゃってくださいますね。遠くに住んでおられるおじいちゃん、おばあちゃんもきっずノートからお孫さんの写真を見れるんですよ。孫に会いたいけれどなかなか行き来は難しい、というケースは多いと思いますが、『スマートフォンで、日々孫の成長を確認できる!』と感激の声が届いています」

これらはまさにICTだから実現できるメリットだ。ただ、課題がまったくないというわけではない。これまで保育の世界では、あまりICTの導入が進んでこなかった。そのため、ベテランの保育士ほど紙の連絡帳に慣れており、スマートフォンやタブレット端末の活用に関しては習熟の過程にあるのが現実だ。研修機会を持てればいいのだが、毎日多忙な保育士がそのためだけに時間を確保するのは難しい。

園の入口には道行く人の目を引く黄色いのれん

「今後アプリの利用は主流になる」

それでも、顧客満足度向上という観点から見れば、こうした連絡帳アプリの利用は今後主流になっていくと高原氏は見ている。将来的には保育園を比較するポイントともなる可能性もあるため、このまま使い続けていくというのが同氏の意向だ。

「また、今後『まちのてらこや』は徐々に水平展開していく予定です。そのとき、私が代表としてすべての保育園の様子を網羅的につかもうとするなら、やはりこうしたアプリを駆使するのが一番です。ありがたいことにMKI担当者のサポートは手厚く、私たちの要望にも真剣に耳を傾けてくれるので、これからも『まちのてらこや』と『きっずノート』、一緒に成長していけたらいいですね」(高原氏)

「きっずノート」が実現したのは、子どもを真ん中に置いた保護者と保育園間のリアルタイムかつ視覚的な情報リレーだ。閉鎖的になりがちだった日本の保育に、変化の兆しが育っている。

代表 高原 友美氏

まちのてらこや
代表  高原 友美氏

1984年生まれ、31歳。岡山県倉敷市出身。2007年3月、お茶の水女子大学卒業。2007年4月より7年間、三井物産株式会社に勤務。金属資源の輸出入、ブラジルでの金属資源開発案件などを担当。2014年4月に退職し、6月に株式会社サムライウーマンを設立。