フォークリフト向けテレマティクスサービスFORKERS

2021/09/17
DX技術部 エレクトロニクス技術室

はじめに

今回のコラムは、フォークリフト向けテレマティクスサービスFORKERS®(以下 FORKERS)についてご紹介します。
FORKERSは今年4月に三井情報と合併した旧三井物産エレクトロニクス(以下 MBEL)が開発し、2018年に提供を開始しました。MBELは従来エレクトロニクス商社としてお客様のニーズに応じたハードウェアの提供や、様々なハードウェアとソフトウェアを組み合わせたソリューションの提供を行っていました。

これらの経験を活かし、物流業界のニーズを捉えた自社サービスとしてFORKERSが生まれました。 

FORKERSとは

FORKERSは、フォークリフトの安全を監視するためのIoTサービスです。

日本国内には約80万台のフォークリフトが稼働していますが、フォークリフトに関わる人身事故は年間約2,000件起きています(内、死亡事故は年間約30件(*1))。フォークリフトを使用する企業は事故を減らすために、走行ルールを定め運転者に対して安全指導を行っていますが、一人一人の運転の様子を監視し、ルールが守られているかを確認するのは困難でした。

そんな業界の悩みを解決すべく、FORKERSが開発されました。

FORKERSを導入することで運転者の運転傾向が可視化され、管理者は運転者に注意を促すことが、運転者は危険な運転を改善することができます。

実際に導入いただいたお客様からも、事故を減らすことができたとご評価いただいています。

■危険運転改善のPDCAサイクル

 

*1 出典:「令和2年 労働災害統計」(厚生労働省)(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/tok/anst00.htm

FORKERSの構成/仕組み

次に、FORKERSの構成と仕組みについて説明します。

FORKERSは①フォークリフトのデータを送信する車載器、②送信されたデータを収集するクラウドシステム、③収集されたデータを可視化するWebアプリの3つで構成しています。

①車載機

車載器は、フォークリフトの走行データ/映像データをLTE経由でクラウドに送信します。
車載器の主な機能/性能は以下の通りです。
・危険運転検知機能:加速度/ジャイロなどのセンサーにより危険運転を検知
・録画機能:最大4chのカメラ映像を録画可能
・運転者識別機能:RFIDカードリーダーにより、運転者を識別
・通信機能:収集したデータをLTE(またはWi-Fi)経由でクラウドに送信
・防水防塵性能:IP69K相当の金属筐体
・ストレージ容量:最大2TB蓄積でき、通信できないときもデータをキャッシュ可能
これらの機能/性能は、IoT向けの特殊なデバイスを設計開発する当社技術をベースにベンダーと協業し、生産管理技術により量産を実現しています。

②クラウドシステム

クラウドシステムは、IoTデバイスからのデータを収集・蓄積・分析しています。FORKERSはアマゾン ウェブ サービス(AWS)上に構築しており、MDM(Mobile Device Management)を行うサーバとデータの蓄積・分析を行うサーバの2つのサーバからなります。当社のMDM技術は、今まで管理の難しかったON/OFFを頻繁に繰り返すデバイスや不安定な通信環境に置かれたデバイスの管理を可能にし、OTA(Over The Air)によるファームウェアアップデートや設定変更を実現しています。

③Webアプリ

Webアプリは、フォークリフトの走行データ/映像データを表示します。さらに、車両単位/運転者単位/危険運転単位で纏めてダッシュボードに表示し、この情報を基に管理者は運転者に個々の運転傾向を踏まえた安全指導を行うことができます。


■FORKERSの構成/仕組み

FORKERSの強み

FORKERSの強みとして、以下の2点が挙げられます。

1. データ収集や運用を手軽にできる

フォークリフトの安全監視には、自動車用のドライブレコーダー(以下 ドラレコ)が利用されるケースもあります。
しかしドラレコの利用では、以下のような課題に直面します。

①毎日のデータ収集が大変
ドラレコを利用する場合、現場では毎日ドラレコからSDカードを回収し、1台1台の映像データをコピー/チェックし、再度ドラレコにSDカードを挿入しなければならず、これを実施するだけのために専属で人を配置する必要がありました。離れた拠点に出張してSDカードを回収するケースもあり、手間も運用コストもとても高くつきます。

②データをためておく環境構築が必要
映像データを管理/保管するために、毎日1台あたり数GBの映像データを、数十台分ためておくための環境構築が必要となります。

③筐体が脆弱
フォークリフトはエンジンや道悪の影響で激しく振動するため、自動車用のドラレコではすぐに壊れてしまいます。


FORKERSはこれらの課題に対して、①データ収集を自動で実施し運用コストを大幅に削減、②Webアプリで複雑な環境構築も不要、③強靭な筐体により長期間壊れず運用可能、を実現しました。

 

2.様々なメーカーのフォークリフトに後付けで使える

フォークリフトメーカーも、走行データを収集する純正サービスを提供しています。

ただし純正サービスはそのメーカーのフォークリフトの新車納入時のみ導入可能で、他社製や運用中のフォークリフトに後付けすることはできません。そのため、全てのフォークリフトを一度で買換えることがない限り、純正サービスを採用することが困難です。

FORKERSは、3D CADによる機構設計技術を活かして様々なメーカー/車種のフォークリフトに取付けできる金具を開発し、後付けで使用することができるため、上記のようなケースでも対応可能です。

FORKERS その先へ!

最近、FORKERSと類似した製品/サービスが販売され始めましたが、私たちはフロンティアとして、今までの経験やお客様からの声を基に、よりよいサービスを開発し続けています。

現在は、新しいFORKERSプラットフォーム『V3』のリリースに向け準備しています。

これまでのFORKERSは、自社製クラウドシステムと他社製クラウドシステムで構成していましたが、カスタマイズを容易にするため今回の『V3』は全てのクラウドシステムを自社で開発することを目標としました。オープンソース活用技術で、複数のオープンソースを組合せて目的のソリューションを実現し、高い拡張性やカスタマイズ性、コストパフォーマンスでサービスを進化させ続けることが可能となりました。

・V3と既存プラットフォームの比較

 

 

 

また新機能の一つとして『ライブカメラ』という機能を実装しています。当社の動画ハンドリング技術により、不安定な環境でも映像をタイムリーに確認することができます。この機能は、フォークリフトのテレマティクスサービス以外に、電源さえあれば定点カメラ/監視カメラとしても利用できるため、配線困難な広い倉庫などで後付けのカメラ監視/管理システムとしての利用も計画しています。

さらに今年4月の合併により、三井情報のAI/分析とMBELのFORKERSを融合し、動線分析・改善で作業時間短縮・事故低減を実現する物流業務効率化ソリューションや、三井情報のローカル5GとMBELのIoTハードウェアやクラウドサービスの融合によるスマート工場の展開等、可能性は大きく広がりました。

フォークリフトの安全監視プラットフォームとして開発されたFORKERSですが、新たな機能の開発や様々なサービスへの応用展開により、今後もお客様の幅広いニーズに応えていきます。

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