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“見落とされているニーズ”を発見し、これまでになかった商品を企画する Vol.2

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  • データマネジメント
目次

はじめに

前回のMKIナレッジ「“見落とされているニーズ”を発見し、これまでになかった商品を企画する」では、ソーシャルデータの活用が進んでいる背景について説明させて頂きました。
その中でご紹介したトレンドスコープのようなソーシャル・プレディクションとソーシャル・リスニングツールについて、両者の違いは何か?というご質問を多く頂きましたので、今回のMKIナレッジで解説していきたいと思います。

ソーシャル・プレディクションとは

英Black Swan社のトレンドスコープは、ソーシャルデータ、AI、ソフトウェア等が一体となったデータ分析基盤で、独自指標TPV(Trend Prediction Value)によるスコアリングや、キーワード毎に「6か月後に、そのキーワードがトレンドを形成する可能性が高いか」を予測する機能を有しています。データの収集から複雑な加工・演算まで自動化されており、ユーザはデータ分析を手軽に活用することができます。トレンドスコープのようにソーシャルデータを活用して、トレンドの予測等を行うことをソーシャル・プレディクションと呼んでいます。

マーケティングDXにおけるデータ活用の整理

マーケティングDXにおけるデータ活用パターンは、上の図のように大きく4つに分けることができます。
自社の保有するデータ活用には、過去の購買データや会員データ等を統合管理・可視化する「カスタマーデータプラットフォーム(CDP)」とカスタマーデータプラットフォームに蓄積したデータを活用し、AI等を活用することで将来の販売量等を予測する「需要予測」の2つがあります。
一方、ソーシャルデータの活用は、主にマーケティング施策に対するソーシャル上での反応を見える化する「ソーシャル・リスニング」とソーシャルデータを基に将来のトレンドを予測する「ソーシャル・プレディクション」の2つに分けられます。

ソーシャル・プレディクションとソーシャル・リスニングの違いとは

次に、ソーシャル・プレディクションとソーシャル・リスニングの違いを詳しく見てみましょう。 以下の表の通り、目的・利用者・利用シーン・データ・評価基準の5つの視点で整理してみました。
先ず目的ですが、こちらは似ていると感じる方もいらっしゃるかもしれません。一方、利用者や利用シーン、評価基準を見ていくと両者は大きく違います。また、ソーシャル・プレディクションを行う上で重要となるのがデータで、カテゴリー毎に整理されたデータ無しでは十分な予測ができません。海外の企業では、カスタマー・マーケティング・ナレッジチームというチームが存在し、そのチームが目的に応じてソーシャル・リスニングツールとソーシャル・プレディクションツールを使い分けています。

  ソーシャル・リスニング ソーシャル・プレディクション
(トレンドスコープの場合)
目的
  • 生活者がブランドについてどのような会話をしているのかをモニタリングし、メディア戦略やコミュニケーション戦略の改善に役立てる
  • 生活者の製品やトレンドを特定し、優先順位をつけて予測することで、ブランド戦略及び製品戦略に反映させる
利用者
  • デジタルマーケティング
  • メディア
  • クリエイティブ
  • PRエージェンシー
  • DXチーム(データ分析担当)
  • マーケティング
  • 商品開発・商品企画
  • R&Dチーム
利用シーン
  • 既知のトピックやトレンドに関する生活者の会話をモニタリング
  • リアルタイムでのコミュニケーションやコンテンツ提供機会を発見
  • 危機管理(炎上対策)
  • PRモニタリング
  • 小さくても急成長している未知なるトレンドの特定
  • ホワイトスペースでの成長機会やイノベーションのアイデアの発見
  • コンセプトの作成と最適化
データ
  • 必要なデータを都度購入もしくは製品ベンダーから提供
    ※ユーザ側で必要に応じて、データクレンジングを実施する必要がある。例えば、「Red Bull」を検索すると、飲料そのものだけでなく、エアレース、F1、サッカーなどの情報も表示される場合がある
  • Black Swan社から三井情報からカテゴリー別のデータセットが提供
    ※あらかじめ無関係な「ノイズ」(広告、メディア、誤った関連付けなど)を助教したデータクレンジング済のデータが提供される
評価基準
  • 会話ボリューム
  • マーケティングKPI(リーチ数・エンゲージメント・センチメント)
  • インフルエンサー
  • TPVを活用した今後6か月から18か月間の成長率
  • トレンド成熟度
  • トレンドの理解と成長理由の把握

ソーシャル・プレディクションとソーシャル・リスニングの違い

将来の予測をソーシャル・リスニングツールで行う場合の課題

ソーシャル・リスニングツールを利用して将来を予測する際に、私が直面した課題の一つは、ダッシュボードに設定するキーワードと仮説の選定でした。
モニタリングするキーワードの選定は、担当者の経験・価値観に大きく左右されます。かなりの業界知識とプログラミング知識がある方であれば、トレンドの予兆を発見し、ソーシャル・リスニングツールに適切なキーワードや仮説を登録することが出来るかもしれません。しかしそもそも担当者が何かのキーワードを選定し、登録する時点で、その担当者の価値観を超えた発見が出来る可能性は少ないと言えるのではないでしょうか?

海外企業のカスタマー・マーケティング・ナレッジチームはソーシャル・プレディクションをどう使っているのか?

次に、海外企業のカスタマー・マーケティング・ナレッジチームがソーシャル・プレディクションを使って戦略立案を行う際に、どのようにデータを眺めているのかの一例をご説明したいと思います。彼らは、各カテゴリーに予め分類されたキーワードを成長率とフェーズに分類しデータを眺めています。各フェーズの解釈は以下の通りです。

  1. 黎明フェーズ:今後成長見込みがある注目するべきトピック
  2. 出現フェーズ:商品化まで時間が掛かるが、トレンドを立ち上げるスペシャリストの中では手作りで試作がされている可能性がある
  3. 成長フェーズ:一部の先進的なブランドでは商品化されている可能性がある
  4. 成熟フェーズ:既に市場に製品が登場している、もしくは近々登場する

更に、自身の追いかけているテーマやベネフィット、素材といったキーワードごとにデータを深堀していくことでトレンドのドライバーとなるキーワードの予兆や背景等を「発見していくアプローチ」をとっています。こうしたアプローチを実施できるようになることが、企業がソーシャル・プレディクションを導入するメリットの一つと考えています。

トレンドスコープの成熟フェーズから導かれる戦略のタイミング

最後に

海外企業での活用事例を調べると、ソーシャル・リスニングとソーシャル・プレディクションの活用シーンの棲み分けが加速度的に進んでいると感じます。“見落とされているニーズ”を掘り起こす為にソーシャル・プレディクションを活用し、発見したキーワードに「自社の強みを掛け合わせながら仮説を積み上げていく」、或いは、「新たな事業分野に参入するためのビジネスの種を探していく」動きがますます進んでいくと思います。
また、ソーシャル・リスニングツールとソーシャル・プレディクションを組み合わせた利用するという例も出てくると思います。自社のマーケティング施策をソーシャル・リスニングで可視化していく際に、ソーシャル・プレディクションで発見したキーワードも登録しておくことでより生活者の声をとらえやすくなるからです。
ソーシャル・プレディクションを活用したトレンド分析で“見落とされているニーズ”を掘り起こし、これまでになかった商品を開発する試みのご参考になれば幸いです。

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執筆者

久利生 大輔
DX営業本部 バイオヘルスケア営業部 営業室 
DX・事業開発チーム マネージャー

2017年から企業向けのDXプロジェクト支援を担当し、20件以上のプロジェクトに参画。
AIを活用した需要予測、電力分野での故障予兆検知等のIoT関連のプロジェクトを経験。現在は、プロスポーツクラブ向けのファンエンゲージメント支援、メーカーの商品開発やマーケティングに関わるトレンド分析等、主にマーケティングDXの分野を担当。

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