2025年の崖を飛び越えるIT戦略とは

vol.1
ITコンサルは、企業にとって本当に必要か?
経営も現場も納得できるIT戦略の描き方

2025年の崖を飛び越えるIT戦略とは
経営戦略に沿ったIT戦略をどう描くのか──。デジタル技術が進化する中、これは多くの企業にとって重要なテーマだといえるだろう。しかし、その実現は言葉で表現するほど容易なことではない。IT戦略を描くためには、最新のデジタル技術を理解することはもちろん、既存のITシステムや経営(ビジネス)を理解し、さらにはITを使う現場のユーザーや運用する担当者を理解する必要があるからだ。そうでなければ、かっこいいばかりで実現性の低い“絵に描いた戦略”で終わってしまう。地に足のついたIT戦略を描くにはどうすればよいのか。ここでは三井情報(以下、MKI)の取り組みを紹介したい。

なぜITベンダーは、顧客の要望に応えられないのか

──社会のデジタル化が進み、ビジネスにおけるITの役割がますます重要になっています。市場の期待やニーズはどのように変化していますか。
三井情報株式会社 ソリューション技術本部 運用・開発ソリューション部 部長 大谷 恭久氏
三井情報株式会社
ソリューション技術本部
運用・開発ソリューション部 部長
大谷 恭久
大谷
 ITといえば、昔はバックオフィス業務の効率化ツールと捉えられていましたが、DXに象徴されるように、今は明らかにフェーズが変わっています。効率化だけでなく、ビジネスそのものや組織を変革し、持続的な成長を目指す。そういう期待が高まっています。経営戦略とIT戦略も密接に結び付いています。

 しかし、ITベンダー側はこの期待に応えられていない。お客様は経営の上流のところからサポートしてほしいと思っても、要件が固まった上で、それをインテグレーションするスタイルだからです。お客様の求めるものとITベンダーの対応にギャップが生じているのです(図1)。

 このギャップを埋めるため、MKIではお客様のITライフサイクルを中長期かつ継続的に支援する「ITコンサルティング」と「ITマネジメントサービス」(以下、ITMS )を展開しています。
図1 ITの役割とニーズの変化 図1ITの役割とニーズの変化 効率化のためのITは自社の情報システム部門で運用・管理が可能だったが、ITの役割が拡大し、それが難しくなった。スキル・経験不足を補い、戦略・企画の立案をサポートする。コアビジネスに直結する上流工程の支援が強く求められている
──ITコンサルティングとITMS、2つは何が違うのでしょうか。
大谷
 ITコンサルティングはITライフサイクルの上流工程、すなわちIT戦略やシステム化構想の策定、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング:Business Process Re-engineering)などをサポートします。「現状の課題は何か」「それをどう解決するか」「これらのITはどうあるべきか」など、先を見据えた展開を考えていくため、経営企画部門やCIOと共に活動します。

 また、情報システム部門にIT変革の必要性・重要性を強く認識してもらうため、活動はトップダウンで推進していきます。ビジネス環境やIT技術は大きく変化しているので、短い期間で“答え”を出していくことも大きな特徴です。

 一方のITMSは、IT戦略に基づいて実行計画の策定、プロジェクトマネジメントやベンダーマネジメント、運用支援などIT業務全般をサポートします。当社のエンジニアがお客様先の立場に立ち、継続的にIT業務を支援します。1年ごとのKPIを作成し、その達成状況を見て、サービスを今後も採用するかどうかを判断していただけます(図2)。
図2 ITコンサルティングとITMSの概要 図2ITコンサルティングとITMSの概要 ITコンサルティングは全体のIT戦略とそれを支えるシステム構想、ITガバナンスやセキュリティ対策のデザインを策定する。ITMSはシステム化の実行計画策定および推進や、ベンダー/ユーザーマネジメント、現場の運用支援など、ビジネス部門と情報システム部門の業務をサポートする

現場ニーズをくみ取らなければ、使われないシステムになる

──具体的には、どのようなステップでサービスを展開していくのですか。
三井情報株式会社 ソリューション技術本部 運用・開発ソリューション部 コンサルティング室 マネージャー 隅野 貴裕氏
三井情報株式会社
ソリューション技術本部
運用・開発ソリューション部
コンサルティング室 マネージャー
隅野 貴裕
隅野
 ITコンサルティングは、まず経営課題に向き合うところから着手します。ボトムアップ型のIT計画策定ではなく、経営視点で中長期的に目指すべきIT戦略を策定します。経営戦略、そしてIT戦略に基づき、必要なシステムやサービスを選定して具体的な実行計画を定めていきます。

鈴木
 実行計画のレベルまでくると、ITMSがITコンサルティングと一緒になって活動することも多くなります。ITMSは現場目線での最適なITサービスの検討を支援します。ユーザーがどんな課題を抱えていて、どう改善してほしいと思っているのか。こういう視点をおろそかにすると、せっかく作ったシステムが現場のニーズと乖離してしまい、使われないままに終わる可能性があります。

 ユーザーのヒアリングは特に重要です。業務部門のユーザーは必ずしもITに詳しいわけではありません。例えば、RPAを導入して作業を自動化するといっても、まずどの部分が自動化できるかを考えるために作業の棚卸しが必要です。また、導入してどれだけの効果が上がるのか、どれだけの投資が必要なのか。業務部門のインパクトも説明しなければなりません。IT部門と業務部門の、いわば“橋渡し”の役割を担っています。

 実行計画実現にあたっては、当社のソリューションありきではなく、ニュートラルな立場でのベンダー選定・マネジメント支援も行います。

──企業はITコンサルティングとITMSを利用することで、どのような成果が期待できますか。具体的な事例を教えてください。
隅野
 あるサービス業のお客様の例では、フロント業務とバックオフィス業務を支えるシステムを各部門の個別最適で進めてきた結果サイロ化し、マネジメントに必要な情報を即座に把握できないという課題を抱えていました。そこで各システムが経営にどう結び付いているかを精査・可視化し、変革に向けたIT投資戦略を策定しました。

 また、戦略は立てるだけではなく実行に至らしめることが重要です。実行に向けて、自社でどこまで対応し、何をアウトソースするのか、新しいITシステムの開発・運用には、どんなスキルや人材が必要か、といった組織・体制に関しても提言しました。そうした仕分けをしたことで、組織全体の意識が変わり、ITをより戦略に活用する文化が根付きつつあるという評価をいただきました。ほかにも製造業や流通業など、様々な国・業界のお客様に対しIT戦略の策定を支援しています。

三井情報株式会社 ICTコア技術本部 商社技術第三部  ITマネジメントサービス第一室 マネージャー 鈴木 美貴子氏
三井情報株式会社
ICTコア技術本部
商社技術第三部
ITマネジメントサービス第一室 マネージャー
鈴木 美貴子
鈴木
 当社では三井物産様の複数部門でITMSを提供しています。私はお客様先に常駐して個別部門の支援を行っています。

 現在までにいろいろな業務のシステム化に関わってきました。例えば担当するお客様の部門の業務に関連した幅広い情報を蓄積・提供するシステムはその1つです。これまでの情報収集は散在するシステムからそれぞれ集めたい人が集めるという方式。それを、必要なデータをまとまった形で参照したい、欲しい情報を簡単に収集できるようにしたいというニーズに応え形にしたのが、このシステムです。

 自身は以前に基幹システムの開発・保守を担当していたため、技術的な知見もあります。現場への説明や情報システム部門との橋渡しをするとき、この経験が非常に役立っています。

 三井物産様はグローバルでビジネスを展開していますので、標準化・システム化によって日本国内だけでなく海外支社店も含めた業務改革に貢献しています。

数多くのIT変革支援の知見・人材・技術が強みの源泉に

──2つのサービスを活用することで、ITライフサイクルの上流から下流までトータルにサポートできるわけですね。ほかの企業もITコンサルティング事業を展開していますが、MKIはどのような点が強みなのでしょうか。
大谷
 一番大きいのはIT戦略から現場レベルの実装・運用までを地に足のついた形でサポートできる点です。DXが大きな経営戦略として組み込まれる中、IT戦略は“立てて終わり”ではありません。戦略から入って、その実行や運用までを支援しなくてはDXを完遂することはできないからです。つまり、提案から運用までの一貫したサービスが求められているのです。

 その点、当社では総合商社大手の三井物産様をはじめ、不動産や金融、流通、製造業など幅広いお客様のIT変革を支援しています。様々な業界の業務知見を基に、経営に貢献するITを提案できる。これは大きな強みです。

 こうした活動の中で技術やノウハウを培い、さらに先進的なITソリューションやネットワークソリューションの提供も積極的に進めています。お客様の期待に応える高い技術力も有しています。

 加えてMKIはグローバルにビジネスを展開しているので、海外拠点のメンバーと連携して現地のユーザーからヒアリングも行える。グローバル展開に柔軟に対応できるのも強みの1つです。

──お客様のビジネス変革に貢献するためには、MKI自身も進化を続けていく必要がありますね。
大谷
 スキル評価制度を整備し、定期的にエンジニアのスキル評価を行っています。自分の強み・弱みを客観的に把握してもらうためです。足りない部分は高度IT人材を育成する教育カリキュラム「MKIアカデミー」でスキルアップを支援します。

隅野
 現場ではコンサルタントとして身に付けるべき業界・業務知識を明確にし、個々人がプロジェクト内のOJTを通じて成長していけるように支援しています。お客様の事業ドメインによって課題や求められるものは様々あり、技術だけでなく事業に関する知識を身に付けることでも現場力の向上を目指しています。

鈴木
 汎用的な技術やスキルの向上を支援する仕組みもあります。私の所属するチームではプレゼンスキル、論理的思考や問題解決などのメソッドを教育パッケージとして体系化することを進めています。こうしたスキルは業種・業務の枠を超えて必要になるもの。どんな業種・業務の課題解決にも対応できる人材の育成を目指しています。

──今後どのようなサービス強化を図っていく予定ですか。
大谷
 DXを推進するためには、ITを高度化するだけでなく、組織も変わらなければならない。経営とITが断絶していたら、この実現は困難です。情報システム部門が経営課題を強く認識し、経営と一体になって変革に取り組むことが重要です。そのためにはKPIを支えるITの見える化を強化し、トップダウン型のアプローチをより強力に推進していく必要がある。お客様が抱える課題の裏にある本質をつかみ取り、経営トップに“刺さる”価値ある提案で変革を支援していきます。
お問い合わせ
三井情報株式会社 E-mail:press-dg@mki.co.jp
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