DXを成功に導くヒント

VOL.1 ITグランドデザイン
VOL.2 DXコンサルティング

マルチSaaSを実現し自社をショーケース化 経営戦略をIT戦略に落とし込み全体最適を考えて変革に挑む

認証、セキュリティ対策も
一気通貫で対応

三井情報株式会社 ソリューション技術本部 クラウドソリューション部 第四技術室 室長 壹岐 文一氏

三井情報株式会社
ソリューション技術本部
クラウドソリューション部
第四技術室 室長
壹岐 文一

先にも触れたように、基幹システムのSaaS移行は日本ではまだ珍しい。だが、「グローバルではSaaS型基幹システムが主流となりつつあります」と岡田氏は語る。

グローバル市場に挑む、あるいは協業を進める上でも、世界標準のシステム基盤を取り入れ、標準機能に合わせて業務プロセスの改善を進めていくことも肝要だという。

とはいえ、SaaSを始めとするクラウドサービスの選択・連携については技術的ハードルが高く、導入後も製品のバージョンアップに伴う最適化、運用・保守など多くの課題に直面することが予想される。そこにマルチクラウドの構築に強みを持つ三井情報の出番がある。

実際にクラウドソリューション部でソリューションの提案、実装を担当する壹岐文一氏と伊丹暢氏は、同社の強みとして大きく3つのポイントを挙げる。

第1に挙げられるのが、同社自身が先進的なクラウド移行を実現することでショーケース化してノウハウを蓄積している点だ。

「SaaS型で提供しているサービスには優れたものが多いですが、特定の業務プロセスに特化しているため、どうしても部分最適となりがちです。一方で全体最適を考えた場合、いかに複数のサービスを連携してユーザーの負荷を軽減させるかが重要で、それによってさらなる価値の最大化が実現します」と壹岐氏。経営課題に合わせたソリューションの選択・連携、シームレスな設計・実装には、多くの経験を積んできたからこそ得られた知見が重要だという。

三井情報株式会社 ソリューション技術本部 クラウドソリューション部 第四技術室  伊丹 暢氏

三井情報株式会社
ソリューション技術本部
クラウドソリューション部
第四技術室
伊丹 暢

例えば、SaaSの連携にはAPIを利用するのが一般的だが、「サービスによって提供されるAPIのレベルは異なり、希望するAPIが提供されていないケースもあります」と伊丹氏。

実際に、同社のS/4HANA CloudとSales Cloud間のデータ連携においても、APIが一部利用できないことが発覚。多くの方法を模索した結果、RPAで対応する解決策にこぎつけたという。

同社のような国内2000人規模の企業ではまだ例の少ない、SaaS型基幹システム導入にチャレンジしたからこそ得られた貴重なナレッジも多いと2人は明かす。

もちろん自社だけではなく、顧客にもマルチクラウドを展開し、具体的な成果をあげている。サービス業の顧客では、SalesforceとBoxを組み合わせて提案書や報告書などの書類をデータ化して保管し、部門横断による情報共有で、社内工数が年間2800時間も削減された。他にも、ServiceNowとBoxを組み合わせることで、稟議書等の申請時間が年間670時間削減したと同時に、アクセス権や文書改ざん防止などセキュリティ面の向上も実現。三井情報は全体最適を常に考え、多様な働き方を支える柔軟なビジネス基盤を構築している。

2点目として、同社は専門ICT技術を擁す7社の合併により生まれた歴史的経緯もあり、コンサルティングからアプリケーション・IT基盤の設計・構築・保守・運用まで、トータルでITサービスを提供できる点にある。

特にクラウドサービスを企業に導入する際に重要となるのは、認証やセキュリティだ。同社のITグランドデザインでも、クラウドファーストのシステムを入れるために、まずは認証基盤を作ったという。

図:ITグランドデザイン2020 システム概念図。

ITグランドデザインの「システム概念図」。クラウド上に基盤を置き、さまざまな業務システムがつながる中、認証やセキュリティを確保

リモートワークが広がり、社内外からさまざまなクラウドサービスに接続することも多い昨今、セキュリティの担保は欠かせない。また、サービスごとに認証の仕組みも異なるため、設計からしっかりと考えていく必要があるが、同社は、ユーザーの利便性とセキュリティの両面を考慮した、一気通貫でのシステム提案が可能だという。

「長く運用保守業務を手掛けてきた経験から、お客様の業務を熟知した上で安心・安全なシステムのご提案ができるのも強みです」と壹岐氏。

まさに攻守併せ持ったITの利活用が実現するというわけだ。

3つ目の強みとしては、経営の“上流”からIT戦略に落とし込み、実行計画の策定から運用支援まで、IT業務全般をサポートできる点にある。

ITの差別化が企業の価値向上につながる昨今では、従来のようなボトムアップ型のIT計画ではなく、経営視点で中長期的なIT戦略を策定することが重要である。同社は、IT要件に沿ったシステム構築を手掛けるベンダーとは一線を画し、企業のシステムを中長期かつ継続的に支援するITコンサルティングとITマネジメントサービス(ITMS)を展開しているのも特徴だ。

クラウドサービスはすぐに利用開始できてしまうものも多い。しかし現場のニーズを優先して次々にシステムを導入してしまうと、業務の属人化やセキュリティ対策に課題が生まれる。同社のように経営戦略をIT戦略に落とし込み、ITグランドデザインとして社内に公開し、毎年計画的にシステムを整備することで、全体最適を意識した社内システムが実現できる。

手軽なクラウドサービスだからこそ重要となるIT戦略。同社はそれを自社で体現し、サービスとして顧客にも提供している。

さらにIT戦略は立てて終わりではなく、どのように実行して運用していくかが肝要。IT戦略をもとに必要なシステムやサービスを決めたとしても、現場のニーズと乖離してしまうと、使われないまま終わる可能性がある。ITMSではIT部門と利用部門のいわば“橋渡し”の役割も担っている。

特にクラウドサービスでは定期的なアップデートで提供される最新テクノロジーを活用し、どんどん使いやすいシステムに変えていくことが必要だ。

「クラウドはスモールスタートが主流なので、他のシステムとの全体最適を考えつつも、ユーザーの声を聞きながら、アジャイル開発で機能を少しずつ改善しながらサービスを拡充していくことを大事にしています」と壹岐氏は語る。

 たまったデータを活用し、
データドリブン経営を推進

冒頭でも触れたようにクラウド化はシステムを移行したら終わりではなく、いかに経営戦略に生かすかが重要となる。「今後は自社でたまったデータをどう活用し、データドリブン経営を実現していくか。データの利活用を積極的に進めていきます」と岡田氏。

壹岐氏、伊丹氏も技術者の立場から、「社内外のクラウド移行でたまった知見を生かし、AIなどの先端テクノロジーを組み合わせた新たなソリューションの開発にも取り組み、広く提供していきたいですね」と力強く語る。

最後に岡田氏は「デジタル変革には、業務プロセスや発想の転換、組織・企業風土の変革も伴います。そのためにも社員一人ひとりが何を変えなければならないのかの“気付き”を共有するグランドデザイン、IT戦略の全体像をしっかりと描くことが大前提となります」とデジタルシフトの根幹を指摘する。

まさに“隗より始めよ”の姿勢で、DXに果敢に取り組む三井情報。企業も変化の時代を生き抜くために、経営戦略に即したIT戦略の策定から、社内システムの全体最適を考えてみてはどうだろうか。

※日経BPの許可により「日経クロステック Special」2020年12月11日公開に掲載された広告から抜粋したものです。禁無断転載©日経BP