スポーツは、全世界共通の関心事の一つ。それも選手が国を代表して戦うとなると、そのイベントは非常に大きな注目を集めます。特別編成でテレビ放映されるというばかりではなく、直接試合を見ようと全世界から多くのファンが訪れます。オリンピック開催時には最大で来訪者が1,000万人近い規模になるという予想もあります。そのため、イベントを開催するホスト国にとっては、国の力やその文化を「世界」に伝え、国としてのブランドを高める絶好の機会となります。
社会とICTが密接につながった現代、スポーツの世界でもICT活用は重要なテーマです。スポーツイベントを機会にICTの発展に力を入れれば、世界の人々に日本の有する技術的なポテンシャルをアピールすることができます。これはICT飛躍の大きなチャンスでもあり、日本にも2020年の東京での大イベントという絶好の機会が目前に迫っています。
今回は、巨大スポーツイベントにおいてICTは何をなすべきかについて掘り下げてみました。
大きな方向性は「おもてなし」と「セキュリティ」
今回の東京でのICT活用の方向性は大きく分けて2つあると思っています。「おもてなし」と「セキュリティ」です。
前者は、スポーツそのものの感動体験を高めるICTの提案です。本質的な「おもてなし」ですね。その頃には4Kや8Kといった超高精細映像技術が普及段階に入っているでしょうし、それに対応する映像配信関連テクノロジーも伸びていると予測されます。スポーツの映像配信に関して、画像情報もさることながら、選手の属性情報やチームの戦績といった文字情報も非常に重要です。それによってより深く試合を観戦することができるからです。こうした情報を、テレビやインターネットで観戦している人々のみならず試合会場にいる人々にも届けられるテクノロジーに、スタジアムWi-Fiソリューションがあります。
MKIでは既に株式会社楽天野球団様に導入した実績があります。球場のような人口が密集する環境では、Wi-Fiは途切れたり繋がりにくい状況に陥りがちですが、MKIが提供するスタジアムWi-Fiソリューションはスタジアム向けの設計で、観客は球場内でWi-Fiをスムーズに使うことができます。このWi-Fiインフラを活かして、球場側では様々なファンサービス、例えば専用アプリで試合のビデオを再生できるサービスや試合情報の提供が可能になります。オンラインで飲食グッズを購入することもできます。先行している米国球場の例では、注文した飲食品を売店で並ばずに受け取れたり、ホームランが出たときに発売される特別商品をすぐさま手に入れられたり、とファンサービスの目線でICTが活用されています。これはまた運営側にとっても収益向上策の一環となっています。

一方、「セキュリティ」のICTですが、近年、世界的なスポーツイベントはテロの標的になりやすいため、開催期間中の安全を高いレベルで守ることは非常に重要なテーマです。これはもはやイベント会場周辺だけの問題ではなく、ホストする都市または国全体で考えるべきことです。
具体的な対策としてベースとなるのは、迅速に異変を検知するための"目"を多く持つことです。人海戦術には限界があるので、この分野では進化の著しいIPカメラが有力な対応策になります。MKIは、2005年開催の愛知万博でもIPカメラ敷設に携わりましたが、当時はまだ白黒画像で画素数も粗く、「何か不審物が映っている」というレベルの画像情報が関の山でした。しかし今は1,000万画素級の高精細カメラが登場し、カラー画像で人の手の中にある紙幣の種類まではっきり分かるようになりました。しかも、ネットワークスイッチの進化で、複数のカメラ画像の高速切り替えが可能です。動き始めた鉄道や不審者を追いかけたいというときに大きな威力を発揮します。
さらに、これまではカメラ専用のネットワークを敷設していましたが、MKIが提供するIPカメラ統合ネットワークソリューションは業務用ネットワークインフラとの統合敷設が可能です。これはSPB(Shortest Path Bridging)と呼ばれるネットワーク仮想化技術をベースとしたもので、簡単な設定でネットワークレイアウトを変更・拡張できるのです。「将来的にデジタルサイネージ用ネットワークを追加したい」といった場合も簡単に追加することができます。MKIは、このソリューションを、IPカメラはパナソニックシステムネットワークス株式会社、ネットワーク機器はAVAYAといったそれぞれの分野で強みを持つベンダーと協力しながら展開しています。鉄道や都市、商業施設、さまざまな単位で導入可能です。
このソリューションにおけるMKIの役割ですが、ネットワーク構築に加え、この統合ネットワークに集まってくる非構造化データを構造化し有用な情報として顧客に届けるような、ビッグデータ解析にまで踏み込んでこそ、MKIが関わる意義があるといえるのではないかと思っています。
例えばIPカメラは、画像を送るだけでなく熱や衝撃などを検知するセンサーとしても機能し始めており、ネットワークで取得できるデータの幅が大きく広がっています。これはまさにIoT(Internet
of Things)。取り組みとしてはかっこうのテーマなのです。
ちなみに、実はMKIはビッグデータ解析技術で賞も獲得しています。「SAP HANA INNOVATION AWARD」といって、インメモリコンピューティング SAP HANAを使って、革新的なビジネスシナリオやビジネスアプリケーションを創造するというコンペティションがあるのですが、その2015年大会のTechnology Trailblazer(技術先駆者)部門ビジネスアプリケーションで世界第3位になりました。Technology Trailblazer部門はビッグデータ/IoT活用がテーマで、私たちはインテリジェントサーチエンジンを提出したのです。
今後はビッグデータの活用コンサルティングもMKIに、そういっていただけるように努力していきたいですね。
話がそれてしまいましたが、2020年のスポーツの祭典は、ICTがインフラとして過去大会同等またはそれ以上に重要な役割を果たすでしょう。4年に1度の感動と安心のため、また、ICTの発展のために、MKIでもスポーツイベントを支えるICTインフラの整備により一層取り組んでいきたいと思います。

この記事は広報誌Inside Cube Vol.13より抜粋、加筆修正したものです。
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