導入概要
福岡・筑豊地域の中核医療を担う飯塚病院では、高度な医療サービスを提供するためにさまざまなシステムを導入していますが、これらを支えるITインフラの運用負荷、セキュリティ、システムのガバナンスが課題となっていました。そこで、2019年にNutanixを導入し、仮想化基盤を構築。院内の各診療科に分散していたサーバを統合することで、諸課題を解決してきました。
導入のポイント
・サーバー統合によるシステム部門の運用負荷軽減
・部門システムのガバナンス・セキュリティ強化
・ハードウェアリプレイス時のダウンタイム最小化
お客さまの課題
サーバの仮想化を推進するも リプレース時の負担が過大に
1918年、現在の株式会社麻生が採掘を行なっていた炭鉱の病院として設置され、まもなく一般の病院として診療を行うようになった飯塚病院。現在では、筑豊地区の地域医療支援病院として、地域唯一の3次救急医療機関などの重要な役割を担っています。飯塚病院では、株式会社麻生が設置する企業立病院として医療現場の業務改革、質の向上に積極的に取り組んでいます。その一つの特徴が医療のIT化への積極的な取り組みです。50年ほど前から病院情報システム(HIS:電子カルテシステム)をグループ企業の株式会社麻生情報システムと連携しながら内製で開発しており、外販を行なっています。医療現場のIT化に積極的に取り組んできた飯塚病院ですが、システムの拡大により年々サーバが増加。その結果、電力や設置スペース、排熱などの課題が顕在化してきました。そこの対策として、サーバ仮想化により、サーバ集約を進めましたが、ハードウェアリプレースにあたっての作業量の多さやダウンタイムの長さが課題として顕在化してきました。「病院のシステムは患者さんの命に直結するものが多く、ダウンタイムは最小限にしなくてはなりません。診療科のシステムはもちろんのこと、入院患者の給食のシステムが止まっても重大なことになります。ある時、院内のシステムにトラブルが発生して停止してしまった際には、現場の医師から『患者の命を奪うつもりか』と厳しく怒られたこともあります」(情報システム室 室長 城野政博氏)

情報システム室 室長 城野政博氏
ソリューション・解決方法
スケーラビリティの高さ、リプレースのしやすさからHCIへ
そこで、次のリプレースが迫ってきた2018年から、情報システム室では次期システムの検討を始め、HCI(ハイパー・コンバージド・インフラストラクチャ)が最適との結論に達しました。飯塚病院に常駐し、支援を行なっている株式会社麻生情報システム 飯塚病院分室 技術本部 第二技術部 課長の大淵 孝一氏は「時代の流れからいけばクラウド化なのでしょうが、患者さんのセンシティブな情報も預かっていることから、情報漏えいリスクも考慮して、よりセキュリティ堅牢性の高いオンプレミスでのリプレースを前提としました。ハードウェアの選定にあたっては3Tier構成も検討しましたが、スモールスタートで徐々にノードを増やすことができるスケーラビリティの高さからHCIで導入を進めることとしました」と語ります。

飯塚病院分室 技術本部 第二技術部 課長 大淵 孝一氏
院内ネットワークで実績のあったMKIが推薦するNutanixを選定
HCIで方針が固まったところで、システムの選定に入ります。ベンダーなど数社から提案を受け、最終的に選定したのはMKIが提案したNutanixでした。
「当院は急性期病院であり、サーバが止まることは患者の命に影響することとなります。そのため、仕様の中で特に重視したのは安定稼働と堅牢性でした。Nutanixは病院への導入実績が多いこともあり、さらにMKIがサポートを24×365で対応してくれるという点で安心できました。さらに、当病院のセル看護提供方式®には欠かせないWi-Fiを始めとする院内ネットワーク構築でもMKIはしっかり対応してくれているという実績を評価しています」(城野氏)
また、移行を予定していた部門システム(診療科・部門ごとに運用しているシステム。院内に約50システムある)との関係性もあったといいます。
「部門システムは、それぞれのネットワークセグメントにあわせて構築されているので、院内ネットワークを理解している必要がありました。その点でも構築、運用支援を手掛け、院内ネットワークを熟知しているMKIであれば安心して任せられると考えました」(大淵氏)
命を預かるシステムだからこそスモールスタートで慎重に検証を進める
サーバ統合の最初のステップとしてActive Directory サーバやスタンドアロンのデータベースアプリ、日本語変換システムの辞書などをNutanix上の仮想化基盤に移行しました。「私たちとしてもNutanixの運用は初めてだったため、まずは停止しても大きな影響がないシステムや、厳格な管理が必要な患者情報などを取り扱わないシステムから順次移行していきました。また、部門システムについても、それぞれのシステムベンダーと連携しながら、移行できるものはリプレースのタイミングで順次移行を進めて行きました」(大淵氏)
導入後の効果
まちまちだった部門システムをNutanix上に統合し ガバナンス、セキュリティ、バックアップの強化を実現
部門システムはそれぞれの診療科・部門が個別に導入していることから、これまで直接情報システム室が管理することはありませんでした。しかし近年、病院を標的としたサイバー攻撃が増えていることから、経営層から部門システムについてもセキュリティ強化を求められたといいます。「これまで各ベンダー任せだった部門システムのセキュリティをNutanixの仮想化基盤上に移行、集約することで、情報システム室が一括して管理が可能となり、均一のセキュリティレベルを確保できるようになりました。さらに、バックアップについても統一的な対応が可能になりました。さらにバックアップについては、ランサムウェア対策としていわゆる3-2-1ルールに基づいたバックアップを行うため、テープによるバックアップを行うようになりました。バックアップが統一化されたことで、バックアップ及びリストアがしやすく、安心できるようになりました」(大淵氏)
導⼊から5年 最初のリプレースをシステム停止せずに実施
最初のノードを導入してから5年が経過し、一番最初に導入した3ノードのリプレースを行いました。「MKIからは、システムを止めずにリプレースできますと聞いていましたが、実際に実施するまでは少し疑っていました(笑)。しかし、稼働しているノードにシステムを移して、入れ替えを行うことで、本当にシステムを止めることなくリプレースができました。これは本当に救急医療を担う当院のような病院では重要なことです」(城野氏)

今後の検討とMKIへの期待
本格的にNutanixへの移行を推進
最初のリプレースを経験し、ライフサイクルも一巡したことから、飯塚病院では本格的に各システムのNutanix上への移行を開始しているといいます。
「繰り返しになりますが、システムの停止は命に関わることになるため、5年かけて慎重に検証を行なってきました。その結果、Nutanixならシステムを停止することなく運用やリプレースが可能と判断できましたので、重要な患者情報を含む病院情報システムの移行を進めていこうと考えております。
一方で、部門システムもベンダーの検証状況の関係から、すべてのシステムが移行できているわけではありませんが、ベンダー側と協調しながら各システムのリプレースのタイミングで移行を進めて行きたいと考えております。さらに将来的には別の仮想化基盤で稼働しているシンクライアント用のVDIについてもNutanixに移して集約し、さらなるITインフラの運用効率化を推進していきたいと考えています」(城野氏)
MKIのサポートに満足
MKIのサポートについてうかがうと城野氏は「福岡市内と違って、福岡から1時間かかる飯塚は、どうしてもサポートが手薄になりがちです。実際、他のベンダーでは当初サポートをしっかりやるといいつつ、満足なサポートが受けられなかったということもありました。そのような経験から、患者の命も左右しかねないITインフラを任せるには、導入の際には院内ネットワークでしっかりサポートを行なってくれているMKIの実績を重視しましたが、その期待にしっかり応えてくれていると思います。導入から長く経ち、MKIの担当者も代替わりしました。このような場合、会社によっては引き継ぎがうまくされず、サポートの質が落ちることがありますが、MKIではそのようなこともほぼなく、しっかり対応いただいていると感じています」と語ってくださいました。
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導入サービス
株式会社麻生 飯塚病院様について

名称:株式会社麻生 飯塚病院
所在地:福岡県飯塚市芳雄町3番83号
導入時期:2019年
事業内容:株式会社麻生による企業立病院。「まごころ医療 まごころサービス」をモットーに、筑豊・飯塚地域の中核医療機関としての役割を担っています。
ITシステムを活用した看護師の負担軽減を実現する新しい看護方式を提案するなど、日本全国の病院から注目を集めている病院です。
ホームページ:https://aih-net.com/