SAP TechEd 2017 Las Vegas参加レポート

2017/12/26
 

システム技術グループ エンタープライズ技術部

1.はじめに

こんにちは。今回のコラムはエンタープライズ技術部からお送りします。エンタープライズ技術部では、企業へのSAP社の製品・ソリューションの導入・保守運用を行っています。特定のお客様に対してシステム導入を行うだけでなく、SAP社の製品を使用したサービス・ソリューションを広く提供しています。
今回のコラムでは、2017年9月にアメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスで開催されたSAP TechEd 2017 Las Vegasの様子をお伝えしたいと思います。

2.SAPとは?

ドイツSAP社は企業向けERPパッケージシステムの世界最大手として有名です。SAP® ERPは多くの企業に導入されており、日本でも大企業を中心にトップシェアを誇ります。日本国内では現在、2006年に出荷されたSAP® ERP 6.0という製品が広く利用されています。2015年に同社のインメモリーデータベース SAP HANA®をプラットフォームにした最新製品SAP S/4HANA®が出荷され、海外ではすでにSAP S/4HANAの利用が進んでいます。SAP ERP 6.0は製品サポートが2025年までと決まっており、これから2025年に向けて日本国内でも SAP S/4HANAへのバージョンアップの需要が盛り上がることが予想されます。
これまではERPパッケージベンダーとしての認知度が高かった同社ですが、近年はERP以外の領域にも多く進出しており、中でもデジタルトランスフォーメーション分野に力を入れています。これからご紹介するSAP TechEd 2017 Las Vegasでもデジタルトランスフォーメーションについて多くのセッションが開催されました。

3.SAP TechEd 2017 Las Vegas参加レポート

・SAP TechEdとは
SAP TechEdとは「SAP Technology & Education」の略で、SAP社が全世界の技術者向けに開催する情報発信・教育イベントです。年3回、アメリカ、インド、欧州で開かれており、中でも最大規模となるのがアメリカ・ラスベガスでの開催です。今年は9月25日~29日にかけてThe Venetian | Palazzo Congress Centerで開催され、エンタープライズ技術部からも3名が参加しました。

 

■ラスベガス・マッカラン国際空港ではスロットマシーンが出迎えてくれます

 

■会場となったThe Venetian | Palazzo Congress Center

 

SAP TechEd 2017では最新技術のロードマップ、各製品のベストプラクティスに関する講義、実機を使用して製品のトレーニングを受けるハンズオンなど1,200以上のセッションが開かれ、全世界から数千人の技術者が参加しました。広大な会場には、セッションルームだけでなく、技術者同士が交流するためのネットワーキングスペース、各企業の展示ブースやSAP製品のデモスペースも設けられ、最新技術について熱心に意見交換する参加者の姿が多く見られました。

 

会場の様子2

■会場の様子

 

今回のSAP TechEdで大いに盛り上がったトピックは、「デジタルトランスフォーメーション」と「SAP® Cloud Platform」の二つでした。これから、この二つのトピックについて具体的な事例を交えてご紹介したいと思います。

・デジタルトランスフォーメーションの推進

SAPは今年5月にSAP® Leonardoを発表しました。SAP Leonardoとはデジタルトランスフォーメーションを行うためのSAPソリューション群を総称するブランドで、IoT、ビッグデータ、AI、機械学習(マシンラーニング)、ブロックチェーンといったデジタルテクノロジーが使用されています。これらのテクノロジーを駆使し、また、これまでSAP ERPに蓄積された膨大なデータと統合することで、顧客ビジネスのイノベーションを支援するというのがSAP Leonardoの思想です。TechEdではSAP Leonardoによるデジタルトランスフォーメーションの事例が多数取り上げられました。その中から、予測分析ソリューションをご紹介します。

 

事例紹介① SAP® Predictive Analyticsによる予測分析ソリューション
近年ビックデータ活用の重要性が盛んに叫ばれていますが、ビッグデータの分析や、それをもとにした予測モデルの作成には統計分析の専門知識やノウハウが必要となり、効果的な分析を行うのは難しいものです。SAP Predictive Analyticsを使用すると、データ分析の専門家でなくてもビッグデータを含む様々なデータ分析・予測を行うことができます。SAP Predictive Analyticsでは、分析対象のデータソースを指定すると、最適な分析アルゴリズムをシステムが自動的に選定し、予測分析モデルを作り上げます。この予測分析にはAIによる機械学習(マシンラーニング)が使われているのが特徴です。機械学習を取り入れることで、より精度の高い予測分析を、より迅速に行うことができるようになります。
SAP Predictive Analyticsによる予測分析モデルは、様々なSAP製品に組み込むことができます。例えば、SAP ERPの在庫管理データを分析して購入した商品の配送遅れのリスクを検知したり、販売管理データ分析から得られた売上予測を元に仕入量をコントロールしたりすることができます。TechEdでは、SAP以外のサードパーティ製品のデータと組み合わせる事例も紹介されていました。例えば、SNSの投稿データを分析してトレンドを導き出し、販売計画に役立てるというものです。これらを組み合わせて使うことで、「SNSの投稿をもとに今後流行りそうな製品をいち早く見つけ、それを迅速に配送してくれる仕入先から購入し、それをどこで販売したら効果的か検討し、最終的な今期の業績予測を立てる」ということが簡単にできるようになります。

・SAP Cloud Platform

SAP Cloud Platform(以下 SCP)とは、SAP社がPaaSとして提供するアプリケーション開発基盤で、SAP Leonardoの各ソリューションを支える基盤でもあります。従来のSAP ERPでは、クライアントPCにインストールしたSAP GUIという専用のツール上で、ABAP®という専用のプログラミング言語で開発を行う必要がありました。SCPはクラウドベースの開発基盤のため、Webブラウザから簡単にアクセスでき、言語もABAPに加えてJavaやHTML5などを使用することができます。また、SAP S/4HANAとSAP Leonardoの各ソリューションや、サードパーティのクラウドサービスとの連携も簡単に行うことができます。
世の中のニーズが目まぐるしく変わる近年において、「Agility」、すなわち変化に柔軟にかつ迅速に対応できるシステム開発が求められています。SCPを使用すると従来よりも簡単かつ迅速にシステム開発を行うことができ、システムのAgilityをより高めることができるようになるわけです。次にご紹介するのは、TechEd で取り上げられたAgilityを高めるための開発手法の事例です。

 

事例紹介② Buildによる画面開発
SAP S/4HANAではユーザはSAP Fiori®と呼ばれる画面を利用してデータ入力やレポートの表示などを行います。このSAP Fiori画面の開発をサポートするのが、SAPがSaaSとして提供するBuildというツールです。Buildを用いると、SAP Fiori画面のモックアップをプログラミングなしで簡単に作ることができ、画面遷移やデータの表示なども行うことができます。さらに、作成したモックアップをSCPに移植し、そのまま実際のアプリケーションの画面として使用することもできます。
例えばユーザが新しい画面を必要としている場合、従来は開発者がMicrosoft® Excel®等で画面イメージを作ってユーザと仕様を確認し、その後に実際の画面を開発するのが一般的でした。この方法だと、「実際に出来上がった画面を見たらイメージと違った」「出来上がった画面の一部を変更するのに時間がかかる」といった問題点がありました。
Buildを使うと画面開発の効率を大幅に上げることができるようになります。開発者はBuildを利用して画面のモックアップを作成しユーザと仕様を確認します。モックアップは実際の画面のように動くためユーザはイメージを確認しやすく、また簡単に修正・変更することができるためユーザからの変更要望もすぐに反映することができます。結果としてユーザにとって本当に欲しい画面を作ることができます。さらに、ユーザの確認が取れたモックアップをそのまま実際の画面として使用できるので、画面を改めて開発する必要もありません。

4.おわりに

TechEdでは、この他にもデジタルテクノロジーを使用したソリューションが数多く取り上げられていました。デジタルデータを用いてどんなビジネスが実現できるか、そしてそれをいかに柔軟に行うかが今後のMKIの腕の見せどころであると実感しています。
今後、AIや機械学習といったデジタルテクノロジーを使用したビジネスの需要はどんどん高まっていくことが予想されます。当部ではこれまで培ったSAP ERPの技術知見に加え、SAP製品とデジタルテクノロジーを組み合わせたソリューションを提案し、お客様の新たな価値・ビジネスの創出を実現していけるよう日々取り組んでいきたいと思います。

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