一般社団法人日本産業車両協会によるまとめでは、フォークリフトに起因する労働災害の死傷災害数は、過去5年間おおむね2,000件前後を推移し、死亡災害は2022年の34件をピークに近年は16~31件前後で推移しています。
フォークリフトが関係する死傷・死亡災害のうち、発生割合が大きい主な原因は次のようになります。
一般社団法人日本産業車両協会「フォークリフトに起因する労働災害の発生状況-厚生労働省労働災害統計より-」を参照して、2020-2024年の5年間平均での死傷事故と死亡事故の事故型別割合をご紹介します。「はさまれ・巻き込まれ」及び「激突され」の合計の死傷災害の割合は全体の62.6%であり、死亡災害についても41.2%と高い数値となっています。
参照元:一般社団法人日本産業車両協会「フォークリフトに起因する労働災害の発生状況 –厚生労働省労働災害統計より-」
上記にあるような事故には、「死角」が絡んだ事例も含まれております。フォークリフトの運転時、マストやヘッドガードのフレームが死角となったり、積載した荷物そのものが死角となったりと必然的に視野が限定されます。そればかりでなく、前方の荷物や進路方向にばかり気を取られているうちに、「バック走行時に、後ろに居た人の存在に気付かず、フォークリフトで接触した」といった事例も少なくありません。その理由の1つとして、安全確認をしっかり行ったつもりであっても、目で見える範囲での確認にとどまってしまいがちになることが挙げられます。
そのような確認漏れを防ぐためには、あらかじめ死角がどこにあるのかをある程度把握しておく必要があります。生じやすい事故について知り、出来る限りの安全対策を行うことが必要です。次の章より、フォークリフトの運転時に生じる死角の例や、事故を起こさないための対策について紹介していきます。
フォークリフトの死角はどこなのか
フォークリフトのそばを人が行き来すること
フォークリフトの作業スペースと人の通行経路が明確に区分されていない場合、フォークリフト周辺にいる作業者の存在に気付かないことがあります。
通路コーナーや出入口、入り組んだ通路
見通しの悪い通路のコーナーや出入口、狭い通路や複雑に入り組んだ場所などは、死角が生じやすい箇所です。一見問題がないように思われても、突然人が現れるケースが少なくありません。
前進走行時にマストが死角に
リーチ式およびカウンタ式のフォークリフトには、運転者を保護するヘッドガード(屋根)や、フォークを昇降させるマスト(支柱)が装備されています。これらの構造物は運転者の視界を遮る要因となり、死角を生じやすいといえます。
リーチフォークリフトの右後方(バック時)
特にリーチフォークリフトの場合、死角となりやすいのはバック走行時の「右後方」です。リーチフォークリフトは左寄りの姿勢で運転するため、左後方および正後方は比較的確認しやすい一方で、右後方は十分に体をひねらなければ確認が困難です。このため、右後方の確認を最優先とする意識づけと習慣化が重要となります。
荷物の物陰
積み下ろした荷物の陰から作業者が出てくる場合もあります。運転者は積み込み作業に集中する傾向が強く、周囲に人がいる可能性まで意識が及びにくく、視界にも入りづらい状況となります。
工場内の袋小路となる場所
工場内の袋小路となる場所も死角が発生しやすく、フォークリフト同士の衝突が起こりやすい環境です。特に棚や壁の陰で作業を行っているフォークリフトの存在に気付かず、別のフォークリフトが侵入して接触する事例が多く報告されています。
フォークリフトの事故事例
バック走行時の接触事故
フォークリフトの後退走行時には、特に「後方」が死角となりやすい傾向があります。荷役作業においては、パレット等にフォークを差し込んだ後、一度後退してから移動する必要が生じますが、その際、運転者は目の前の荷物に注意を取られやすく、後方への意識が希薄になりがちです。その結果、後方確認を怠り、背後にいた作業者と接触し、最悪の場合は轢過事故に至る可能性があります。仮に急制動によって人身事故を回避できたとしても、その反動で積載物のバランスが崩れ、荷の落下事故が発生する危険性は十分に考えられます。
フォークリフト同士の衝突
狭い作業スペースにおいて一台のフォークリフトが稼働している場合、出入口部分は死角となりやすく、内部で作業中の車両に気付かない別のフォークリフトが侵入し、衝突する事故が発生する事例が確認されています。加えて、作業場が薄暗い環境下では、内部で稼働中のフォークリフトを視認できず、同様の事故につながる可能性があります。
積荷が死角になり、人の存在に気が付かない
荷物自体が死角要因となり、事故を誘発するケースも存在します。例えば、定められた積載量を超える荷を取り扱った結果、運転者の前方視界が必要以上に遮蔽され、前方を通行する作業者を巻き込む人身事故や、壁・設備への衝突による物損事故が発生することがあります。加えて、作業エリア内に荷物が過剰に置かれている状態も、多数の死角を生み出す要因となります。高積みされた荷物の陰から人が突然現れ、人身事故につながる場合や、フォークリフト同士の衝突を招く場合も報告されています。
死角をカバーするための対策
警告灯を使う
騒音の大きい職場環境や死角の多い作業エリアにおいては、警告灯(ブルースポットライト等)の活用が推奨されています。警告灯を照射することで、周囲に視覚的な注意喚起を行うことができ、人身事故をはじめとする労働災害の予防に有効です。実際に、警告灯の導入は安全対策として高い効果を発揮し、事故防止に寄与しています。
ブザーを鳴らす
フォークリフトの発進前に警告ブザーを鳴らし、周囲に作業中であることを知らせることも重要です。後退時に作動するブザーに加え、前進時にもチャイムやブザーを鳴らすことができる安全装置も市販されています。これらを活用することで、死角にいる作業者に対してもフォークリフトの存在を認識させることが可能となり、安全性をさらに高めることができます。
人が通る場所と作業スペースを明確に分ける
作業スペースと歩行者通路が混在している現場は、特に危険性が高く、死角に起因する事故発生の可能性も増大します。このリスクを低減するためには、フォークリフト作業エリアと人の通行経路を明確に分離することが不可欠です。たとえば、床面に目立つ色のテープを貼付するなど、簡便な方法であっても効果的な安全対策となります。
マストから顔を出して視界を確認(努力視界)
フォークリフト前方に設置されているマストは運転者の視界を遮るため、死角を生じやすい構造的要因の一つです。見通しが悪くなることから、走行前にはマストの陰から視線を移動させ、十分に視界を確保する行動を習慣化することが求められます。すなわち、積極的に視界を確認する意識を持つことが、死角による事故防止につながります。
作業場に無駄な物を置かない
作業エリアに過剰な荷物を積み上げたり、整理整頓が不十分な状態にあると、荷物が死角を増加させる要因となります。不要物の処分や適切な整理整頓を徹底し、常に見通しの良い環境を維持することが、安全な作業の基盤となります。
フォークリフトの安全対策にIoT技術を取り入れる
近年では、フォークリフトの安全運用を支援するIoTソリューションの導入も進んでいます。たとえば「FORKERS(フォーカーズ)」は、IoT技術を活用してフォークリフトの稼働状況を遠隔で監視するサービスであり、自動レポーティング機能や危険運転を検知してリアルタイムに警告する仕組みを備えています。さらに、大型フォークリフト特有の広範な死角を補うため、「FORKERS EYEバリア」と呼ばれる人感カメラ・センサーシステムも提供されています。こうしたシステムの導入は、フォークリフト作業の安全性を大幅に向上させる有効な手段となります。