金融×IT+地域経済

2018/03/13
 
エマージング技術グループ 金融技術部

今回のMKIコラムは金融×ITのお話です。金融×ITといえばここ数年はFintechという言葉が使われてきましたが、最近はあまり聞かなくなりましたね。これは決してFintechがなくなったのではなく、Fintechとわざわざ言う必要がなくなるくらい色々な金融とITの取組みが進められた結果当たり前になってきた、という方が正しいかもしれません。

 

さて、当社でも金融機関とITに絡めた取組みを多く行っていますが、今回はその中でもAI分野の取組みについてご紹介したいと思います。

NLPとは?

人間は普段何気なく言語を通じてコミュニケーションを取っています。この当たり前のことをコンピュータにやらせるのは意外に大変です。まず、アルファベットなのか、漢字なのか、平仮名なのか片仮名なのか、文字の塊は単語や文節となり意味を持ち、その文節の塊がまた意味を持ち文章となる。これらをコンピュータに理解させる技術のことを自然言語処理(NLP)と言います。

NLPは各言語によって扱う処理が異なっており、日本語においてもここ数年研究が進められ、様々な成果が出てきています。最近ではスマートフォンのアシスタント機能も見当違いな回答をしないどころか、文章の意味をよく理解して回答してくれることが多くなりましたよね!

地域金融機関との取組み

この自然言語処理を金融機関と組んで活用できないかということで、当社では最近ちょっと変わったPoC(Proof of Concept:概念実証)に取り組みました。ずばり、『テキストデータだけを使って地域経済の良し悪しを定量化できないか』です。当社には地域金融機関のお客様がたくさんいます。普段はお客様である金融機関をITで支援をすることが我々の仕事ですが、今回は更に一歩進んで、地域金融機関が見ている『地域経済』に目を向けてみました。

金融機関の主な業務の一つに『融資業務』があります。融資を行うためには当然相手のことを良く知る必要があり、金融機関の融資担当者は取引先と日々接触しています。そして多くの場合、その会話の内容は文章(テキスト)データとして金融機関内のシステムにて記録、蓄積されています。そこで、この接触履歴データを自然言語処理によりコンピュータに理解させ、センチメント分析(ポジネガ分析)により地域経済を予測しようというのが今回の取組みです。

日本の『1%縮図』で概念実証!

沖縄県は海に囲まれた状況やその人口構成から『日本の1%縮図』と呼ばれることがあります。色々な実証が沖縄県で取り組まれ、国内へ展開される事例も数多くあります。そんな沖縄県を中心に事業展開している沖縄銀行の賛同が得られ、今回の取組みにご協力いただきました。また、より地元に関連の深いキーワードを評価する為に地元の新聞社である琉球新報社にもご協力いただき、多くの文章データを集めることができました。

 

データ分析予測においては、東京大学の和泉潔教授(金融市場分析への人工知能技術活用研究では日本の第一人者)と坂地泰紀助教授(テキストマイニング技術の応用を中心に研究)にご協力いただきました。今回のPoCでは、既に実績のあるモデルを応用することでより信頼性の高いデータ分析を試みました。モデルの詳細は割愛しますが(※)、下図に分析イメージを示します。

※詳細は「金融レポート、およびマクロ経済指数によるリアルタイム日銀センチメントの予測」(余野京登、和泉潔、第18回人工知能学会金融情報学研究会、2017年3月10日、東京)をご参照ください。
http://sigfin.org/?plugin=attach&refer=SIG-FIN-018-13&openfile=SIG-FIN-018-13.pdf

果たしてその結果は・・・

2008年1月以降、10年に渡るテキストデータを分析した結果は下図のようになりました。

沖縄県は海外観光客の大幅な増加もあり、全体的には右肩上がりのトレンドであることは知られていましたが、ここ数年は高止まりの中でも若干の勢い鈍化傾向が見えます。果たしてこの結果が本当に現実を捉えているのか、今後の沖縄県の経済状況を是非注視してみてください。

地域経済への貢献

SIerというとシステム開発のイメージが強いと思います。しかしただシステムを作るだけではなく、今回ご紹介した事例のようにIT技術を活用して新たな価値を引き出すこともまた、SIに携わる我々の仕事です。当社には地域金融機関のお客様が多くいらっしゃいます。お客様が活動する経済圏として、地域金融機関の更にその先までを意識した取組みを発信していきたいと思います。

『IT技術は世界を広げます。』

このように言うとグローバルな展開を思い浮かべがちですが、宇宙と深海のように、世界は外側だけでなく内側にも広がっています。今後も先進的なIT技術を駆使し、地域の金融機関の皆様と共創して、地域経済を盛り上げられるSIerを目指していきたいと思います。

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