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“正解のない時代”に挑む──三井情報が踏み出す、イノベーションの第一歩

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──新規事業 大会議 2025を通じて見えた、受託型ビジネスからの脱却に必要な視座と行動変容

 2024年度、三井情報ではイノベーション推進部が新設されました。これは、従来の受託開発を中心とするビジネスモデルから一歩踏み出し、自らの手で価値を創出する“自発型”の事業創造へと転換を図る挑戦の始まりです。
 その挑戦の一環として、2025年5月8日に開催されたイベント「新規事業 大会議 2025」での「社内新規事業創出<基礎>コース」へ参加しました。本コラムでは、その参加を通じて得られた気づきや刺激を、三井情報の現在地と照らし合わせながらお伝えします。

イベント概要

  • イベント名:新規事業 大会議 2025
  • 主催:Sansan株式会社
  • 日程:2025年5月8日(木)~9日(金)
  • 会場:東京ビックサイト(会場のみでの開催)
  • 参加者:社内起業事務局・オープンイノベーション・事業開発関係者
  • URL:https://eight-event.8card.net/climbers/newbiz-daikaigi/

正解のない時代に、問いを立てる力を

 「いまは正解のない時代だ」──その言葉が繰り返し胸に響いた1日だった。
新規事業に正解はない。あるのは“問い”と“仮説”と、それを行動に移す「やってみる力」だ。これまでの日本企業は、顧客の要望に応えるかたちで、正解に沿ったものづくりを得意としてきた。
 三井情報も例外ではない。現在の主力事業は、システムの受託開発が中心であり、長年にわたって多様な技術力と品質で顧客の信頼を得てきた。
 しかし、こうしたビジネスモデルは、課題が明確にあるときに真価を発揮する一方、ゼロから「問い」を立てて形にしていく新規事業のステージでは、構造的な難しさも抱えている。たとえば、社内でアイデアがなかなか出てこない、制度があっても人が動かない、文化や言語が共有されていない、といった実情がある。

枠よりも「場」をどうつくるか

 セッションでは、多くの企業が、制度を整えること以上に「挑戦する人が育つ場づくり」に注力していることが印象的だった。社内公募制度、ステージゲートのような仕組みも重要だが、本当に力を発揮するのは、“持ち帰れる体験”を得たときだ。
 たとえば、「100の“いいね”より、1つの“ありがとう”を目指す」という言葉。数字より、誰かのリアルな悩みに応えたという実感。そこにこそ、新規事業の原点がある。
 三井情報にとっても同様だ。現在、イノベーション推進部を中心に自発的な取り組みが始まっているものの、「そもそもアイデアが出てこない」という根本的な壁がある。仕組みよりも先に、まず「やってみよう」と思える空気が必要なのだと、強く感じた。

テクノロジーより「使われ方」の想像力

 もう1つ印象に残ったのは、「テクノロジーよりもエンジニアリングが大事」という言葉。
技術そのものの先進性よりも、それを“誰が、どこで、どう使うのか”を設計する力が、新規事業では問われる。
 これは、三井情報がこれまで積み上げてきた「作る力」に、新たに求められている「届ける力」ともいえる。顧客のリアルを知り、現場の痛みに寄り添いながら、価値あるプロダクトを形にしていく。そのためには、現場に出ること、小さく試すこと、フィードバックを得て改善することの繰り返しが不可欠だ。

自治体との共創──“売り込み”ではない関係構築

 DAY2では、「自治体と企業の共創」に焦点が当てられた。自治体側は「公平性」や「失敗への慎重さ」といった制約を抱えており、企業側がソリューションを売り込むだけでは成果につながらない。
 重要なのは、自治体が掲げる“地域課題”と、自社の“ミッション”を重ね合わせる対話から始めること。そして、「共に創る」という姿勢を持つこと。
 ここで改めて問われるのは、三井情報の“社会課題に対する構え”である。私たちはどんな課題を、どんな技術やナレッジで解決できるのか。共創を目指すには、技術力だけでなく、“社会への眼差し”が必要なのだと痛感した。

組織能力の転換──新規事業に必要な“0→1”の力

 大企業における新規事業創出の最大の壁は、「既存事業の組織能力はそのまま使えない」という点にある。マーケティング、セールス、開発──これらの機能は既に存在していても、未知の市場を切り拓く“0→1の力”は別物である。
 既存事業では「決まったものを効率よく提供する」のが強みである一方、新規事業では「決まっていないことを定義し、動きながら学ぶ」力が求められる。新しいチャネル、表現、顧客理解──すべてを一から設計する必要があるのだ。
 このギャップを超えるには、内部アクセラレーターのような伴走支援や、初期フェーズでの自走力が不可欠であると改めて感じた。

最後に──動かすのは、人。つなぐのは、熱。

 新規事業 大会議 2025に参加して、いちばん強く感じたこと。
 それは、制度でも戦略でもない。動かすのは、“誰かと語り合いたい”という想いと、“ちょっとやってみよう”の一歩だった。

 懇親会で笑い合い、肩を並べて記念に一枚。通信・製造・SIer、それぞれの業界を越えて出会い、共創の架け橋をかたちにした瞬間だった。

 そこでは自然とアイデアが湧き、気づけば「また集まろう!」という流れに。
この一枚に映っていたのは、ただの記念ではなく、動き出す未来の“はじまりの種”だったのかもしれない。

 私たち三井情報がこれから挑むのは、「何をつくるか」ではなく、「誰と、なぜつくるか」。
問いを立て、人とつながり、未来を動かす。──すべては、そこから始まる。

執筆者

前川
イノベーション推進部 第二技術室
官公庁向けのITコンサルタントとして従事後、2024年度新設のイノベーション推進部へ異動。
現在は、自社技術を活かした共創・実証により、新規事業や社会課題解決型の価値創出を推進中。

三井情報グループは、三井情報グループと社会が共に持続的に成⻑するために、優先的に取り組む重要課題をマテリアリティとして特定します。本取組は、4つのマテリアリティの中でも特に「情報社会の『その先』をつくる」「ナレッジで豊かな明日(us&earth)をつくる」の実現に資する活動です。

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