はじめに
企業と顧客が関わりを持つ場所を顧客接点(=タッチポイント)と言います。このタッチポイントには、商品を買ってもらう実店舗、或いは営業担当など直接顔を合わせる機会、テレビ/ラジオ/広告媒体、通販のECサイト、企業のWebサイト、或いは企業がカジュアルな繋がりとして情報発信するSNS(Instagram、YouTube、X、LINEなど)が挙げられます。
これらタッチポイントに対して顧客も、固定電話、携帯、パソコン、タブレットといった様々なデバイスを使用して通話、メール、チャット、SNSなどから接してきます。問い合わせやクレームを受けつけて対応するカスタマーサポート、或いは顧客にリーチする営業アプローチ(製品販売、契約など)などを担うコンタクトセンターは、タッチポイントの最前線にあるともいえます。
コンタクトセンターのCX(顧客体験)向上とEX(従業員体験)向上
顧客が企業の商品・サービスに興味を持ち、その商品・サービスを利用するまでの一連の体験、その後のアフターサポートなどを含めた総称をCX(Customer eXperience = 顧客体験)と呼んでいます。そして、このCXは顧客接点を通じた集合体であるといえます。
このCXが良い経験として記憶・認識されることは、顧客の満足度を高めることとなり、顧客離れの防止やリピーター客の獲得、企業やブランドに対するロイヤルティの向上、顧客による宣伝効果(口コミ、投稿など)など、多くのメリットを企業にもたらします。そのため、顧客接点の最前線に位置するコンタクトセンターでは、CX向上が重要になってきています。
さらに昨今ではCXに加え、EX(Employee eXperience = 従業員体験)にも注力するコンタクトセンターが増えてきています。EXは従業員が働くことによって得られる体験であり、その満足度が高まり、自社に対する信頼感や愛着を持つようになることで、従業員のパフォーマンス向上が期待できます。その結果、顧客への応対の質(丁寧、顧客の立場に寄り添う親身な対応、顧客期待以上の回答内容)も良くなり、CX向上に寄与することになるといわれています。さらに、オペレーターの離職を防ぐ観点でも、EX向上にはメリットがあるため、コンタクトセンターでは、EXとCX向上が欠かせません。
CXとEX向上を支えるDXの推進
コンタクトセンターの顧客体験、従業員体験向上に必要なキーワードとしてエフォートレス(ここでは、顧客や応対するオペレーターが課題を解決するために使う時間や労力を極力無くす≒無価値な時間をなるべく減らすこと)が挙げられています。

■図1:顧客の無駄な体験

■図2:オペレーターの無駄な体験
CXやEXを向上させる3つのソリューション
この様な無駄な労力を削減し、CXやEXを向上させるものとして、今回は3つのソリューションを紹介します。
①ボイスボットによる顧客対応
対話型AIや音声認識、自然言語処理などの技術を活用し、「顧客の発話内容」(音声)を解析することで、顧客の負荷軽減やオペレーターの要件確認の手間を削減します。この技術は従来のIVR(Interactive Voice Response)システム(コールフロー)のプッシュ番号によるメニュー選択に置き換わるものとなります。
ボイスボットによる簡易な問合せであれば、回答までの対応も可能となり、24時間いつでも自動応答することも可能になります。

■図3:ボイスボットによるお客様ヒアリングからオペレーター引継ぎ
②Visual IVR(Channel Guide)による顧客対応
顧客の目的や受電状況に応じて、最適な問い合わせチャネル(問合せ窓口)へのスムーズな誘導や、顧客が自己解決できるFAQやWeb案内することで、スピーディな解決やオペレーター負担の軽減が見込むことができます。また、電話やチャット応対までの待ち時間を案内したり、窓口の変更を促したりすることで、顧客との機会損失を防ぐことも期待できます。

■図4:Visual IVR(Channel Guide)実装例
③生成AIによるオペレーター業務支援
生成AIを活用することで、顧客と応対するオペレーターの負担軽減と作業効率向上を目的とする「エージェントアシスト機能」を実現します。これにより、高品質な応対支援を可能とし、オペレーターはこれまで以上に顧客との会話に集中することができ、顧客の理解と共感を高め、優れたCX(顧客体験)を提供することが出来るようになります。また、オペレーターの業務体験の向上も見込まれ、同時にEX(従業員体験)向上にも寄与します。

■図5:生成AIによるエージェント支援
パートナーとして表彰を糧に
2023年の年末にボイスボット提供の主力メーカーである PKSHA 様のイベント「PKSHA Communication Partner Conference2023」で、MKI が「年間で最も新しい取り組み」を行ったことが評価され、INNOVATION AWARD を受賞しました。
受賞理由は、以下の3つになります。
- 複数の PBX(音声基盤)と PKSHA Voicebot 連携の自社環境および顧客導入実績
- 現在、音声自動応答の導入に際して顧客指定の PBX 連携前提での依頼が拡大していることへ柔軟に対応
- エンタープライズ企業様における受注/導入、更に需要が高いプロダクトとの連携構築を実現した
この受賞からボイスボットに限らずAI技術を活かしたPKSHA communication cloud製品(FAQ , Speech Insightなど)との連携開発をすることで、電話基盤(PBX)に留まらずコンタクトセンター全体向けのソリューションの提供により、更なるイノベーションを起こしたいと思います。
おわりに
今回は、CX・EX向上の重要性とそれを可能とするソリューションを3つ紹介させて頂きましたが、特に生成AI活用については進歩が著しく、画像や動画なども高度な解析ができるようになってきています。顧客の声(VOC:Voice Of Customer)も解析対象に加えた活用も今後期待されてくると思っています。進歩が加速する中で、ハルシネーションなど解決しなければならないことも同じように増えてきますが、様々なシチュエーションで活用ができるソリューション提供を今後も目指して活動して参ります。
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山本
CX第二技術部 第二技術室
2005年に中途入社後、CRMクラウドサービスの提案・システム導入&構築・運用支援・保守サポートを担当。 現在は主にコンタクトセンターに関わるソリューション提案とシステム導入とその活用、業務運用などのコンサルタントとして従事。
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