三井情報株式会社
ソリューション技術本部
SAPソリューション部
第二技術室 室長
早川 雄博氏
課題解決に向け様々な選択肢を提示するITベンダーの1社がMKIである。同社は、国内外のSAP ERP導入・運用を数多く手掛け、SAPシステムに関するナレッジを豊富に有している企業だ。
MKIのSAPビジネスは、1999年に総合商社大手の三井物産の海外基幹システム導入を担当したことからスタートした。そこで培った商社・卸売業の業務知見をプリセットしたSAPテンプレート「MKI-Trade Suite」とグローバルロールアウト知見をベースに、商社・卸売業の基幹システム導入も数多く手掛けてきた。「世界40カ国60拠点の導入実績があり、グローバルでの運用保守にも対応しています」とMKIの早川 雄博氏は述べる。
化学系専門商社としてグローバルにビジネスを展開する稲畑産業の取り組みはその好例だ。SAP ERPおよびMKI-Trade Suiteを活用し、海外拠点の基幹業務システムを共通ERP基盤へ統合。システムの全体最適化により、業務プロセスの標準化と海外事業のガバナンス強化を実現したという。
MKIではこうした強みを生かし、SAP ERPからS/4HANAへの移行をサポートし、DX戦略を支える基盤インフラの近代化を支援している。「これまでのSAP ERPの豊富な導入実績から、多様な業種の業務に深く精通していることが大きな強みです。ここに独自のSAPのナレッジを生かし、既存の業務プロセスと変革の方向性を踏まえた上で、お客様にとってベストな方法を提案します」と佐多氏は語る。
三井情報株式会社
ソリューション技術本部
SAPソリューション部
第一技術室 マネージャー
加島 大嵩氏
移行方式の中で特に同社が注力するのが、費用や期間を圧縮可能なテクニカルコンバージョン方式だ。「事前のアセスメントでアドオン機能の影響範囲の見極めや膨大にあるSimplification Listを正確に仕分けし、すべての機能とデータをSAP ERPからS/4HANAへ移行するため、既存業務への影響がほとんどありません」とMKIの加島 大嵩氏は説明する。
三井物産の海外拠点基幹システムの大規模移行はこの方式で実施した。グローバルで約40カ国/約3500ユーザーが利用するSAP ERPをS/4HANAへ刷新するとともに、その基盤もプライベートクラウドからパブリッククラウドのMicrosoft Azure(以下、Azure)環境へ移行した。DXを支える基盤は迅速かつ柔軟なアーキテクチャが求められる。クラウドならそれが可能になる上、インフラやプラットフォームの運用管理の手間も削減できるからだ。
中でもAzureはインメモリーデータベースのSAP HANAのバックアップサービスを提供するなど、SAP関連の機能拡充を進めているので、将来性も考慮に入れ、S/4HANAの基盤として最適と判断し、Azureを選択したという。
業務への影響がほとんどないテクニカルコンバージョン方式を採用したことで、グローバルなS/4HANAへの大規模移行を約14カ月の短期間で実現した。一般に大規模システムの移行には「アセスメント」「データ移行手法の確立」「Simplification Listの仕分け」が大きなポイントとなるが、このプロジェクトを通して、各ポイントにおいて、さらに多彩なナレッジを蓄積できたという。
例えば、「データ移行手法の確立」の中で、ダウンタイムの極小化はその1つだ。SAP ERPをS/4HANAへ移行する場合、どうしても一定のダウンタイムが発生してしまう。「そこで、本プロジェクトではリソース割り当てやパラメータチューニングを行い、ダウンタイムを約3割削減することに成功しました」と早川氏は話す(図1)。
続けて佐多氏も「MKIは国内でも事例の少ない大規模基幹システムのテクニカルコンバージョン導入実績に基づき、コンバージョン手法をフレームワーク化しました。これにより、短期間かつ高品質のプロジェクト推進が可能です」とその強みを述べる。そのフレームワークを活用し、三井物産の国内基幹システムのプロジェクトも開始しており、約10カ月の短期間での移行を進めている。