GTC(GPU Technology Conference)とは
NVIDIA GTCは、世界をリードする研究者や開発者、ビジネスリーダーが一堂に会し、AIの最先端技術を紹介するNVIDIA最大のカンファレンスです。米国カリフォルニア州サンノゼで開催され、基調講演から専門的なセッションや展示まで幅広く行われます。2026年3月に開催された「GTC 2026」は、190カ国以上から3万人を超える参加者が集まる大規模なイベントとなりました。
NVIDIAのCEOであるジェンスン・フアン氏による基調講演では、これからの社会の方向性が明確に示されていました。特に注目されたのは、人間の指示を待たずに自律的に判断しタスクを遂行する「エージェント型AI」の本格的な普及や、工場や医療現場など現実世界で動く「フィジカルAI(人型ロボットなど)」の進化です。さらに、宇宙空間でのAIデータ処理に向けた技術なども発表されました。
GTCはもはや一部のIT専門家だけのものではなく、あらゆる産業がAIをどう活用し、私たちの未来がどう変わるのかを体感できる「世界最大級のAIの祭典」となっています。
三井情報では昨年よりGTCに社員を派遣しています。今年は参加者それぞれがGPUaaSの運営課題や現在取り組んでいる業務あるいは研究開発の課題、また社会全体の課題に対して、その分野の情報収集を重点的に行いました。本コラムでは参加エンジニアが現地で体感した最新のトレンド技術をご紹介いたします。

地方の移動課題と自動運転への期待
地方拠点の社員から聞こえてくる声として、過疎化が進む地方では、交通の便が悪く、車がなければ日常の買い物や移動すら困難です。高齢化が進み、免許を返納した後の生活の足をどう確保するかは、地域全体が直面している切実な課題であり、自動運転の普及がこの課題解決に欠かせないと考えています。
AIの進化:自動運転AIが判断プロセスまで説明する
今年のGTCでも、自動運転技術の進化について大きく取り上げられました。今回発表された自動運転車向けのAIモデル「NVIDIA Alpamayo」は、「自分の車線に駐停車車両があるから迂回する」といった状況判断を、自ら思考過程を説明しながら実行できるというデモンストレーションを披露しました。その上で、人間が「スピードを上げて」などの指示を出せば、それに応じた動作も実行できていました。自動運転の社会実装には「なぜその判断をしたのか」を説明できることが不可欠であり、判断根拠を検証可能な形で示せる点が従来との大きな違いだと考えています。
また、トヨタ自動車やメルセデス・ベンツ、GM(ゼネラルモーターズ)といった既存のパートナーに加えて、新たに日産自動車、BYD、Hyundai、Geelyといった合計で年間1,800万台を製造する大手自動車メーカーや、Uberなどの配車サービスもこのプラットフォームに参加しており、ロボタクシーの社会実装に向けた動きが急速に現実味を帯びてきています。

仮想空間が変える自動運転AIの開発プロセス
その裏側を支えているのは、仮想空間での圧倒的なシミュレーション技術です。現実の道路でデータを集めるには限界がありますが、「NVIDIA Isaac Lab」や世界基盤モデル「NVIDIA Cosmos」といったツールを使い、仮想空間内で何千ものシナリオでAIを事前学習させています。実車を走らせなければ得られなかった学習データを仮想空間の中で生成できることは、開発期間の短縮と安全性検証の網羅性という両面で、開発の進め方そのものを変える実務的な意味を持ちます。膨大な計算力をデータそのものに変換してAIをトレーニングするというアプローチは、「学習価値が最も高いデータほど現実では集めにくい」という自動運転特有の前提に立てば、極めて合理的だと考えています。
そして、こうした自動運転やフィジカルAIの進化を根底で支えているのは、GPUによる膨大な計算力であり、GPUの実行基盤がAIの進化を決定付けます。
当社の取り組みと日本市場への展開
当社はAI創薬支援サービス「Tokyo-1」のGPUスーパーコンピューター環境をサービスとして提供しています。プラットフォームのアーキテクチャ設計から構築、運用までを担っており、複数の利用企業が安心してリソースを専有できるセキュリティと、大規模なワークロードに耐える性能の両立といった課題に向き合ってきました。その設計から運用までを通じて獲得した知見を、日本市場に最適なフィジカルAIの実行基盤アーキテクチャの考案に活かしていきたいと考えています。

原
イノベーション推進部
AI・GPU基盤や仮想化・コンテナ基盤のインフラ領域を担当しています。
また、自動化を含めた運用の効率化に関する研究開発業務を主に行っています。
三井情報グループは、三井情報グループと社会が共に持続的に成⻑するために、優先的に取り組む重要課題をマテリアリティとして特定します。本取組は、4つのマテリアリティの中でも特に「情報社会の『その先』をつくる」「ナレッジで豊かな明日(us&earth)をつくる」の実現に資する活動です。
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