Cloudflare Connect 2025 レポート
ーコラムー
2025年11月25日号
はじめに
2025年10月13日(月)~10月16日(木)、米国ネバダ州ラスベガスで開催された Cloudflare Connect 2025 に参加しました。
本イベントは、Cloudflare社が主催する初の年次グローバルイベントです。初日はパートナー戦略やロードマップを発表する パートナーサミット から始まり、4日間にわたり、開発者・ITプロフェッショナル・ビジネスリーダー向けに約150のセッションが行われました。最新のサービスや技術アップデート、技術戦略、ユースケースの紹介に加え、展示や技術者向けハンズオン、ネットワーキングの場も提供されました。
AI時代のビジネスモデル変革とCloudflareの戦略
イベントでは、AIの進化がメディア業界だけでなく、あらゆる業界のインターネットビジネスモデルに変革をもたらすことが語られました。
Google主導の検索型トラフィックから、AIによる回答型トラフィックの変化により、生成AI企業が大量のコンテンツを消費する一方で、コンテンツクリエイターへの還元が極端に減少していることが指摘されました。AIクローラーのリクエスト数に対する実際のユーザーによるオリジナルサーバーへの到達割合が「OpenAI 1100:1」、「Anthropic(Claude) 42,000:1」という具体的な数字で示されています。※1
これに対応して、Cloudflareはアプリケーションサービス「AI Crawl Control」の機能として、AI クローラーに対して承認・ブロックを行うだけでなく、HTTP 402 レスポンスを利用した課金請求の仕組みを提示しました。(Pay-Per-Crawl:プライベートベータ版提供)
さらに、生成AIからエージェント型AIへの移行が進んでおり、AIエージェントによる取引の透明性と信頼性の確保が求められています。これに対して、Visaと連携し、エージェンティックコマース※2のための新たな標準プロトコル「Trusted Agent Protocol 」が発表されました。
その他にも、
アプリケーションサービス: AIアプリケーションのプロンプトインジェクションや機密情報漏洩を阻止する 「Firewall for AI(ベータ版提供)」
SASEプラットフォーム: シャドーAI対策、MCPサーバーおよびツールのアクセスを統合・制御する「AI Control(ベータ版提供)」
開発プラットフォーム: 「AI Gateway」、リモートMCPサーバーのデプロイ
といった、AIアプリケーションの開発環境、セキュリティ強化、従業員のAI利用の可視化・保護など、安心してAIを利用できる包括的な環境の提供に積極的に取り組んでいることが印象的でした。
参加して感じたCloudflareの進化スピードと強み
このように、AI関連だけでも、Cloudflareは驚異的なスピードでパートナー企業との取り組みやサービスリリースを進めています。
Cloudflareは、世界330以上の都市に拠点を持ち、全インターネットトラフィックの約20%を処理し、400Tbpsのバックボーン処理能力を備えるという圧倒的なスケールを誇ります。さらに、全インターネット人口の95%に対して50ミリ秒以内のアクセスを提供し、シンプルな設計で単一のネットワーク、単一のプラットフォーム上でサービスを提供しています。
このパフォーマンスを維持・向上するために、Cloudflareはトラフィック状況に応じた設備増強や拠点の追加を行うだけでなく、NginxをRustベースのプロキシに置き換えるなど、全体設計を含めた継続的な改善にも取り組んでいると紹介されました。こうした頻度の高いリリースとサービス提供を支えるCloudflareのネットワークは、改めて同社の強みであると実感しました。
おわりに
今回のイベントでは、CloudflareがAI関連をはじめとして驚異的なスピードで新機能やサービスを展開していることを強く感じました。発表された機能の中には、ベータ版やプライベートベータ版で提供されており、現時点では検証環境のダッシュボード上で確認できないものもありましたが、今後実装された際には機能を試してみたいと思いました。
今後もCloudflareの進化をキャッチアップしながら、包括的な提案につなげられるよう、継続的に情報収集を行っていきたいと思います。
※1 クロール対参照比率の最新情報はCloudflare社が提供するCloudflare Radar(https://radar.cloudflare.com/ai-insights)で確認可能
※2 AIエージェントがユーザーに代わり商品を購入、決済までを完了する仕組み
執筆者:
三井情報株式会社
ソリューション技術グループ ソリューション第二技術本部 インフラ第一技術部第二技術室