2020/12/23
商社技術第一部 第一技術室
弊社では独SAP社のシステムをベースとした基幹システムの保守運用を行っています。一般的にイメージされる保守運用は、問い合わせや障害対応等のお客様のシステムを止めることなく安定稼働させることが主な業務です。しかし、弊社の保守運用では基幹システムの開発やプロジェクト案件も対応するため、お客様との方針検討から本番リリース後の保守運用までトータルでカバーする高い技術力とユーザ業務知見が求められます。
弊社は1976年に三井物産の情報システム部門が独立して出来た会社であり、その後44年にわたり、時代と共に変化する同社の基幹システムの保守運用を担っています。これは私たちの保守運用業務に対して厚い信頼を頂いている証だと考えています。
私たちが保守運用をする基幹システムは企業の経営にかかる基幹を担うシステムであるため、お客様が安心して利用できる環境を提供することが求められます。中でも三井情報が保守運用を提供する三井物産の基幹システムでは「世界を相手にする保守運用」、「変化とスピードが求められる保守運用」の2つの特徴が挙げられます。
■世界を相手にする保守運用
当社が保守運用を提供する三井物産は世界各国に現地法人や関係会社があります。基幹システムは国内拠点向けと海外拠点向けで分かれており、弊社はその両方の保守運用を担当しています。基幹システムでは在庫管理や受発注処理を行うため、システムが停止してしまうと様々な処理に影響を及ぼします。三井物産の場合は世界各地の拠点で基幹システムを利用しているため、24時間365日稼働が求められ、緊急時は日本の日中・夜間、平日・休日問わず連絡が来ます。また、ユーザとのコミュニケーションは日本語に加えて英語が求められ、海外拠点向け基幹システムの管理ドキュメントは主に英語で作成されています。そのため、日本にいながら世界を相手に保守運用を行うという貴重な体験をしています。最近は様々な会計処理のデジタル化が各国で推進されており、e-invoice導入や税務当局等への報告書をCSVファイル形式等でデータ送信する機能などの導入に向けた検討をしています。これらはSAP標準で提供されているソリューションが当てはまるケースもあれば、アドオン開発が必要なケースもあり、業務を通じて開発技術の蓄積と世界のトレンドを日々感じています。
また弊社では業務の一部をオフショアとしてインドのIT企業、テックマヒンドラ社(以下 TM社)に委託しており、基幹システムの利用者だけでなく保守運用するメンバーもグローバルという特徴があります。TM社との協業は三井物産とTM社が属するマヒンドラグループとのパートナーシップがきっかけとなったもので、全世界にSAP製品の導入および運用保守の実績を持つTM社と弊社が持つナレッジを高品質なサービスの提供に繋げています。
■テックマヒンドラ社のインド・Puneオフィス
■変化とスピードが求められる保守運用
三井物産の保守運用では「待ったなしの変化」が求められ、制度改正等への対応はもちろんのこと、基幹システム自体に対する機能改善、IT技術の進化への対応が求められます。最近では、国内ではまだ事例の少ないSAP S/4HANA®への移行(海外拠点向けは2019年11月、国内拠点向けは2020年9月に本番稼働)やSAP Cash Application※1導入を行う等、他社に先駆けて新しい技術への探求と、その技術を使った業務改善やDX(デジタルトランスフォーメーション)に挑戦しています。クラウド移行、RPA(サーバ型・デスクトップ型)対応、国内の税制変更対応(消費税等)、コロナ禍における各国の軽減税率対応や在宅勤務率UPに伴うプロセス自動化(銀行との自動データ連携等)は、時代のニーズにスピーディかつダイナミックに対応してきた事例として挙げられます。三井物産では生産性・品質・スピード向上実現を目的とした取り組みを行っています。本取り組みの中で、保守運用を担う私たちは、RPAを活用し、単純にユーザ業務を自動化するだけでなく、業務の見直しや基幹システム側のシステム変更を視野に入れ最適な手段を検討しています。また、基幹システム側の変更を行う際はユーザ自身が作成・運用する自動処理への影響を考慮し、影響がある場合は事前アナウンスをする等状況に応じた保守運用とユーザへの配慮に頭を悩ませながら業務を行っています。
上述の通り、いわゆる通常の保守運用業務に加え、開発やプロジェクト案件、進化するIT技術への取組が、弊社の保守運用業務には含まれます。「それはもう保守運用じゃないのでは?」と思われる方もいると思いますが、包括的に一つの組織で対応することで、スピード感をもって要望に応えられることが高い満足を頂けている一因と考えています。
さらにはここで得られた経験を他のお客様に展開出来ている点は弊社にとって大きな武器となっています。上述のSAP S/4HANA 移行と移行後の保守運用業務で得た一連の経験を展開することはもちろん、法定要件や業務改善等の各種リクエストに対して、過去の対応事例を元にソリューションを提案することも可能です。また、保守運用でオフショア活用を検討しているお客様から「実際にオフショアを使って保守運用をしている三井情報の意見を聞きたい」と要望を頂き、実体験から感じたメリット・デメリットや注意点等交えてご説明するといった機会もありました。
このように、三井物産の保守運用で培った経験が、他のお客様にとっての価値となり、新しい繋がりを生み出すきっかけになっています。
※1 SAP Cash Application:Machine Learningを使用し、債権照合を自動化、精度向上するためのサービス
ここでは社員を育てる取組や風土をご紹介します。
■SAP技術者育成
SAPシステムがベースとなるので、その製品ノウハウは必須となります。弊社は組織を跨った教育の仕組みがあり、SAPの資格を持つ業務経験豊富なベテランが若手を育成しています。講義形式から実機を使った実践講習まで、受講する側の目的に合わせ選択可能で、Basisからアプリケーション領域、開発手法まで、保守運用業務含めた各種SAP関連業務の土台となっています。
■英語教育/海外文化との交流
ユーザや協業するオフショア先とのコミュニケーションには英語力が欠かせません。通訳を置いて対応することも可能ですが、直接会話することが品質の向上にも繋がると考え、会社が提供する英語教育の場や、TM社との電話会議で日々訓練しています。また関係性強化・業務向上を目的として、年に数回インド南西部Puneと東部ChennaiにあるTM社のオフィスに出張し、一緒に保守運用や開発業務を行ったり、改善点や新しい取組の共有等、顔を突き合わせて会話する機会を設けており、研修員制度を利用し長期滞在するメンバーもいます(今はコロナ禍により出張等は出来ていません)。
■テックマヒンドラ社で行われたクリケット大会の様子 | ■プネーの街を走るリキシャ(タクシー) |
保守運用から離れた取組としては、米国等海外で開催されるSAP社主催カンファレンス(SAP TechED、SAPPHIRE NOW)にも積極的に参加しています。他にも様々な教育機会がありますが、このような教育や取組が、弊社の保守運用業務を支えています。
私たちは早くからテレワークを導入しており、今回のコロナ禍における緊急事態宣言中も、パートナー会社含め大きな混乱もなくテレワークを中心とした業務体制に入ることが出来ました。テレワークが可能なIT環境があり、会社が定めるフレックス制度の活用も含め「ライフ&ワークバランスを追求した働きやすさ」も私たちの働き方の特徴の一つだと思います。これは、突発的な障害対応等はあるものの、ある程度計算がつく保守運用だからこそということもあり、また、室員が前向きに取り組むことに対しては否定的にならない風土があり、最近では管理職の男性社員が育休を取得した例もあります。「個人ではなくチームとして働く」文化が根付いていることも、働きやすさを支える一因となります。
以下は、時短勤務とテレワークを活用し家事育児と仕事の両立を目指す社員のとある一日となります。保守運用業務の契約時間は9:15~17:30ですが、チームとしての体制が確立しており、時短勤務やフレックスを利用し家庭やプライベートの事情に合わせ柔軟な勤務が可能です。2020年10月現在、コロナ禍もありテレワークの割合を増やすこともしています。
6:30-7:50 | 起床。子供と朝食、洗濯等。 |
7:50-8:10 | 子供を保育園に送る。 |
8:10-9:15 | 朝食の食器を洗いひと段落。コーヒーを入れて業務開始前の休憩。 |
9:15-10:00 | 前業務開始。前日業務終了後に届いた問い合わせや各種連絡を確認。 |
10:00-10:30 | チーム内の日次定例(オンライン)。システムの稼働状況と、チームの本日の予定を確認、認識合わせ。 |
10:30-12:00 | 問い合わせ内容について調査・回答。 |
12:00-13:00 | お昼休憩。夕飯の買い出しをすることも。 |
13:00-14:00 | 午後の業務を開始。チームメンバとオンラインで会話しながら、お客様との定例会議に向け資料を準備。 |
14:00-15:00 | SAPのPPモジュールに関する社内講座を動画視聴形式で受講。 |
15:00-16:00 | お客様との定例会議(オンライン)。 |
16:00-16:30 | メールチェックし、チームメンバに指示出し。 |
16:30- | 業務終了し保育園に子供を迎えにいく。 |
今回は弊社の保守運用サービスとそれを支える取組や風土等を紹介させて頂きました。これまで獲得してきた技術力や対応力、トータルでサポートする考え方をもって様々なお客様に対して満足頂けるサービスを提供出来ると考えていますが、現状にとどまらず、世の中やお客様のニーズに合わせて進化していくサービスに取り組んでいきます。
永田 和之
商社技術第一部 第一技術室
現在、三井物産の基幹システム保守運用業務に従事。
|
コラム本文内に記載されている社名・商品名は、各社の商標または登録商標です。
当社の公式な発表・見解の発信は、当社ウェブサイト、プレスリリースなどで行っており、当社又は当社社員が本コラムで発信する情報は必ずしも当社の公式発表及び見解を表すものではありません。
また、本コラムのすべての内容は作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。