クラウドの端から失礼します。 vol.05

2020/05/11

経営企画統括本部 戦略企画部 広報・CSV推進室

三井情報(以下、MKI)は2019年6月からグループ会社全ての基幹システムをS/4HANA CloudとSalesforceを使ったクラウド環境へ移行するプロジェクト(以下、本プロジェクト)を実行中です。本プロジェクトでは、MKIが皆さまの実験マウスとなって全基幹システムをIaaS型クラウド環境からSaaS型クラウド環境(以下、SaaS)へ移行します。本コラムは本プロジェクトを蚊帳の外から生温かい視線で見守っているMKI広報担当ができる限り、技術者以外でも理解できるような文章を心がけて執筆しています。第5回目では導入を検討する企業でも気になる疑問に対して、MKIがどう対応しているかを個人的な感想を含めながら回答していきます。

どうやってS/4HANA Cloudへの移行を説得したの?

MKI社長である小日山は、10-15年後の企業ITは大半のアプリケーションをSaaS型で利用し、一般的なサービスもSaaS型になると考えています。そして、その時代に備えてICT企業であるMKIが先陣を切って導入すべき!という鋼の意思がありました。そして、経営サイドでは過去の7社合併により異なる業務プロセスが混在した非効率な状態を打破する方法として、Fit to StandardによるBPR(Business Process Re-engineering)を選択しました。ただ、実際に対応する社員に対しては一時的には業務負荷が増えるが、S/4HANA Cloudにすることで様々な機能が更改を待たずに追加され、業務効率の向上を常に意識できるシステムとなり、将来的には業務負荷が軽減される等の前向きな説明をしました。(期待していることが実現されなかったら困るので、SAP社様どうぞよろしくお願いします(笑))

プロジェクト体制ってどうなっているの?どんな人が参加しているの?

Vol.01で簡単にご紹介しました通り、MKIはユーザーの立場となるコーポレート部門とベンダーの立場となる技術部門が参加しています。実際に以下のような体制でユーザーとなるコーポレート部門はプロジェクトを進めています。

 

S/4HANA Cloudへのデータ移行ってどうやってするの?

移行コックピットと呼ばれる移行ツールがSAP社から提供されています。S/4HANA Cloudではツールで定められたフォーマットをXML形式で準備してインポートします。データのエクスポートとインポートはベンダー側が行います。そのため、実際にユーザー側に求められる作業はマスターデータの洗い出しとBPR(Business Process Re-engineering)ですが、この作業が苦労したとのことです。ただ、この作業はS/4 HANA Cloudを選択したから大変という話ではなく、基幹システムの更改タイミングでマスターデータの見直し作業は基本的に発生するため、基幹システムの移行先として何を選んでも避けられない苦労のようです。

プロジェクトを始める前にやっておけばよかったことはある?

Vol.04でMKIのS/4HANA Cloudの本番稼働が遅れた原因にFit to Standardの理解不足が挙がっています。S/4HANA Cloudへの移行プロジェクトを開始前には「Discovery Phase」と呼ばれるFit to Standardを始めるための下準備として現在の業務を洗い出し、S/4HANA Cloudの基本を理解するフェーズがあります。MKIとしては、このフェーズでS/4HANA Cloudに要望する機能が用意されていて、想定している通りに動作するか確認する詳細なPoC(Proof of Concept)までできていれば!と後悔しています。そしたら、本当に半年で本番稼働にたどり着けたとさえ思っています。

 

 

 

正直なところ、S/4 HANA Cloudはどのくらい使えるの?

まだ利用開始していない状態のため回答が難しいですが、初期段階でSAP S/4HANAでできることはS/4HANA Cloudでもできると想定し、夢を詰め込んでいたため、当初の想定よりは実装されていない機能がチラホラあります。
企業がSAP ERPから移行する先の選択肢としてはS/4HANA Cloudのシングルテナント、マルチテナント、S/4HANAの3つがあります。MKIは個社機能を排除し、最新機能をいち早く利用することを目的としたためマルチテナントを選択しましたが、企業によって基幹システムに求めることは異なります。そのため、S/4HANA Cloudのマルチテナントが使える/使えないかは移行先で何を求めるかによって変わってくると思われます。また、S/4HANA Cloudは定期的なアップデートがあるため、アップデートで徐々にMKIが夢見ていたことが実現できればと切実に願っています!

マルチテナントで定期的にあるアップデートはどんな感じ?

Vol.03でも触れていますが、MKIのS/4HANA Cloudはマルチテナント形式で導入しています。そのため、MKIの都合はお構いなしに様々なアップデートが行われます。アップデートのスケジュールは1年単位でSAPからロードマップとして提供されています。ただ、アップデートの内容が記載されたリリースノートはアップデート実施の2週間前に英語で届けられます。この2週間で準備ができるのか?という疑問については、アップデートの内容と各社が持つナレッジによって異なるようです。ただ、S/4HANA CloudはサービスとしてSAP社から提供されるため、企業によってはベンダー支援なく、SAP社と直接やり取りすることになります。また、SAP社ドイツとの調整も必要になる場合があります。しかし、一般企業がSAP社及びSAP社ドイツと直接対応するには難易度が高いと考えられるため、ベンダーの支援を受けることをお勧めします。(MKIはSAP社ドイツとのパイプを作り、S/4HANA Cloudを導入する企業への支援サービスを検討しています。)
ちなみに、MKIでは11月と2月にアップデートを体験しています。実際の影響としては、11月アップデートでSAP社の方で固定資産関連のモジュールに大きな見直しが発生し、それによってMKIが利用を想定していた機能も変更になってしまったとのことです。この固定資産関連のモジュール見直しはS/4HANA Cloudだけではなく、S/4HANAでも行われているそうで、S/4HANA Cloudだけが受ける影響ではありません。ただ、11月アップデートの内容は他の企業にも影響があったため、一部を戻す予定と聞いています。なお、このように機能に変更が発生した場合のデータの状態ですが、機能的に使えないだけでデータとしては残っているそうです。そのため、機能が復活したらまた利用できるとのことです。(機能の変更に伴い、データが消えてしまったら困るので納得です。)
アップデートが不安な企業ではアップデート時期を自社で選択できるシングルテナントやS/4HANAを選択しても良いかと思います。ただ、アップデートが自社で選べるとアップデート時期を決めるタイミングが難しい、アップデートまで最新機能が利用できないなどのデメリットもあります。各社の運用に合わせた選択が必要です。選択に困った場合はMKIにご相談ください!マルチテナントの最新情報なら常にあります(笑)

 

 

 

2020年2月、SAP社からSAP ERPのサポート期限を2025年から2027年に延長するとの発表がありました。サポート期間が2年間延びたためじっくりと検討する猶予が与えられましたが、刻一刻と進む新しい技術への備えを止めるきっかけにもなり得ます。昨今では、2025年の崖を乗り越えるためのキーワードとして、企業のIT資産を最新技術に対応させて近代化を図る「ITモダナイゼーション」という単語を耳にする機会が増えました。サポート期限の延長に伴い、企業内でのSAP ERP 6.0の稼働期間を延長することは企業のITモダナイゼーションを止めることに繋がるだけでなく、社内ITシステムでの最新技術の活用遅延にも影響します。また、時期も先延ばしして大丈夫!なんて小学生の夏休みの宿題のように考えていると、発表前のように直前でSAPのエンジニア不足になりかねません!移行を進めないことによりこのような事態を避けるため、皆さまにはMKIの様子を伺いつつ、コツコツと情報収集や経営層への根回しなどプロジェクトをスムーズに進めるための準備をお勧めします。

 

さて、第5回はS/4HANA Cloudの導入を検討するにあたり疑問に思うことを現場の生の声を交えながらお答えしました。第6回ではついにS/4HANA Cloudの本番稼働をお伝え出来そうです(笑) 次回もお楽しみに!

 

 【関連ページ】
クラウドの端から失礼します。 vol.01
クラウドの端から失礼します。 vol.02
クラウドの端から失礼します。 vol.03
クラウドの端から失礼します。 vol.04

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