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「難しいけれど楽しい」からアイデアが生まれる~大学授業のアンケート分析から~

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目次

はじめに

 県立広島大学の地域創生学部から、毎年、学部3年生を対象にした特別講義に招待されて4年目になります。2025年度は「デザイン思考とアイデア発想の技法」と題した授業を行いました。さらに33名の学生にアンケートに協力いただいて学習体験を分析し、その結果をイノベーション教育学会の年次大会でポスターセッションとして発表しました。

 今回のコラムでは、この授業とポスター発表した内容の一部をご紹介します。

県立広島大学での授業について

 県立広島大学 地域創生学部 地域産業コース情報学科では学外から講師を招いてIoT・AI特別講義を実施しています。筆者はここで「デザイン思考とアイデア発想の技法」と題して180分(2コマ)の授業を行いました。
 近年、IoTやAI技術の急速な進歩にともない、技術と人間の関係は複雑さを増しています。そのなかでモノや技術を中心に製品やサービスを作るのではなく、それらを使う側の人間を中心にイノベーションを生み出すデザイナーの思考法が注目されるようになりました。こうした世の中の動き、デザインの考え方、それに基づくアイデア発想法を学んでもらうために、前半(70分)に講義、後半(110分)に体験ワークという構成で授業を組み立てました。

 授業後のアンケートでは、ワークによって得た学びと体験について、選択式と自由記述の質問に回答してもらいました。

イノベーション教育学会について

 イノベーション教育学会は、2013年に国内で先端的なイノベーション教育プログラムを提供する大学関係者を中心に設立され、活動成果や研究成果を発表して互いに学び合う場として運営されている学会です。2025年度の年次大会は、神戸大学で2026年3月21日・22日に開催されました。2日目のポスターセッションでは、大学や企業などから40件の発表があり、そのなかの1つに採択いただいて「大学授業におけるアイデア発想ワークの実践」というタイトルで、県立広島大学での授業とアンケート分析の結果について発表しました。

ポスターセッションで発表した内容

 ここからは、ポスターセッションで発表した内容についてご紹介します。

 授業後半のワークでは5~6名のグループでアイデアを共創する体験を設計しました。地元広島で創業した企業・カルビーのロングセラー商品を題材に、IoTやAIを使ったイノベーションの事例からヒントを得て商品の新しい体験・サービスのアイデアをチームで考えるというものです。このワークの体験を分析するために授業後にアンケートを実施し、 (1) 授業での学びについての質問、 (2) ワークでの体験を評価する質問に回答してもらいました。

 (1) 授業での学びについての質問では、「一人よりもグループの方がアイデアが良くなることがわかった」という回答が最もスコアが高く、自由記述でもこれを裏付ける記述が多くみられました。

 次に (2) ワークの体験を評価する質問では、ワークの「難しさ」と「楽しさ」の度合を5段階で評価してもらいました。「難しさ」は簡単に答えが出ないことへの心理的負荷や葛藤を示し、「楽しさ」はグループでの対話を促す高揚感や快感情を示します。

 回答の分析ではこの「難しさ」と「楽しさ」の評価スコアを組み合わせて以下の4つの体験タイプを設定し、それぞれの人数を集計しました。

 A 手応えのある楽しさ :難しさ4以上×楽しさ4以上
 B 無理のない楽しさ  :難しさ3以下×楽しさ4以上
 C 楽しさのない難しさ :難しさ4以上×楽しさ3以下
 D どちらもない手探り :難しさ3以下×楽しさ3以下

 授業では、ワーク①「問いを立てる」、ワーク②「事例からヒントを得る」、ワーク③「アイデアを発想する」という3つの連続したワークを行いました。それぞれのワークについて、4つの体験タイプ別にあてはまる人数を集計したところ、「A:手応えのある楽しさ」を体験していた割合が、ワーク①では76%、ワーク②2では70%、ワーク③では82%という結果になりました。(図表1)

(図表1:ワーク別、体験タイプごとの集計結果)

考察・まとめ

 今回の授業ではワークをとおして、学生が能動的に授業に参加し、他者と共にアイデアを創造するという共創体験をつくりました。これは座学だけで進める聴講型の授業とは違った学びを提供するためです。そのとき、ワークがただ楽しいだけでは自分の発想に限界を感じることがなく、手応えがありません。一方、ただ難しいだけでは視野が狭くなったり、自分とは違う相手の見方に関心をもつ余裕がなくなります。アンケートの結果からは、7割~8割の学生が「難しさ」と「楽しさ」が両立する「手応えのある楽しさ」を体験していたことが分かりました。ワークの体験をとおして、一人だけで発想することに限界を感じながらも、自分とは違うものの見方やアイデアに耳を傾ける動機が生まれ、「一人よりもグループの方がアイデアが良くなることがわかった」という結果(学び)につながった可能性が考えられます。

 ポスターセッションでは、上記の発表について多くの質問や意見をいただきました。対話から得られるフィードバックは何ものにも代えがたく、授業で実践した経験を言語化して大学や企業の方々に向けて発表することの大切さを実感しました。今後は、ここで得た気づきを活かした学習体験の設計と分析に取り組みたいと考えています。

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執筆者

高瀬
技術戦略部
デザイン思考、ワークショップの設計技法が専門。ファシリテーターとして社内外でワークショップを実践している。

三井情報グループは、三井情報グループと社会が共に持続的に成⻑するために、優先的に取り組む重要課題をマテリアリティとして特定します。本取組は、4つのマテリアリティの中でも特に「ナレッジで豊かな明日(us&earth)をつくる」「多様な人材が活躍できる『場』をつくる」の実現に資する活動です。

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