SWIFT動向(ISO20022)について

2021/10/27
金融ソリューション部  第二技術室

~ 本稿のポイント ~

・現金を運搬せずにお金を送る仕組「為替」とは
・金融機関間をつなぐSWIFTの役割
・SWIFTの新しいメッセージフォーマットISO20022への移行
・三井情報の取組

はじめに

みなさんは、SWIFTをご存じですか。自動車やプログラミング言語ではありません。SWIFTは、Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunicationの略で、国際銀行間通信協会と訳され、国際送金や決済のための金融メッセージングサービスを提供する団体です。1973年にベルギーで設立され、200以上の国又は地域で11,000以上の銀行、証券会社、市場インフラ、事業法人顧客を結んでいます。*1

 


*1 出典:SWIFTについて(SWIFT Japan) (https://www.swift.com/ja/swift-japanese)

為替の仕組み

 SWIFTで行われている送金は、為替業務の一つです。為替とは、「遠隔の地にある者が貸借の決済に際し、正金を送付する労費・不便・危険などを免れるため、手形・小切手・証書によって送金を処理する方法」*2と定義されます。

まず、"為替"の歴史を振り返ってみたいと思います。

高校で日本史を勉強した人は、割符(サイフ)という言葉を覚えているかもしれません。鎌倉時代中期には、貨幣経済が農村まで浸透し、割符を利用した「為替システム」が使われるようになりました。

以下は、地方の荘園から京都の荘園領主に年貢(米・銭)を送るケースです。

■鎌倉時代の割符による送金

① 地方の荘官が、地方の割符屋に、米・銭を持ち込み京都への送付を依頼する。
② 地方の割符屋は、割符の片方を地方の荘官に渡し、もう片方を京都の割符屋に送る。
③ 地方の荘官は、荘園領主に、割符の片方を送る。
④ 荘園領主は、京都の割符屋に割符の片方を持ち込む。
⑤ 京都の割符屋は、もう片方の割符と照合し、荘園領主に米・銭を引き渡す。
⑥ 割符屋間では、定期的に決算を行い、精算を行う。

 

ここでのポイントとして以下の2点があげられます。

・送金の相殺:商品仕入代金などの「京都から地方へ」と年貢などの「地方から京都へ」の双方向の送金があり、割符屋は、決算時にお互いの送金を相殺でき、割符屋間の送金を少なくできる。

・信用の連鎖:遠隔地間の割符屋が協力関係を持っていること。尚、割符は武装した商人、廻船業者など,交通網を掌握する人々のネットワークを通じて送られていた。

 


*2 出典:編 新村出(2017)「広辞苑」第七版 642頁 ,岩波書店

国際送金について

次にSWIFTを使った現在の国際送金について見たいと思います。
東京のスポーツ店Aが、米国から”大リーググッズ”を仕入れて、仕入れ先の球団に送金するケースです。

■SWIFTを使用した国際送金事例

 

① スポーツ店Aは、口座を持つ地銀Bに、米球団Z宛の送金を依頼。
② 地銀Bは、米地銀Y宛、送金指示を送付。
③ また、地銀Bは、口座を持つ都銀Cに、米大手銀X経由米地銀Y宛送金依頼。
④ 都銀Cは、米大手銀X宛、同行に開設した自行口座から米地銀Y口座への振替を依頼。
⑤ 米大手銀Xは、同行内の米地銀Y口座への着金を米地銀Yに通知する。
⑥ 米地銀Yは、②の支払指示に従い、米球団Z宛の口座に入金。


上記のように、国際送金は、互いに口座を持ち合っている銀行の連携で送られています。SWIFTが、安全性の高いネットワークにより銀行間の通信を提供していること。また、都銀Cと米大手銀Xは日米国際送金の窓口となっており、上記ケースと逆の米国から日本への送金も多数あり、両行は、お互いの送金を相殺できること。これらの点は、鎌倉時代の「為替システム」と同じであると言えます。



*3 注記:SWIFT以外に地場決済システムなどで送金指示などを行う場合もあります。 

国際送金の課題

SWIFTは、1977年のサービス開始から40数年が経過しており、時代に合わないところが出てきています。利用者から見ると、送金手数料が高い、時間がかかる、送金状況がわからないなどの問題がありますが *4、本稿では、現在SWIFTが力を入れているメッセージフォーマットの変更に注目したいと思います。


① 背景

SWIFTのメッセージフォーマットは、SWIFT以前に使われていたテレックスのものを踏襲しています。テレックスは、電話回線を利用するタイプライター式の通信機で、ファックスや電子メールが使われる前の通信手段です。通信料金が高いことから電文長も短くする必要があり(当初は2,000バイトが上限)、固定長のフォーマットであることから柔軟性や拡張性がないなどの難点があげられています。

② ISO20022(MX)フォーマット

新フォーマットは、MX(XMLベースのMessage Type)と呼ばれ、SWIFT自身がメッセージ標準を開発したISO20022に準拠しています。現行フォーマットであるMT (Message Type)とMXフォーマットのサンプルを下の図に示しました。MTをデータ処理する場合、メッセージテキスト内を検索して「:32A:」のフィールド名を見つけた後、右端にある「改行コード(CrLf)」の前までを取り出し、内容を確認しなければなりません。一方、MXの場合は、それぞれ項目のタグ編集がされているため、プログラム側において、メッセージの内容を分析することなく、簡単に値を取り出せます。

■MTとMXの比較


③ ISO20022(MX)のメリット

ISO20022(MX)に移行することにより以下の点が可能となります。

・ 銀行の国際送金業務のイノベーションを起こす環境を整える。
・ 銀行が個人、および法人顧客により良いCX(Customer Experience)を提供できるようにする。
・ 銀行がコンプライアンスを改善できるようにする。(KYC(Know your Customer)、AML(Anti Money Laundering)など)
・ より高いレベルの自動化(Straight Through Processing)と効率化を可能にする。
・ MTと比べて、情報量が多いこと、システムでの読み取りに適している。
・ 日銀ネット、米国連邦準備銀行が運営するFedwireが採用するなど、ISO20022を採用するシステム間の相互運用性の高いものとできる。

④ 移行方式

ISO20022への移行は、ビッグバン方式ではなく、並行運用方式を取っており、参加銀行は、2022年11月から2025年11月の3年間の並存期間内に移行します。

参加銀行は、以下の対応が必要になります。

・ Outgoing:「MX」電文を作成して送信できるようにする。
・ Incoming:「MX」電文を受信して、行内システム含め処理できるようにする。

並存期間において、SWIFTは、メッセージの翻訳サービスを提供し、未移行銀行宛のMXメッセージは、MTの形式で届けられます。但し、注意点として、MXはMTより情報量が多いため、一部の情報が切り捨てられる可能性があります。またこのことは、参加銀行が、ISO20022に必要な情報をマスターや設定ファイルに保持するなどのシステム対応が必要なことを意味しています。



*4 現在は、SWIFT gpi(global payment Initiative)取組により、全送金取引の50%が30分以内に着金し、宅配便のような送金状況トラッキングシステム、および送金時に手数料が確定するなどの成果を上げています。

まとめ

送金の仕組みとSWIFTの直近のトピックであるISO20022への移行を見てきました。鎌倉時代の割符が、SWIFTメッセージになっても、送金(為替)の原理は変わっていないことがわかると思います。

三井情報は、1980年代末より、大手金融機関の国際送金、決済、およびアンチ・マネーローンダリング業務の支援を行ってきました。これらの経験を活かし、現在、地域金融機関向けの国際送金業務効率化に取り組んでいます。また、今後本格化するISO20022フォーマット移行を含め、金融機関の国際送金業務の安全確実なサポートを継続して参ります。

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