ノーコード/ローコード開発への取り組み

 
2019/10/10

 

 

商社技術第二部 第一技術室

ノーコード/ローコード開発とは

 


ノーコード/ローコード開発とは、アプリケーション開発において従来の方法では人の手によるコーディング(=フルスクラッチ)で開発するのに対し、専用の基盤やツール等を利用して、ほぼコーディングなしで開発する方法です。「超高速開発ツール」と呼ばれている製品もあります。
最近、ノーコード/ローコード開発のツール導入が国内外を問わず増えています。SIベンダーだけでなく、ユーザ企業でも非常に関心が高く、超高速開発ツールの認知度向上や情報交換のためのコミュニティ「超高速開発コミュニティ」(https://www.x-rad.jp/)のユーザ企業会員は105社にのぼっています(2019年9月現在)。

ノーコード/ローコード開発のメリット

ノーコード/ローコードの開発により一番期待されるのは、製造工程の大幅な短縮です。
また、人の手で作ったコーディングのミスによる不具合やスパゲッティコードによる保守性低下が減ることで、アプリケーションの品質向上が期待できます。
フルスクラッチ開発で、製造部分に外部委託やオフショアを活用すると、コミュニケーションやリソースマネジメントなどの管理に多くの労力を必要としますが、ノーコード/ローコード開発で開発メンバーを少数精鋭にできれば、リソースの管理にかかる労力も最小限に抑えることが期待できます。
その結果、今まで製造工程で時間とリソースを割いていた分を上流工程に集約することができるようになるでしょう。

MKIにおける取り組み事例

1. Microsoft Office 365におけるノーコード/ローコードを実現するツールと取り組み事例

Microsoft Office 365(以下 Office 365)とはOfficeソフトウェア(Word・Excel等)を含む最新ツールを提供するマイクロソフトのサブスクリプションサービスです。
既に構築された基盤とツールであるOffice 365製品を利用することにより、工期短縮とコスト削減が見込めます。
MKIではOffice 365を契約しているお客様向けに、主にEUC(エンド・ユーザ・コンピューティング)(※1)領域において、後述のOffice 365各製品を利用したノーコード/ローコード開発を実現しています。
またお客様自身で構築を行う場合は、説明会実施やマニュアル作成などの技術支援を行っています。
 
PowerApps

PowerAppsとは、ノンプログラミングで業務アプリ(Webアプリ、モバイルアプリ)を作成するためのツールで、マウス操作で、素早く構築できます。豊富なテンプレートを元に作成することも、新しくオリジナルを作成することも可能です。
 
例えば、サンプルアプリケーションを元に、簡単に「会議室の予約システム」や「予算管理システム」といったアプリを作成できます。
MKIでは、SharePoint Online上のWeb画面やワークフロー画面をカスタマイズするのにPowerAppsを利用した事例が多いです。

 

Power BI

Power BIとは、マウス操作で元となるデータから、棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフといった基本的なグラフの作成、ゲージ(計画に対する達成率など)や地図とのマッピングといった高度なグラフの作成などを実現し、ダッシュボードのような形で情報提供できるビジネスインテリジェンスツールです。参照する人自身が、任意の条件に変更してデータ分析できる点がExcelで作成したグラフと異なります。
MKIでは、予算計画/実績の対比分析や市場の動向を分析するためのグラフを作成するといった業務に対して、データ整理やグラフ作成の支援をしています。

 

Microsoft Flow

Microsoft Flowとは、複数アプリに跨る定型的な作業をワークフロー化するためのツールです。利用できるアプリはマイクロソフトの製品だけでなく3rd Party製品まで含め多岐に渡り、設定画面に沿って、直感的に設定を進めることができます。また、よくある定型作業はマイクロソフトからテンプレートが提供されており、テンプレートを使用することでより素早く構築することが可能です。
以下のような定型作業をMicrosoft Flowで実現することが可能です。
・メールを受信したら、自動的に転送する。
・NEWSサイトに情報が更新されたら、メール配信する。
・選択したファイルに上司の承認を取り付ける。
 
MKIでは、社内照査機能(ワークフロー)を実現する為、個々のアプリをMicrosoft Flowで組み合わせて構築する案件を多数対応しております。

 

■ワークフロー事例

 

 

※1 EUC(エンド・ユーザ・コンピューティング)とは、エンドユーザやユーザ部門が自らシステム開発や運用、管理に携わること。

2. DocuSign®を用いた申請ワークフローの実現

Office 365とOffice 365以外の製品とを連携した導入事例として、DocuSignを利用した構築例をご紹介します。
 
DocuSignとは、紙のやりとりを電子化し、証跡を残しながら場所・端末を問わず仕事ができるようにするDTM(Digital Transaction Management)プラットフォームです。(※2) 署名のトランザクションによって成り立つワークフロー(契約書、稟議書など)に向いています。
MKIでは、上述の「Microsoft Flow」を用いて、SharePoint OnlineにDocuSign上でやり取りしたデータを格納した構築事例があります。

 


※2 DocuSignについて詳しくはこちらからご覧ください。https://www.mki.co.jp/solution/docusign.html

3. WinActor®における自動化シナリオ作成

WinActorとはRPA(Robotic Process Automation)製品の1つで、PC上のソフトウェア操作を記録し、再生することで自動化を実現します。MKIは販売パートナーとしてWinActorを導入してきました。(※3)

自動化するために作成する作業の流れを「シナリオ」と呼びますが、本ツールではコーディングなしにシナリオを作成することができます。
共通の作業や、複雑な作業は予め製品の販売元がライブラリとして用意しており、作成者はマウスの操作でその機能を使用できます。
 
MKIではシステムからデータをダウンロード→Excelの報告書を作成といった、何度も繰り返し行う定型作業を自動化する構築事例が多いです。
また、WinActorとOffice 365(Microsoft Flow)との連携も実現しています。 

 

WinActorとOffice 365(Microsoft Flow)との連携

 

RPA自体は厳密にはローコード開発ツールではありませんが、RPAの企業への導入が増えている一因として、自動化のロジック作成をノーコードで行えることにあると考えています。

 

 

 ※3 WinActorについて詳しくはこちらからご覧ください。https://winactor.com/

4. OutSystemsにおける業務システム開発

業務システムなどの従来型のシステム開発においては、日本でも導入が進んでいる「OutSystems」(※4)に注目しています。
 
OutSystemsは、全世界で導入が増えているノーコード開発の為の基盤であり、下記特徴を他製品よりも評価しています。

・開発ツールの使い方が容易で、少ない学習コストで理解できる。UIやビジネスロジックもGUIの操作で実装が可能
・標準のUIやモジュール開発機能が充実しており、画面テンプレートのデザインも洗練されている
・外部データベース、SAP®やSalesforceなどとの外部連携機能が充実している

  

 

また、小規模なシステムだけでなく大規模で複雑なシステム開発やバックエンドシステム開発でも導入事例が増えています。

MKIでは主にMicrosoft .NET Framework / Microsoft Internet Information Services(IIS)上のWebシステムにおいて、従来のASP.NETのフルスクラッチではなく、OutSystemsで以下のような業務システムを構築しています。

・複雑な業務要件を伴う、ワークフローやデータ管理、既存システム連携機能を有した業務システム
・エンタープライズシステム(SAPなど)と連携したモバイルアプリケーション

 

家内制手工業的なスクラッチ開発からの脱却と、パッケージ製品では実現できない比較的複雑な要件の実現をOutSystemsに代表されるノーコード/ローコード開発ツールで目指していきます。

 

 

※4 OutSystemsについて詳しくはこちらからご覧ください。https://www.outsystems.com/

まとめ

ノーコード/ローコード開発の効果や付加価値とは

MKIでは実際にこれらのツールを用いることで、2~3か月以内での導入開発スピードを実現しながら、製造不具合を最小限に抑えることが可能となりました。
開発の際にはお客様との打合せで要件を決めながらその場で作る・直すことができる為、お客様との認識合わせが早くなり、コミュニケーションもし易くなったと感じています。
また、短納期で案件を多くこなすことで、ノウハウが蓄積され、様々なパターン・組み合わせのソリューションが提供できるようになってきています。
その結果、ツールの知見を持つことで、お客様向け導入支援や操作説明会実施など、開発案件業務以外の依頼も増えています。


 
コーディングスキルは不要か?

ノーコード/ローコード開発ツールの導入により、プログラミングのスキルは不要になり、ユーザ企業でシステムの内製化が進むことでSIベンダーが不要になる時代が来るのでしょうか。
 
実際にはツールを利用しても、標準外の複雑な要件を実現するためには個別にプログラムを書いて対応するケース等がある為、プログラミングスキルは多少必要と考えます。また、ツールを最大限に活用する為には、プログラミングの素養と、ビジネスロジックの設計能力、業務要件の理解とシステムに落とし込むスキルに加え、プログラムが動く基盤のアーキテクチャの理解などが不可欠と考えています。
これらのツールを利用したユーザ企業での内製化が増えていることは事実ですが、ユーザ企業内でツールに精通した技術者はまだ少ないと思われます。上述の必要不可欠スキル及びプロジェクトマネジメント力を備え、ユーザ企業と二人三脚でシステム導入に臨むことがSIベンダーに求められると考えています。
MKIはこれからも製品に精通したITのプロとして、ノーコード/ローコード開発ツールを活用し、お客様への最適なソリューションの提供を推進していきます。

 

 

 

 

 

※ Microsoft、Office 365、Word、Excel、PowerApps、Power BI、Microsoft Flow、SharePoint Online、Microsoft .NET Framework、Microsoft Internet Information Servicesは、米国Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標または商標です。

※ WinActorはNTTアドバンステクノロジ株式会社の登録商標です。

※ 記載されているすべてのSAP製品およびサービス名はドイツにあるSAP SEやその他世界各国における登録商標または商標です。

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