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ニュースリリース
2010/07/14
三井情報株式会社

生体内脂質のハイスループット自動同定ソフトウェア
「Lipid Search」世界で初めて開発し販売を開始

-脂質関連疾患の病因解明の鍵となる生体内脂質の研究を飛躍的に推進-

【概 要】
 東京大学大学院医学系研究科田口研究室は、三井情報株式会社(代表取締役社長:下牧拓、以下MKI)と共同で大量の質量分析データから生体内脂質分子を一括して自動同定する脂質同定(注1)ツール「Lipid Search」の開発に成功しました。今回の技術開発により、核酸や蛋白質だけでは説明できない複雑な生命現象の解明や、メタボリックシンドロームや動脈硬化などの脂質関連疾患の病態解明、病態の進行度や生活改善の指標となるマーカー探索が飛躍的に加速すると期待されます。
 当ツールはMKIよりパッケージソフト「Lipid Search」として、脂質解析の研究へ取り組む製薬メーカーや食品メーカー向けに本日より販売を開始いたしました。(注2)

ソフトウェア開発概要

1. 核酸(DNA)、タンパク質の分野では、それぞれ網羅的解析技術が開発され研究が飛躍的に進展してきたが、代謝産物の1つである生体内脂質(注3)についてはそのような技術は存在せず、長らくその開発が望まれていた。
2. 構造が極めて不特定で多岐に渡る脂質分子の網羅的解析(注4)システムLipid Searchが開発されたことで、今まで難しいとされていた脂質関連疾患の病態解明や診断法、新薬開発の飛躍的進展が期待される。
3. Lipid Searchでは既知の脂質のみでなく未知脂質まで同定が可能である。以下の4点が大きな特長となる。
  ・ 分析機器に依存せず生データを直接取り込む機能を搭載
  ・ カスタマイズ、拡張が容易な脂質データベースを搭載
  ・ 高同定精度を実現するスコアリングアルゴリズムを搭載
  ・ 脂質の量的情報を明らかにする定量アルゴリズムを搭載

発表者
東京大学大学院医学系研究科 特任教授 田口 良

 

【開発の背景・経緯】
 細胞の働きや病態等の表現型を理解するためには、DNA 配列の網羅的解析(ゲノム解析)やタンパク質の網羅的解析(プロテオーム解析)に加え、糖、アミノ酸、脂質など代謝物質の網羅的解析(メタボローム解析)が極めて重要になります。核酸やタンパク質は既に解析手法が確立され、解析ソフトウェアやデータベースが豊富に存在し、ハイスループットな解析を行う環境が整備されています。一方、脂質に関しては、データベースの整備が進みつつあるものの、解析ソフトウェアに関しては未だ発展途上であり、分子を同定するためのデータベースと種々の測定データに対応した検索エンジンを含む効率的なソフトウェアの開発が長らく望まれてきました。

【共同開発の内容】
 本ツールは、東大田口研究室で開発された脂質データベースをもとに、MKIが持つ波形解析ソフトウェアMass Navigator※1を質量分析データの読み込みに利用し、脂質の同定までを自動で行うソフトウェアとして共同開発※2いたしました。

※1 Mass Navigatorは平成15~17年度NEDO助成プロジェクト「バイオインフォティクスと融合した先進的プロテオミクスプラットフォームの創造」において、エーザイ(株)シーズ研究所と共同開発した製品です。
※2 一部機能はJST CREST「脂質メタボロームのための基盤技術の構築とその適用」助成プロジェクトにて開発しています。

【開発の内容】
 近年の質量分析技術(注5)の発展により、生体内脂質の一斉同時解析が可能となり、豊富な実験データが得られるようになりました。そこで我々は、脂質を対象とした大量の質量分析データを直接読込み、試料中に含まれる脂質を一括して同定、解析する脂質同定ツールを開発しました。本ソフトウェアはWebアプリケーション形式で、以下の4種類のコンポーネントとこれらコンポーネントを操作するWebインタフェースから構成されています(「図 Lipid Search構成」参照)。

1. 波形解析モジュール・・・脂質の質量分析データを読み込み、適切な脂質ピークを選択するモジュール。
2. 脂質データベース・・・脂質の仮想構造を保持するデータベース。
3. 脂質同定モジュール・・・抽出した脂質ピークと脂質データベースを照合し、試料内に存在する脂質を同定するモジュール。
4. 脂質定量モジュール・・・同定された脂質の定量情報を計算するモジュール。

 

図 Lipid Search構成

図 Lipid Search構成

1. 波形解析モジュール
 質量分析器が出力する生データはそのままでは同定処理に用いることができません。通常生データファイルは各機器独自のフォーマットで出力されるため、多くの質量分析データ解析ソフトウェアでは、解析の前に各機器メーカーが用意するソフトウェアを用いてテキスト形式のファイルを作成する必要があります。当モジュールは、研究者の手間を回避するため、機器メーカーに依存せずに生データを直接読み込んでピーク抽出処理を行い、同定までシームレスに行える機能を提供しています。

2. 脂質データベース
 本ソフトウェアでは、既知のデータのみでなく、ある程度予測可能な未知の脂質も同定可能にするため、標準物質から得たデータに加え構造相関を利用した仮想構造をも定義可能なデータベースを構築しました。具体的には、脂質の基本骨格(グリセロ骨格等)を定義した「脂質クラス定義DB」、基本骨格を置換する脂肪酸の情報を定義した「脂肪酸情報DB」、脂質のイオン化の情報を定義した「イオン化情報DB」、さらにこれらを組み合わせた脂質構造とプロダクトイオン情報を記載した「同定脂質DB」を作成し、多様な脂質の定義を可能としています。尚、これらのデータベースは独自のXML(注6)フォーマットで定義しているため、拡張も容易です。


3. 脂質同定モジュール
 本ソフトウェアでは種々の脂質質量分析データに対応した、大きく分けて以下の2種類の同定手法を実装しています。

A. グループ特異的手法
 各クラスや脂肪酸に特異的なフラグメントをターゲットとしたプレカーサーイオンスキャン(注7)、
ニュートラルロススキャン(注8)により得られたプレカーサーイオンピーク群を対象とした同定処理です。グループ特異的同定手法は、ターゲットとなる脂質種がある程度絞られている場合に効果的です。

B. 網羅的同定手法
 LC-ESI-MS(注9)により一定の抽出条件で分離される分子群全体をMSスキャンもしくは
プロダクトイオンスキャン(注10)により網羅的に測定し、得られるMS、MS2、MS3のスペクトルデータを対象とした同定手法です。この網羅的同定法では、各脂質ピークに偶然一致する脂質が数多く出現するため、Lipid Searchでは独自に開発したスコアリングアルゴリズムにより擬陽性を排除し、より確度の高い脂質を絞り込みます。網羅的同定手法は生体試料内に存在する未知の分子種を含めた脂質を一括して大量に同定したい場合に効果的です。

4. 脂質定量モジュール
 リピドミクス(注11)では生体内に含有する脂質を同定した後、その量的変動を解析することが重要となってきます。Lipid Searchでは脂質の定量情報として、同定された脂質ピークのマスクロマトグラム(MC) (注12)の面積値を算出します。Lipid Searchの定量アルゴリズムは機器の特性に応じて波形のノイズフィルタリングやスムージングを行い、さらに重なりあったMCのピークは分離することで高精度な定量値を算出することが可能です。

【今後の予定】
 生体試料の質量分析データから脂質をハイスループットに同定するソフトウェアLipid Searchを開発し、生体内脂質を網羅的に高精度で同定することが可能となりました。
今後は、解析対象(グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、グリセロ脂質以外の脂質)を拡張し、試料間の多変量解析機能を加えることで、脂質の統合的な解析が行えるリピドミクスプラットフォームを構築する予定です。

以  上

≪用語の解説≫
(注1)脂質同定:生体試料中に含まれる脂質成分の種類を判定すること。
(注2)Lipid Search:提供価格400万円(税抜、初年度年間保守費込)
(注3)生体内脂質:生体物質のうち、水にはほとんど溶けずに、エーテル、クロロホルム、アセトンなどの有機溶媒には溶けやすい性質を持つ物質の総称。脂質は中性脂肪の形でエネルギーの貯蔵、内臓の保護、熱の発散の防止の役割を担い、複合脂質、誘導脂質の形で、生体膜の構成成分やステロイドホルモンの前駆体として機能している。
(注4)網羅的解析:生命現象を包括的に理解することを目指して、細胞や組織内に存在する全ての遺伝情報や蛋白質、代謝産物の動態を収集、解析すること。膨大な生体情報(実験データ)を効率的に解析するために、バイオインフォマティクスと呼ばれるコンピュータを用いた生体情報処理が必須な技術となっている。
(注5)質量分析技術:原子や分子から生じたイオンを、その質量電荷比に応じて分離し検出する技術。
注6)XML (Extensible Markup Language):文書やデータの意味や構造を記述するためのマークアップ言語の一つ。ユーザが独自のタグを指定できるため、汎用性、拡張性が高い。
(注7)プレカーサーイオンスキャン:生体分子をイオン化したピークをプレカーサーイオンと呼び、プレカーサーイオンを衝突活性化により分解して生じたイオンをプロダクトイオンと呼ぶ。特定のプロダクトイオンを生成する全てのプレカーサーイオンをスキャンする測定方法をプレカーサーイオンスキャンと呼ぶ。三連四重極型質量分析装置が用いられる。ある特定のプレカーサーイオンから生成したすべてのプロダクトイオンを検出するスキャン方法.
(注8)ニュートラルロススキャン:特定の中性分子を脱離する全てのプレカーサーイオンを検索する測定方法。プレカーサーイオンとプロダクトイオンの間に官能基などの構造特異的なm/z 値の差を持つペアーを検出することが可能。三連四重極型質量分析装置が用いられる。
(注9)LC-ESI-MS:HPLCとエレクトロスプレーイオン化質量分析装置を組み合わせた装置。
この装置から出力したMSスペクトルHPLC (High performance liquid chromatography)高速液体クロマトグラフィーという。
(注10) プロダクトイオンスキャン:ある特定のプリカーサーイオンから生成したすべてのプロダクトイオンを検出するスキャン法.
(注11)リピドミクス:脂質(リピド)の網羅的解析。メタボローム (代謝物全体) を解析するメタボロミクスの一分野であり、どの脂質代謝物が病変のバイオマーカーなのか、あるいは原因物質、シグナル物質となっているかを明らかにすることを目指す。
(注12)マスクロマトグラム (MC):任意のイオンの保持時間を横軸に、指定したイオンの強度を縦軸にとってプロットしたクロマトグラム。

【本件に関するお問い合わせ先】
東京大学大学院医学系研究科 メタボローム寄付講座 特任教授 田口 良
TEL: 03-5841-3650  FAX: 03-5841-3430

【製品に関する問い合わせ先】
三井情報株式会社 総合研究所 バイオサイエンスチーム
〒105-6215 東京都港区愛宕2-5-1 愛宕グリーンヒルズMORIタワー
TEL: 03-6376-1063 FAX: 03-3435-0527 E-mail: bio-webinfo@ml.mki.co.jp

【報道に関する問い合わせ先】
三井情報株式会社 経営企画部 コーポレート・マーケティング室
TEL:03-6376-1008  FAX:03‐3435‐0520 E-mail:press@ml.mki.co.jp


※三井情報、MKI及びロゴは三井情報株式会社の商標または登録商標です。
※本リリースに記載されているその他の社名・商品名は、各社の商標または登録商標です。

 

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