目次

導入概要

MKIの支援のもと、3-Tierの仮想化基盤をNutanixのHCIを活用し再構築。課題であった、電子カルテなどアプリケーションのレスポンス低下の改善や、トラブル対応時の切り分け作業の負荷が軽減した上、ランサムウェア対策機能の導入やDRサイトの構成変更などを実現

鹿児島市の中核病院として30の診療科と349の病床を擁するいまきいれ総合病院。2024年4月、同病院は10年以上にわたって3-Tier構成で運用してきた仮想化基盤を、三井情報(MKI)の協力のもと、NutanixのHCIを活用し再構築しました。これにより、既存システムで起きていたトラブルは消滅。アプリケーションのパフォーマンスをはじめ、ランサムウェア対策、DR対策など、さまざまな課題が解決し、安定した運用を実現しています。

目的
3-Tier構成の仮想化基盤をNutanixのHCIを活用し再構築することで、既存システムで起きていたトラブルの再発を防止するとともに、ランサムウェア対策も実現したい。

ソリューション
Nutanixによる仮想化基盤の再構築

効果
既存環境で起きていたレスポンス低下の事象は改善され、医療システムの安定した運用が可能になった。またアプリケーションのパフォーマンスが向上し、ランサムウェア対策なども実現した。

お客様の課題

病院システムを支えるインフラとして仮想化基盤を導入も電子カルテで原因不明のレスポンス低下が発生

いまきいれ総合病院は、1938年に鹿児島市下竜尾町で外科診療所として開業。以後、今給黎病院、今給黎総合病院と名称変更を経て、2021年に鹿児島市中心部にある複合施設「キラメキテラス」に移転し、地域の中核病院として新たなスタートを切りました。現在は、「つながる医療、つながる生命(いのち)」というキャッチコピーのもと、がん診療や緊急医療を中心に、高度で専門性の高い急性期医療を提供しています。また、同じく2021年に鹿児島市長田町に開院した回復期病院の「上町いまきいれ病院」や地域の医療機関と連携し、切れ目のない医療の実現に取り組んでいます。

同病院のシステムを支える仮想化基盤は、2012年に物理サーバーから切り替えるかたちで導入したのが始まりで、仮想環境の基本的な形態である3-Tier構成で運用してきました。2018年にハードウェアの更新を機にリプレースした第2世代の仮想化基盤でも3-Tier構成を継続しました。以来、同病院はディスク容量の拡張、ディスク装置の追加、基盤サーバーの追加、メモリーの増設など、さまざまな施策を実施しながら運用を続けてきましたが、時折トラブルが発生するという課題がありました。

法人事務部 施設管理G 情報管理課の野島裕二郎氏は「数カ月に1回の割合で、通常は5秒程度で開く電子カルテが15~20秒、長い時は1分近くかかる事象があり、外来診療にも影響が出ていました。サーバーを再起動すれば回復するのですが、そのためには夜間にすべてのシステムを停止しなければならず、院内や外部の医療機関にシステム停止を周知する必要があり、われわれ情報管理課や現場に大きな負担がかかっていました」と当時を振り返ります。こうしたトラブル自体も問題でしたが、それ以上に原因が分からないことも不安要素だったといいます。病理診断科 部長の白濱浩氏は「仮想化基盤は、電子カルテのみならず、検査、調剤、放射線、生体モニタ、手術室、手術動画など、多岐にわたって当院のシステムを管理する重要な基盤です。よって、トラブルの解決は喫緊の課題となりますが、いくら調査しても原因が仮想化基盤側にあるのか、アプリケーション側にあるのか分かりませんでした。このままでは対応にも限界がありますので、思い切って仮想化基盤をゼロから見直すことにしたのです」と語ります。

ソリューション・解決方法

拡張や移行の容易性、効果的なランサムウェア対策を評価しNutanixを採用。パートナーにはTCOを考慮した提案や手厚いサポートからMKIを選択

いまきいれ総合病院では、第3世代となる仮想化基盤の構築にあたり、取引先のコンサルティング会社に相談したところ、3-Tier構成を継続する場合、従来のハードディスクからオールフラッシュストレージに切り替え、さらに二重化が必須との回答がありました。その上で、システム拡張や仮想基盤全体の更新をスムーズにすることを考えるなら、「Nutanix」のHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャー)という選択肢もあるとアドバイスを受けたのです。HCIは、サーバーとストレージをインテリジェントなソフトウェアで統合した分散型インフラプラットフォームです。従来のインフラを置き換えることが可能で、高いパフォーマンス、高度な耐障害性、柔軟な拡張性を実現します。さらにNutanixはこの分野のトップランナーであり、多くの病院で採用されている実績もありました。「Nutanixは、拡張や移行の容易性もさることながら、ランサムウェア対策に有効であるところも魅力でした。というのも2023年当時、国内の病院がランサムウェアによる攻撃を受けて院内システムの停止に追い込まれる事例が多発しており、当院の上層部から対策に取り組むべきという指示が出ていたのです。この点、NutanixのFiles/File Analytics機能がランサムウェアの検知に効果的と聞き、採用を決めました」(野島氏)
Nutanix導入のパートナーについては、コンサルティング会社から紹介された三井情報(以下、MKI)にコンタクトをとりました。
「MKIの提案は、既存のVMware環境をそのままNutanixに移行するというリスクの少ないものでした。MKIが構成検討やメーカーとの調整、24時間サポートなど魅力的な点もあり、TCOを考慮して採用を決めました」(野島氏)

MKI主導による導入作業でスムーズに進行、病院側に負担をかけることなくスケジュール通りに更新

2023年9月、いまきいれ総合病院はNutanixの導入プロジェクトをキックオフ。設計、機器の設置、ネットワークの接続、仮想マシンの移行などを経て、2024年3月より本番利用を開始しました。
新たな仮想化基盤はメインサイトとDRサイトに分散配置し、それぞれ6ノードで構成。その他、踏み台端末用仮想基盤、サーバー集約スイッチ、vCenter Server、動画格納用NAS、バックアップ用NAS、UPSなどで構成されています。仮想マシンのリソースは、vMotionやStorage vMotionを活用してそのまま移行しました。ゲストOSとホスト間の回線は、従来の4G(1x4)から100GB(25x4)に増強し、ディスクI/Oの改善を図っています。
導入の作業は主としてMKIが対応したため、病院側には特に負担がかかることはなく、スムーズに進みました。法人事務部 施設管理G 情報管理課の神野博幸氏は「われわれの作業は、MKIから提出された資料を確認したり、バックアップを取得するファイルを選定したりといった程度で済みました。MKIには作業をスケジュール通りに進めていただき、改めて技術力の高さを実感しました」と述べ、同部署の今村清幸氏も「私自身、仮想化基盤の運用経験はあるものの、本格的な構築プロジェクトは初めてだったのですが、今回の導入では打ち合わせへの参加を通して知識を習得することができましたので、今後の更新に活かしていきたいと思います」と語ります。

導入後の効果

システムの安定した稼働が実現、電子カルテなどのパフォーマンスも向上トラブルが減ったことで情報管理課の負担も軽減

いまきいれ総合病院が仮想化基盤をNutanixに切り替えてから約1年が経過した現在、システムは至って安定した稼働を続けています。大きなトラブルはなく、電子カルテを開くとき遅くて困るといった事象もありません。「電子カルテやその他のアプリケーションのパフォーマンスは全体的に向 上しており、Nutanixに切り替えた効果は確実に現れていると思います」(白濱氏)トラブルが減ったことでシステムを再起動する必要もなくなり、情報管理課にかかる負担は軽減されました。同部署の藤崎博貴氏は「現在のところ、以前のような原因不明の遅延は発生しておらず、とても助かっています。とはいえ、これから何が起こるかわかりませんので、MKIには引き続きサポートを期待しています」と述べ、山下智也氏も「特に困ったこともなく安定的に運用ができています。私自身は仮想化基盤について初心者なのですが、Nutanixの知識を深めていくために、MKIには初心者向けの情報を提供いただけるとありがたいですね」と語ります。また、DR構成を変更したことで、事業継続性が高まったのも今回の導入の成果です。同病院における仮想化基盤は、第2世代ではメインサイトとDRサイトを同一拠点に配置していましたが、第3世代では異なる拠点に配置することで分散を図っています。さらに、スケジュールに沿って仮想マシン単位でスナップショットを取得しているため、災害などにより拠点間の通信が切れたとしても、直近6時間程度のデータを活用し医療行為を再開できるようになりました。

今後の検討とMKIへの期待

次期更新に備えて人材の育成や知識の習得を進める。MKIにはさまざまなかたちでの支援を期待

今後についていまきいれ総合病院では、第3世代の仮想化基盤をもって、病院システムの安定した稼働を維持していく方針です。一方、情報管理課においては、次期の仮想化基盤の更新に備え、人材の育成や知識の習得を進めています。「目下の課題は、VMwareをこのまま使い続けるか、ハイパーバイザーをNutanixに切り替えるかにあります。切り替える場合、ゲストOSのコンバートも必要になりますので、MKIにはその面でもサポートをお願いすることになるかと思います」(野島氏)
また、電子カルテを中心とした病院システムのクラウド化やAIの活用も今後の検討課題に挙がっており、対応に向けて情報収集を始めています。
「従来の病院システムは、クローズドの世界で動いているものがほとんどでしたが、クラウド化を進めるとなるとインターネットとの接続が増えていきます。その際、セキュリティの確保が課題となりますので、対策を考える必要があります。また、現状の病院の人材不足を考えると、クラウドやAIの活用による省力化は必須となるでしょう。MKIには、こうした施策を進める上で、必要な情報の提供に期待しています」(白濱氏)
今回の導入におけるMKIの働きについて同病院は、特にレスポンスの速さを評価しており、今後の支援についても期待を寄せています。神野氏は「私も何回か質問したことがありますが、すぐに回答をいただけるので非常に助かっています。次回の更新は私たちがメインで担当することになるかと思いますので、MKIにはその際もご支援いただけるとありがたいです」と語ってくれました。
今後ともMKIは、いまきいれ総合病院様のご期待に応えるべく、充実したサポートで仮想化基盤の安定運用に貢献していきます。

導入サービス

Nutanix

公益社団法人昭和会 いまきいれ総合病院様について

名称
公益社団法人昭和会 いまきいれ総合病院
所在地
鹿児島県鹿児島市高麗町43-25
事業内容
1938年に下竜尾町で外科診療所として開業。以後、規模を拡大し、1989年には総合病院としての認可を受けました。2021年に現在の住所に移転、「いまきいれ総合病院」として新たなスタートを切っています。現在は、地域がん診療連携拠点病院としての発展、救急医療の拡充などを柱に、地域の医療機関と緊密に連携。ロボット支援下手術など高度で専門性の高い急性期医療の強化・提供を行うとともに、複合施設「キラメキテラス」の共同事業として、多世代が互いに支え合い、人が地域・社会と結びつく、ヒューマンライフラインの構築により地域活性、地方再生にも貢献しています。