カラダを駆け巡る細胞

 
2020/01/09

 

 

バイオサイエンス部 バイオサイエンス室

はじめに

 


みなさんは、ご自身のカラダがどのようにつくられているかをご存知ですか?

普段意識することはないと思いますが、ヒトの体は数十兆個にも及ぶ細胞によって形作られています。そしてこの膨大な数の細胞には、内胚葉系(消化器官等)、中胚葉(筋肉や骨等)、外胚葉系(皮膚や毛髪、爪等)、血液や免疫系細胞など様々な種類があります。この多様な細胞が組織を形成し、組織が組み合わさって器官になり、さらに複数の器官が上手に配置されることで、カラダがつくられています。

このようにヒトの体には多数の、そして様々な細胞が存在し、それらの細胞が多様に絡み合って私たちの生命活動を支えています。

カラダの中を動く細胞

前述の通りカラダは沢山の細胞で形成されています。しかし命はたった1つの細胞、受精卵から始まります。


まずはじめに、受精卵は分裂を繰り返し、細胞数を増やしていきます。そしてその数が一定以上になると、分裂した細胞たちは各々の運命に従って異なる役割・機能を持つようになります。これを細胞分化といいます。分化した細胞はその役割に応じ適切な場所へ移動していきます。そしてカラダの様々な場所で組織を形成していくのです。

このように、カラダが形成される過程において細胞は、1個体の中で分裂を繰り返して終わりではなく、分化し、移動しているのです。
そしてこの細胞の移動は、ヒトの発生や創傷治癒、がんの転移など、カラダの形成から維持、破壊までの多くのことに関わっています。そのため私たちは、細胞の移動を観察することにより、様々な事を知ることが出来ます。


では、細胞の移動はどのように観察するのでしょうか?

動く細胞の観察・研究

カラダの中の細胞の動きを観察する手法として、自ら光る性質を持つ蛍光タンパク質というタンパク質を用いた、ライブイメージングというものがあります。


因みに蛍光タンパク質には様々な種類がありますが、中でも有名なGFP(Green Fluorescent Protein、緑色蛍光タンパク質)は、オワンクラゲという日本にも多く生息するクラゲが持つ蛍光タンパク質で、発見した生物学者の故下村 脩氏は、2008年にノーベル化学賞を受賞しています。近年は、GFP以外にも様々な色の蛍光タンパク質が発見され、使用する目的に応じ選択・利用されています。


ライブイメージングでは、蛍光タンパク質を目的の細胞で発現、発光させることにより、その細胞がどのように移動するかを顕微鏡下で観察します。近年、顕微鏡の技術開発が進んだことに伴い、高い時空間的解像度で細胞の挙動を観察できるようになりました。そしてこのような顕微鏡から得られるデータが蓄積され始めたことで、最近では細胞の移動方向の予測や、細胞に働く力のモデリングなど、AIを活用した研究も盛んに行われるようになってきました。今後さらに細胞移動の研究が進むことにより、ヒトの発生のメカニズムの解明や、がん細胞の遊走※1のメカニズム等を紐解く事が期待されています。

 

※1 細胞などが生体内のある場所から別の場所へ移動すること

おわりに

これまでご紹介した通り、様々な発見や技術の進歩により、私たちはカラダの中の細胞の移動の様子を観察し、そこから色々なことを知ることができるようになりました。

MKIでは、予てより医療用画像から対象物を検出するアルゴリズムの開発や、AIによる病態の画像判別など、生物分野における画像解析の取り組みを進めてきました。また生物分野からは離れますが、動画から顧客の購買行動を分析するなど、タイムラプス画像の解析も行っています。
今後は、これらの別分野で得た画像解析のナレッジを応用して、ライブイメージング分野にも取り組んでいきたいと考えています。

バイオインフォマティクスの分野で40年以上の実績を持つMKIは、常に新たな解析技術の習得に励んでいます。配列解析、分子シミュレーション、脂質解析等様々な分野のスペシャリストが在籍していますので、何かお困りごとがございましたらご相談ください。

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