体内の路線図を探索する

 
2019/09/27

 

 

バイオサイエンス部 バイオサイエンス室

はじめに

 

 

皆さんは普段出発地から目的地まで電車で移動する場合、どのような経路探索をされますか。


最近では気軽にスマホアプリ等で経路探索が可能となり、私自身も重宝しています。経路探索の基準として、できるだけ早く目的地に到着する経路、できるだけ乗り換えが少なくなる経路、多少遠回りでもできるだけ座れる経路等、目的に応じた様々な経路を提案してくれるかと思います。


実は生体内でもこれと同じような状況が起こり得るのです。

生体内の路線図

代謝パスウェイと呼ばれる、生体内で起こるタンパク質(酵素)による化合物(代謝物)の変化のつながりは、まるで電車の路線図のように私達の体の中で構成されています。この代謝パスウェイの各経路を通じて、生命活動に必要な物質(アミノ酸や糖、脂質など)が生産されていきます。


これらの生体内の物質の中には、工業的に有用な化合物も存在します。そのような化合物を目的地のように設定し、「できるだけ安く目的地に到着する経路 = できるだけ安い原料を用いて目的化合物を合成する経路」や「できるだけ早く目的地に到着する経路 = できるだけ短いステップで目的化合物を合成する経路」といったシミュレーションを実行することで、有用な化合物の効率的な合成経路や未知の合成経路を予測することができます。


その他にも、(鉄道路線ではありえませんが)経路をつぶしてそこをわざと通らないようにし、別経路に誘導することで目的化合物の収量を増やすようなシミュレーションなど、コンピュータの世界だからこそ実現できる手法が数多く存在します。

MKIの取り組み

当社では前節でご紹介した手法の機能実装やGUI開発など、お客様の課題解決のための支援をしています。その一例として、荒木 通啓先生(京都大学大学院 医学研究科 特定教授、神戸大学大学院 科学技術イノベーション研究科 客員教授)への研究支援にて開発した、代謝経路探索・設計のためのWebアプリケーション「M-path」(http://bp.scitec.kobe-u.ac.jp/m-path/db/)があげられます。

 

現在は生体内の代謝パスウェイのうち、ごく一部の部分のシミュレーションしかできていませんが、今後スーパーコンピューターのような豊富な計算資源が手軽に使えるようになると全体を使ったシミュレーションが可能になるかもしれません。これまで合成が困難だった材料の合成経路や未知の代謝経路を見つけ出すといった目標に向かって今後も取り組んでいきたいと思います。

おわりに

MKIのバイオサイエンス事業では、上記のような代謝工学・生物工学と呼ばれる分野の研究支援の他にも、酵素と化合物の複合体のシミュレーションを行うケモインフォマティクスや構造インフォマティクス、酵素配列の解析を行うバイオインフォマティクスなど、各種インフォマティクスの研究支援を行っています。
各分野においてプロフェッショナルなスキルをもつエンジニアが多数在籍していますので、些細なお困りごとでも何なりとご相談いただければと思います。

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