はじめに
私はMKIのオペレーションサービス部というところでRPA(Robotic Process Automation)ツールを使用した業務自動化を担当しています。本稿では、MKIが運用するデータセンターサービスに対して行った、RPAツールを活用した自動化の取り組みを紹介します。
MKIでは、お客様向けに培ったデータセンター、ITインフラの構築・運用経験を活かし、お客様の情報システム部門のパートナーセンターとなるデータセンターを提供しています。
現在、100社を超えるお客様から合計数千台に上る数のサーバをお預かりし、24時間365日データセンター内に常駐するオペレータが、1日数百件に及ぶオペレーションサービスや監視サービスを提供しています。
データセンターで管理するサーバの数が増加すると、実行するオペレーションサービスの数や監視数も増加するため、オペレータの作業時間や作業負荷が増加していきます。
その一方で、働き方改革による残業時間の削減や、少子高齢化による労働人口の減少など、人手不足の問題への対策という観点や、サービス運用面でのコスト削減や人為的ミスの防止という観点からも、MKIはデータセンターで働くオペレータの業務の自動化が必要と考え取り組んできました。
サーバを管理する上での制約
これまでIT業務の自動化で利用されるツールといえば、Excel®マクロやスクリプトでした。オペレータが実行するオペレーション作業も、もちろんExcelマクロやスクリプトを作成し、それを用いて自動実行させることは可能です。
しかし、私たちがお客様からお預かりしているサーバ上ではそれができません。なぜなら原則として、私たちはお客様のサーバ上で以下の行為はしないからです。
- 余計なファイルの配置
- 余計なファイルの実行
- 余計なファイルの生成
- 余計なファイルの持ち出し
もちろん例外もあり、監視サービスに必要なエージェントソフトなどは事前にお客様の了承を頂いた上でインストールしています。しかし、Excelマクロやスクリプトなどの自動化ツールについては、自動実行による予期せぬ動作や、予期せぬ負荷を与えるリスクを考慮し、原則としてお客様のサーバ上では実行しません。
では、オペレータはどのようにお客様のサーバ上でオペレーション作業を行っているかというと、お客様から提供いただく手順書を元に、オペレータ自身の端末から統合ログ管理ツールを経由し、リモートデスクトップでお客様のサーバを操作しているのです。※1
※1 ここで統合ログ管理ツールを経由させるのは、オペレータの操作を録画し、手順書通りに作業していることの証跡を取るためと、クリップボードの機能を制限することで、お客様のサーバからのデータ流出を防ぐためです。
RPA製品の利用
では、このようなオペレータによる手動の操作をどのように自動化するかというと、当部ではRPA製品の一つであるWinActor®を利用しています。WinActorは、人間が行うPC上でのマウスやキーボードによる画面操作を記録し、それを再生することで操作の自動化を実現します。※2
WinActorでは、自動化させたい一連の操作について「シナリオ」を作成します。シナリオの中では、マウスクリックやキーボード押下、ソフトウェアの起動など各操作内容を指定し、シナリオを実行すると、フローチャートのように指定した操作を順次実行していきます。

※2 MKIはWinActorの販売特約店です。
WinActorについて詳しくはこちらからご覧ください。https://winactor.com/
メリット
- 手順書が確立した定型作業に適用しやすい
オペレータが行うオペレーション作業は、顧客から提示された手順書があるため、「操作内容」と操作中の「判断基準」が確立済みの状態でした。自動化にあたっては、この手順書の内容をWinActorのシナリオに置き換えるだけでよかったので、導入はスムーズに対応できました。 - 操作しやすいGUI
シナリオの作成はGUI(Graphical User Interface)で操作できるのでコーディングの必要がありません。そのため、プログラミングの知識が無くても作成可能ですが、シナリオ内には「if(判断)」の処理や「for(繰り返し)」の処理も入るため、フローチャートが書ける程度の知識は必要となります。しかし、複雑な操作については、あらかじめWinActorの販売元がライブラリを用意しているため、シナリオ作成者はマウスの操作でその機能を利用することができます。 - ライセンス数の効率化
一台の端末から、複数のお客様のサーバにリモートデスクトップ接続をするため、接続元となる一台にWinActorをインストールすれば、お客様のサーバへは何もインストールせずに利用可能です。
デメリットとリスク
- 自動化処理の暴走
自動化について取り上げられるリスクが処理の暴走です。プログラミングでもそうですが、途中の処理が上手く進んでいないにもかかわらず、処理内容をチェックするプロセスが適切に組み込まれていないため、機械が処理を継続してしまい、その結果処理が暴走してしまうケースです。
お客様のサーバ上で、この暴走が生じることは非常に高リスクです。よって、オペレータの操作を自動化する場合は、処理→チェック→処理→チェック→処理→・・・、のように一つの処理が終わるごとに、その処理が正しく行われていることを確認するチェックのプロセスを入れることが重要となります。
人間が作業を行う場合、途中のチェック処理が多いと、工数増加の問題が生じるため、ついついチェックを省略しがちです。しかし、自動化処理の場合は工数の問題を考慮する必要がないため、人間が無意識にしているようなチェック内容も一つ一つ定義し、二重三重にチェックさせることで、より安全な自動化処理の実行が可能となります。 - 100%の識別は困難
自動化処理のチェックの中では、画像による識別や文字による識別を行い、処理が正常に終了しているか判断するケースが多々生じます。しかし、この識別精度は100%ではなく、人間には同じように見える画像や文字も、機械の目では別物と判断されるケースが発生します。
このように、チェック時に少しでも不安な点が生じた場合には、その状態の画面キャプチャを取得し、それをメールに添付してオペレータ(人間)に送信する自動処理を組み込ませています。これにより、自動化処理の途中に何が起こったのかをオペレータが確認することが可能となり、問題解決までの時間を短縮できます。
また、一部のオペレーション作業の自動化処理の最終判定でも、同様に画面キャプチャを送信させる処理を組み込んでいます。機械による識別が曖昧になりがちな箇所は、あらかじめ人間の判断を処理フローに組み込むことで、自動化部分の比率を上げつつ、より高品質なオペレーションサービスを提供するためです。
おわりに
既存の業務を完全に自動化することはできなくても、作業範囲を絞った自動化や、人間による判断を交えた自動化など、できるところからスモールスタートを切れるのが、WinActorを利用した自動化のメリットでもあります。
“はじめに”でも触れましたが、自動化はオペレータの作業時間を削減するだけではなく、人為的ミスの削減にも寄与してくれるため、より高品質なサービスの提供が可能となります。
管理するサーバの数が増加しても、オペレータの負荷を増やすことなく、より安全、安心、高品質なデータセンターサービスを提供することを目指して、MKIはこれからも自動化に取り組んでいきます。
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金澤 将志
コア技術グループ オペレーション技術本部 オペレーションサービス部 第一技術室
データセンター運用業務に従事。
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