【ローカル5Gのキホン】第3回 ローカル5Gの周波数割り当て

公開日:2024/03/14

第3回 ローカル5Gの周波数割り当て

はじめに

前回までのコラムの中で、ローカル5Gにはキャリア5Gと異なる周波数が割り当てられていると説明しました。今回はローカル5Gの周波数割り当てを中心に、周波数に関連する内容について説明していきます。

これまでの【ローカル5Gのキホン】は以下よりご覧ください。
【ローカル5Gのキホン】第1回 ローカル5Gとは何か? | 2023/12/22 | MKI (三井情報株式会社)
【ローカル5Gのキホン】第2回 ローカル5Gの特徴と導入メリット | 2024/01/16 | MKI (三井情報株式会社)

なぜ周波数が重要なのか?


周波数の割り当てについて説明する前に、ローカル5Gでよく周波数が話題にされる理由について簡単に触れておきます。

ローカル5Gは電波を媒体とする無線通信の方式の一つです。電波を媒体とするため、無線区間での通信容量は利用できる周波数の資源(リソース)に依存します。また通信エリアの設計を行う際、例えば電波がどの程度ガラスや壁を透過するというような、「電波のふるまい」を考慮する必要があります。この「電波のふるまい」にも周波数が大きく関わっています。

これらの都合から、周波数はローカル5Gの導入検討に大きく影響する重要な要素となっています。

ローカル5Gで利用できる周波数は?

周波数割り当て


2024年3月現在、ローカル5Gで利用できる周波数は上図のように決められています。携帯通信キャリアとは異なる周波数が割り当てられ、キャリア5Gのサービスを利用するユーザーからの直接的な影響を受けにくいことがわかります。また、周波数の資源(リソース)が多く割り当てられているので、大量の通信データを送受信できることが期待できます。

Sub6帯とミリ波帯

Sub6帯とミリ波帯


ローカル5Gで使用される周波数帯は、大きくSub6帯とミリ波帯に分かれています。どちらも4G以前では使われてこなかった高い周波数帯ですが、多くの周波数資源(リソース)を利用することができるなどの特長があります。これにより、高速大容量の通信が実現できるようになっています。

なお、周波数の性質や機器の入手ハードル(端末の選択肢やコストなど)により、Sub6帯の方が取り扱いやすく、2024年3月現在においてはSub6帯の利用が大半となっています。

周波数の帯域幅

周波数について考える場合、帯域幅も重要な要素になります。帯域幅とは、簡単に言うと周波数の範囲のことです。5Gで新たに使用されるようになったSub6帯とミリ波帯では、それぞれ100MHz幅および400MHz幅を基本的な最大の帯域幅とすることができます。4Gまでは20MHz幅だったことをふまえると、大幅に周波数の資源(リソース)が増えていることがわかると思います。



また、5Gにはキャリアアグリゲーションという帯域幅を束ねる技術(Wi-Fiにおけるチャネルボンディングのようなもの)が存在します。2024年3月現在、同技術に対応した製品は少ない状況ですが、将来的にはこの技術を用いて1つの基地局あたりの通信速度を更に向上させることが可能になります。

※ローカル5GはSub6帯の利用が主流になっているため、上図ではミリ波帯を省略しています。

導入検討の際に気をつけるべきポイントは?

ローカル5G制度上の使用条件

ローカル5Gの周波数割り当てが検討される際に、もともと同じ周波数帯を利用していた他の無線通信システムへ影響を与えないよう、いくつかの使用条件が定められました。このコラムでは、ローカル5Gの主流であるSub6帯の概要のみを簡単に説明します。

※詳細な内容については最新の総務省ガイドラインを参照してください。
 

①使用場所の制限(屋内・屋外)


上図の通り、ローカル5Gは周波数帯ごとに使用できる場所(屋内・屋外)が決められています。Sub6帯では、4.6-4.8GHzが屋内のみで利用できることになっており、屋外で利用できるのは4.8-4.9GHzのみとなっています。


②使用する地域と等価等方輻射電力(EIRP)


ローカル5Gでは、使用する地域ごとに電波をどの程度の強さで空間に出せるか(等価等方輻射電力/EIRP*)が決められています。4.6-4.8GHzは、そもそも利用できない地域が存在し、また特定の地域ではEIRPの上限が低く設定されています。4.8-4.9GHzは、EIRPの上限が高く設定されており屋外利用に向いていますが、特定の地域では上限がやや低くなっているため、留意が必要です。 

*等価等方輻射電力(EIRP):アンテナから放射される電力を等方性アンテナ利用時の電力に換算したもの。

Sub6帯の屋外利用では同一周波数チャネルでの展開に


Sub6帯を屋外で利用する場合、4.8-4.9GHzの100MHz幅しか選択肢がないため、利用検討する際は注意が必要です。

隣接基地局の間で同じ100MHz幅を利用すると、ローカル5G内で干渉するエリアが発生してしまうめ、再送などによる通信速度の低下が一定見込まれます。回避策として、帯域幅を分割する(100MHzより小さい幅を利用する)ことも可能ですが、その場合は通信容量を分割することになります。

市販の5G端末は使えるのか?


ローカル5G、キャリア5Gのどちらも5G技術を用いているため、市販されている5G端末がローカル5Gでも使えると考えてしまうのですが、端末によっては使えないケースがあります。そのため、ローカル5Gで端末を利用する場合は、事前にメーカーや販売窓口へ仕様の確認をおすすめします。

その際は、以下の3つの観点で確認しましょう。 
 ①ローカル5Gで主流となっているSA方式に対応していること
 ②キャリア5Gではなくローカル5Gの周波数に対応していること
 ③ローカル5Gの周波数で電波法に基づく認証を取得していること。 

②について、ローカル5GのSub6帯はBand n79という周波数帯に該当しますが、同じBand n79にはキャリア5G周波数(4.5-4.6GHz)も含まれます。そのため、『Band n79に対応している』という記載があってもローカル5Gが使えるとは限らないので注意が必要です。

おわりに

今回はローカル5Gで利用する周波数について説明しました。ローカル5Gが専用の周波数を割り当てられていることから、特に通信品質を担保したい用途に向いていることがわかったかと思います。次回はローカル5Gの機器構成について説明します。

執筆者

お問い合わせ

ページTOP
当ウェブサイトでは、サイトの利便性やサービスを改善するため、Cookieを使用しております。このまま当ウェブサイトをご利用になる場合、Cookieを使用することにご同意いただいたものとさせていただきます。Cookieに関する情報や設定については「個人情報保護方針」をご覧ください。 同意して閉じる