コンタクトセンターの未来は“おもてなし”がポイント?

 2018/09/04 

社会インフラ技術グループ 

社会インフラ第一技術部


1. はじめに

MKIでは最新のコンタクトセンターの動向、技術情報を収集するために、2016年からCCWと呼ばれるコンタクトセンター関連の世界最大規模のConference & Expoに参加しています。

CCWの正式名称は昨年までは「Call Center Week」でしたが、今年から「Customer Contact Week」に変更されています。)

このCCWは毎年、米・ラスベガスで開催され、日本のコンタクトセンター業界でもお馴染みの企業から日本未進出の企業まで、メーカー一押しの製品を知ることができます。

今回のMKIコラムでは2018年のCCW19th Annual Customer Contact Week)についてご紹介します。

尚、昨年の様子については2017919日掲載のMKIコラム「ICTを駆使した新たな『コミュニケーション』の追求をご覧ください。

 

 

 

2. ラスベガスのホテルで印象に残ったこと

■フルーツ水

CCWは朝の8時から始まります。朝が早いためベーグル、カップケーキ、ヨーグルト、コーヒーなどの軽めの朝食がバイキング形式で用意されました。ベーグルはその場で焼けるため、温かい朝食が取れて嬉しかったです。提供された食事は見慣れたものが多かったのですが、「フルーツ水」の存在に驚きました。その正体はカットされたトマト(?)ときゅうりが入った水です。カラフルできれいでしたが、飲みませんでした。


フルーツ水

フルーツ水

 

■温度

ホテル内は米国仕様なのか冷房がとても効いていました。長袖のジャケットを着ていたにも関わらず寒かったです。ラスベガスの気温は40-42度と暑かったのですが、冷房で冷えすぎた体を温めるにはちょうど良かったです。体が温まったとき、日向ぼっこしている海イグアナの気持ちがわかった気がしました。 

3.Expoについて

今年も近年の流行である「Customer Experience」をテーマに150以上の企業が参加していました。すべての企業を回ることはできませんでしたが、今年のExpoの傾向を述べたいと思います。

Customer Experience:顧客が商品やサービスを通じて得られる、またはそこに至るまでのプロセスで生じた体験価値のこと

 左から出展企業名が並んでいるパネル、Expoの様子

AI(人工知能)関連製品の一般化

昨年トレンドだったAI(人工知能)は特に目立っていませんでした。しかし実際は製品の一部にAIが組み込まれていることが多かったです。わざわざAIを謳わないのは、AI自体が既に新しい技術ではなく、他社との差別化要素にならないからだと思われます。つまり顧客の興味はAIそのものではなく、「AIがどのように使われているか、AIをどのように利用するか」に移っていると考えられます。

 

Virtual Agents、音声認識、テキスト分析関連製品の増加

Virtual Agentsとは顧客との通話をテキスト化し、その内容を分析した上で顧客と会話するという製品です。(Botなどが含まれます。)これらはコンタクトセンターのコスト削減だけでなく、コンタクトセンターのセルフサービス化にも役立ちます。

米国でも若手世代がSNSの浸透により人とのコミュニケーションを避ける傾向にあるとのことで、人が対応するのではなく機械が人と同じように対応する製品はさらに増えていくと思われます。

日本でも同様の傾向があるため、今後伸びていく分野になるかもしれません。既にボーカロイドやバーチャルYouTuberなどが存在するため若者には受け入れられやすいと思います。

 

■機能の集約化

コンタクトセンターを支えるシステムには電話機、PBXCTIIVRCRMWFM、録音、レポートといった様々な製品があります。これらの製品を組み合わせて一つのコンタクトセンターシステムを構築していくのですが、Expoではコンタクトセンターの様々な機能を一つのシステムに集約しているソリューション型の製品が散見されました。提供方法もクラウドベースのものが半分ほどを占めていました。

日本でもサブスクリプションでのサービス提供が増えている背景があり、また保守の窓口が一本化されるなどのメリットが生じるため、ソリューション型の製品導入の流れが加速すればいいなと思います。

4.サイトツアーについて

CCWには米国の有名企業を視察するサイトツアーが組み込まれており、今回はZappos社を視察しました。


Zappos社とは

 Zappos社は米国の靴を中心としたアパレル関連の通販会社です。顧客へのサービスに定評があり、リピーター(ファン)が多いことで有名です。破格の待遇でAmazonに買収されたことも有名なエピソードです。日本のコンタクトセンター業界でもZappos社のコンタクトセンターの顧客対応が素晴らしいことで知られています。


 Zappos社のロビー

 

■顧客が満足するサービスを提供するために

 Zappos社のコンタクトセンターでは日本でよく使われるコンタクトセンターの運用指標(1時間あたりの対応件数、1通話あたりの対応時間、売り上げノルマなど)が基準になっていません。その代りにZappos社は独自の指標(顧客の満足度、顧客とどれだけ個人的にかつ感情的に繋がれたのかなど)で評価をします。

また社員一人ひとりに仕事の裁量・自由が与えられており「顧客が満足するサービス」を考えながら行動しているとのことです。そして行動のベースとなる社訓(コア・バリュー)は社員にしっかりと根付いているそうです。


 

 コア・バリューの10項目

 

■社内の雰囲気

とにかく社内はアットホームで自由で楽しそうな雰囲気にあふれていました。

また、ここは会社なの?と思うくらい施設が充実しており(アクアリウムに囲まれた仮眠室、音楽室、ヨガなどのクラスも開講するジム、バスケットコートなどなど)、社員が描いた壁一面の黒板アートやユニークな置物もあります。もちろん業務エリアも社員自身で賑やかな装飾がされていて遊び心満載です。

Zappos社は従業員の満足度が顧客満足度に繋がるという考えを持っていますが、顧客へのサービス提供の土台となる社内は、実際に精神的にも設備的にも前向きな気持ちになれるようになっていました。


 

 左から仮眠室、ジム、黒板アートの一部 

 

 業務エリアの様子

  Zappos.comホームページ  https://www.zappos.com/

 

5.まとめ

Expoで紹介されていた製品はコンタクトセンター運営の効率化、コスト削減が主目的ではなく、オペレーターを支援し「Customer Experience」を生み出すための手段として紹介されていました。またサイトツアーでは「顧客が満足するサービス」の考え方、土台を目の当たりにしました。そのためコンタクトセンターの傾向は「業務の効率化、自動化」から「おもてなし」にシフトしているように感じました。

 しかしコンタクトセンターを運用する上では「業務の効率化、自動化」と「おもてなし」の“どちらか”ではなく“どちらも”が必要です。そのため現在は「効率化・自動化」と「おもてなし」の共存への過渡期と考えます。定型業務の効率化、自動化を進めることで時間や人のリソースに余裕を作り、その余裕を非定型業務に割り当てることで「おもてなし」に力を入れていくことができるからです。

 日本では「おもてなし」が一定水準にあるため、顧客満足度を高めるために「より安く、より早い提供」が重要視されがちですが、業務の効率化、自動化が成熟したときには更なる「おもてなし」に力を入れていくと思われます。

私たちMKIは「効率化・自動化」も「おもてなし」も支援していけるように、継続的に情報収集を重ねていきます。そして製品の特徴(機能、導入メリット/デメリットなど)や運用への組み込み方を検討し、お客様に最適な提案、システム構築に取り組んでいきたいと思います。 

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