小売業向け要冷制御

2019/07/26

 

  

スマートサービス技術部 スマートサービス技術室

はじめに

 

今回のコラムは、「小売業向け要冷制御」をご紹介します。「要冷制御」という言葉、聞きなれないかもしれませんが、皆様は何を目的に、何を制御することを想像されますか?


私たちが日々お世話になっているスーパーマーケット。その食料品売場には「冷凍食品」「冷蔵食品」が所狭しと並べられています。これらの冷凍・冷蔵食品を陳列するショーケースは、24時間365日品物を冷やし続けるため、常時大きな電力を使用しています。スーパーマーケットで使用される電力使用量のうち最も大きな割合を占めるのがこの要冷設備であり、食料品を冷やす冷凍機だそうです。


小売業向け要冷制御とは、IoTを活用し食料品を陳列するショーケースの庫内環境を最適な温度に制御することで冷凍機に使用される電力量を削減し、省エネを図ることを目的としたソリューションです。

GeM2について

 

 

小売業向け要冷制御についてお話しする前に、要冷制御のベースとなるMKIのソリューション「GeM2」をご紹介します。GeM2は「Green energy Management by MKI」の略称で、最も得意とするのは建物の空調を管理し、内部の快適性を保ちながら省エネを実現することです。


IoTという言葉を日常の中で聞くようになり数年が経過し、身近なところでも様々な活用が進んでいますが、私たちMKIの目指すIoTの活用とは「小型のセンサーをモノに取り付けて様々な用途のデータを収集する」「収集したデータを解析しその結果から目的・効果を定め、ビジネスにつなげる」こととなります。この「ビジネスにつなげる」という部分が重要なポイントとなります。GeM2は建物の環境から温度、湿度、CO2等様々な値を採取し、その値を指標に、人の手による運用では少なからず発生する建物の空調設備管理のムダ・ムラをシステムが自動検知・制御し、最適な空調環境を提供しています。結果、空調に使われていたエネルギーを削減=電気料金・ガス料金のコスト削減という目に見える成果を提供します。
(GeM2について詳しくはhttps://www.mki.co.jp/solution/gem2.htmlをご覧ください)

新たな取り組み

今回ご紹介する小売業向け要冷制御は、これまでの空調管理で培った知見を活かし、スーパーマーケット店内の要冷設備における過剰な冷却(冷やし過ぎ)をシステムが自動検知・制御することで最適な環境を実現し、GeM2を使った要冷設備の省エネに向けた取り組みが可能となりました。


具体的にはスーパーマーケットのショーケース内に設置した庫内温度センサー情報を元に、庫内温度の上昇傾向・下降傾向を算出し、要冷設備(冷凍機)に対し最適なタイミングで始動・停止を行うきめ細かい省エネ運転により冷やし過ぎを防止する仕組みです。

 

要冷設備制御

食料品ショーケース等の要冷設備には、もともと庫内温度環境を最適化するために要冷設備制御という機能があります。要冷設備制御では各事業者または店舗毎に定められた食料品目毎の「管理温度帯」を厳守した上で省エネを実現する必要があります。

管理温度帯とは、例えば野菜のショーケースなら「上限10℃から下限5℃」を管理温度帯として指定し、その範囲内の温度を推移するよう要冷設備を管理する。鮮魚のショーケースなら「上限2℃から下限-2℃」を管理温度帯として指定し、その範囲内の温度を推移するよう要冷設備を管理する。というように、食料品によって異なるショーケース保管時の庫内温度を示します。皆様も本コラムを読まれた後、スーパーマーケットにお買い物に行く機会がありましたら、以下の表を探してみてください。ショーケースには庫内温度が表示される部分があり、必ず指定された温度帯を逸脱しないよう管理が行われていると思います。

 

■管理温度帯管理表事例

 

 

では、もともと要冷設備による庫内温度管理が行われているのに、なぜ庫内温度を最適化する余地があるのでしょうか。実際の要冷設備制御を行った場合のショーケース庫内温度推移例をご覧頂きながらご説明します。事例となるショーケースは鮮魚が並べられるショーケースで、管理温度帯は「上限2℃から下限-2℃」の指定となります。

 

■要冷設備制御実施時のショーケース庫内温度推移例

   → 要冷設備制御を実行した場合の庫内温度推移グラフ
   → 要冷設備制御を実行していない場合の庫内温度推移グラフ

※上図の中で急速に庫内温度が上昇している部分は、要冷設備ショーケース従来の機能である「デフロスト処理」を示します。デフロスト処理とは、庫内の霜取りを目的とする機能で、一時的に庫内温度を通常の温度帯から数℃~数十℃上昇させ、霜の固着を防ぐ効果をもたらします。

 

この庫内温度推移グラフの場合、省エネのポイントとなるのは、赤の点線枠内における過剰な冷却(冷やし過ぎ)部分となります。
要冷設備制御前の鮮魚のショーケースでは、概ね1℃から-5℃近辺までを庫内温度(青線グラフ)が推移しています。要冷設備制御後の鮮魚のショーケースでは、概ね1℃から0℃近辺までの庫内温度(緑線グラフ)を推移するよう要冷設備(冷凍機)稼働量を調整し、庫内温度を最適化しています。

庫内温度の最適化によるメリット

ご覧頂きましたように、スーパーマーケットの要冷設備には空調設備のような人による運用では少なからず発生してしまうムダ・ムラはもともとございません。しかしながら24時間365日、常に同じ要冷設備の管理を行うことは難しいことから、小売業向け要冷制御は過剰な冷却が発生している食料品ショーケースに対し、IoTを活用した季節・曜日・時間帯毎に最適な冷凍機の省エネ運転を行います。ここで要冷設備の省エネ運転によるメリットをご紹介します。

 

●電気請求料金の削減
省エネ運転を行うことによって、冷凍機の稼働時間が減少します。稼働時間の減少はエネルギーの使用量を削減し、要冷設備に使われていた電気請求料金を減らします。

●CO2削減
要冷設備の稼働時間を減少させることにより、設備から排出されるCO2を減らします。

●データの見える化
要冷設備の庫内温度を最適化するにあたって使用する各種センサーからは、冷蔵・冷凍ショーケースの庫内温度の他に、気温、室内温度、室内湿度、店舗に使う総電力量、要冷設備に使う電力量などの情報を同時に採取しています。採取した情報は、見える化データとして管理することができます。

おわりに

データを収集・解析するだけでなく、解析した結果を基に機器を制御し、お客様に最適な環境と利益を提供することが私たちMKIの考えるIoTを活用したビジネスモデルとなります。センサーによる計測→機器の制御というメソッドは空調設備機器・要冷設備機器に限らず有効です。私たちは今後も様々な可能性を模索し、アイデアを新たな機能として実装していくことを目指します。

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