HACCPに準拠した衛生管理を支援

2021/03/12
流通・サービス技術部 第二技術室

はじめに

三井情報は、流通業界向けに多数のソリューションの導入実績を持ちます。今回のコラムは、当社が流通業界の動向調査をしている中で着眼したHACCP(ハサップ)に準拠した衛生管理ソリューションについてご紹介します。


HACCPとは食品の製造・出荷の工程で、どの段階で微生物や異物混入が起きやすいかという危害をあらかじめ予測・分析して、被害を未然に防ぐ管理手法です。「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critical(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」の頭文字をとった言葉で、2020年6月に施行され、2021年6月には完全義務化となります。※1


これにより、原則としてすべての食品等事業者に、HACCPに沿った食品衛生管理の実施が求められることになりました。
食品等事業者と言っても対象は広く、食品の製造業者、調理を行うレストラン等の飲食店、販売を行うスーパーやコンビニ等が該当します。
HACCPを導入せず、食中毒などの危害要因(ハザード)が発生した場合、食品衛生法違反となり、罰則、罰金、営業許可証の更新ができなくなるなどの措置の対象になる場合があります。また、営業許可を取得する際に「HACCPによる衛生管理が行われているかどうか」を確認されるようになるため、食品関連の事業を行う上で保健所への届け出は、避けて通れない道となります。もし、未許可で営業を行った場合、無許可営業の罪に問われて懲役刑・罰金刑の対象になります。

 

※1 厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html

 

HACCPに沿った衛生管理とは

では、HACCP導入の義務化とは具体的にどのようなことをすれば良いのでしょうか。
具体的には、HACCPが定める「7原則12手順」という管理手法に従って衛生管理を行うことです。

 

■HACCPの7原則12手順

衛生管理のソリューション

HACCPに準拠するレベルでの食品衛生管理は、モニタリングや継続的な記録が求められますが、データの記録、管理には人手と時間がかかるのがネックです。
そこで、人手をかけることなく効率的かつ確実に、HACCP基準に沿った衛生管理記録を行うソリューションへの需要が高まっています。
そこで以下では、小売店の衛生管理を、HACCP基準で人手をかけることなく効率的かつ確実に行うソリューションとして、サトー社が展開する「HACCP CLOUD」をご紹介します。

HACCP CLOUDは、IoTを活用してデータを効率的・自動的に記録し、クラウド上で一元管理するシステムです。
HACCPに準拠するための要となる、冷蔵・冷凍庫の温度管理、従業員の体調管理や身嗜みチェックをはじめとする小売りにおける衛生管理のポイントのデータを、従業員に負荷をかけることなく記録します。
以下、HACCP CLOUDの特徴になります。


・冷蔵・冷凍庫の温度管理
冷蔵・冷凍庫の温度は、温度センサーにより自動で集計します。
異常検知した場合は、管理者に通知も可能です。
また、冷凍・冷蔵機器のメーカーの違いに関わらず、一つの画面で管理できるほか、自社の商品管理ルール情報の取り込みも可能です。



 ■HACCP CLOUD概念図
(出典:https://www.sato.co.jp/market/retail/haccp_cloud/

 

・従業員の体調・身嗜みチェック
従業員の体調管理や身嗜みチェックは、毎日行う必要があります。
一回一回はあまり時間のかからないことかもしれませんが、毎日のことなので塵も積もればかなりの時間を要します。
そこでHACCP CLOUDでは、Bluetoothの体温計を用いることで計測した体温データを自動連携できるようになっています。
もしそこで体調不良と判断された場合は、ポップアップでアラートメッセージを表示すると共にリアルタイムで管理者に通知を行うことが可能です。
身嗜みチェックは、チェックリストに回答する形式です。

 

■管理項目の例(身嗜みチェック)
(出典:https://www.sato.co.jp/market/retail/haccp_cloud/

 

・記録データの一元管理
クラウド上で各店舗の記録データを一元管理します。また一度記録されたデータは変更することができないようになっています。これは記録の改竄を防止するためです。
正確でミスのない衛生管理の記録はHACCP運用を確実に実行している証となります。
管理者は、集計された記録データをダッシュボードで確認、分析することが可能です。

また計測データを本部で一元管理することで、仮に問題が発生した場合も、記録データの検索が容易にでき、迅速な原因究明や再発防止対策が可能です。
多店舗化やスタッフの多様化にも影響を受けることなく、全店舗で統一した運用が可能です。


・拡張性
クラウドシステムなので、グループ企業などへの拡張性にも優れ、業務機能の連携や運用ルールの変更にも柔軟に対応が可能です。
さらに、他のシステムとのデータ連携インターフェイスも備えております。例えば勤怠管理のデータを取り込み、HACCP CLOUD内で入力データと突き合わせることができます。管理者は勤務実績に合わせて正しく入力されているかを確認でき、入力漏れにいち早く気付くことができます。こうした連携機能を活用することで、運用を向上させることもできます。

最後に

HACCPは、一般消費者が手にする食品の品質、安全性を高めるための制度です。
私達一般消費者からすると大変素晴らしい制度ですが、食品等事業者からすると、コロナ禍で感染拡大防止の対応に迫われる中、HACCPに沿った衛生管理の実施はかなりの業務負荷になります。しかし、日々の体調管理、消毒・手洗い、身嗜み(マスクの着用)など、HACCPで管理する項目の中には新型コロナウイルス感染防止対策と重なる部分も多くありますので、HACCPに対応することは、従業員も守ることにもつながります。

私たち三井情報は、これまで小売業者のお客様へ多くのソリューションを提供してきました。今後はHACCP CLOUDの展開を進めるサトー社とタッグを組み、お客様のHACCP制度対応をご支援するとともに、基幹システム等とのシームレスな連携を実現することで様々な課題解決の手助けをさせていただきます。

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