コンタクトセンターのクラウド化
これまでMKIナレッジにて、コンタクトセンターのクラウドシフトについて紹介してきました。
前回コラム「コンタクトセンターシステムのクラウドとオンプレミスの比較」では、コンタクトセンター向けのクラウドサービスとオンプレミス製品についての比較を実施しましたが、クラウドサービスは機器の調達・セットアップが必要ないので、導入がスムーズで、資産を持たなくてよいといったメリットがあります。
三井情報の提案においてはクラウド、オンプレの引き合いどちらもある状況ですが、クラウドを第一希望とするお引き合いが増えており、この傾向は更に進んでいくと感じられます。特に、小規模なセンターを開設するといった場合などは費用対効果も含め、オンプレで検討するユーザは今後減少していくと思われます。
よろしければ過去のコラムもご覧ください。
- ユニファイドコミュニケーションとコンプライアンスレコーディング
- 社会の変化とコンタクトセンターのあり方 ~レコーディングソリューションの視点から~
- 「音声基盤のクラウド化」 にみる業務変革・働き方改革
昨今のコンタクトセンター事情
さて、少し話は変わりますが、コンタクトセンター事情についても少し述べたいと思います。
近年はスマートフォンの普及もあり、商品問い合わせや問題があるときは、いきなりコンタクトセンターに問い合わせするのではなく、自身で解決を試みるユーザの割合が7~8割になっているという調査結果があります。つまり、センターに問い合わせにくる顧客は残り2割自己解決に至らなかったユーザということになります。恐らく皆さん自身も何か困ったとき、センターの電話番号を調べるより先にネットで検索といった選択肢を取られるのではないでしょうか。そのためユーザが検索するワードを予測して、公式サイトへの誘導、FAQサイトの整備といったことがCX(カスタマーエクスペリエンス)向上につながります。また、これらを利用すると自己解決率を上げることにつながるため、オペレータの稼働率を下げる効果も狙えます。
続いて、タッチポイントの増加です。
SNSをやっている方であれば、InstagramやTwitterなどで公式アカウントから困っているユーザアカウントへ状況をヒアリングするといったシーンも見かけるようになったかと思います。新しいチャネルへの対応とあわせ従来の電話、チャット、E-mailなど多種多様なタッチポイントからアクセスしてくるユーザとオペレータをシームレスにつなぐことも必要になっていると言えます。
そこで今回はワンプラットフォームでオムニチャネル対応、ボット連携や、ナレッジベースなども提供可能なNICE CXone(以下 CXone)をご紹介したいと思います。
NICE CXoneの概要
CXoneは電話基盤をはじめとしてコンタクトセンターのアプリケーションを広範囲でカバーするクラウドサービスであり、アメリカを始め、EU、オーストラリアなど多くの地域で利用されています。

CXoneは2016年にNICE社が inContact社を買収し、inContact からCXoneに名称変更したサービスになります。前身である inContact社は2005年頃からクラウドサービスを提供している企業です。本サービスは、複数の調査&アドバイザリー企業からリーダポジションを得ており、非常にパフォーマンスの高いサービスであると言えます。
これらを裏打ちするように、利用ユーザ数は2016年から2022年時点でおよそ2倍に増加し、グローバルで70万シートを達成しています。日本リージョンでの販売は今年2月に始まったばかりですが、既に国内導入も進んでいます。
NICE CXoneの提供機能について
CXoneが提供している機能はおよそ表のとおりです。

ご覧の通り多くの機能を提供しているサービスになります。
一つ一つ紹介すると、壮大な記事になってしまうため、今回は他のクラウドサービスと比較したときの特徴に絞ってご紹介していきます。
ⅰ.フルクラウドサービス
CXoneは全てクラウドで提供されるフルクラウド型のサービスになります。そのためDCの準備やサーバなどを気にする必要が無く、PCとヘッドセット、インターネット環境があれば、コンタクトセンターを開始できるサービスです。
ⅱ.アプリケーションの豊富さ
前項でも紹介しましたが、CXoneの提供する機能は非常に多く、センターの将来を見通した設備拡張にも対応できるサービスになります。

以下の図はコンタクトセンターの拡張例になります。PBXやレポート機能からスタートして、チャットやデジタルチャネルの利用、WFM(ワークフォースマネジメント)やコーチングなどで応対品質管理、AIの導入というように、ライセンスをアクティブにするだけで、センターの成長に合わせたシステム構築が可能になります。

もちろんこれらは全てクラウドサービスで提供されるため、機能拡張に伴う機器の追加は不要です。
ⅲ.豊富なチャネルと簡単な連携
CXoneは電話、チャット、E-mailといった基本的なチャネルに加えて、LINEやInstagramといった複数のデジタルチャネルをサポートしています。日本で対応しているデジタルチャネルは20種類(2022年11月時点)を超えており、これらはノーコード/ローコードでの連携を実現しています。対応チャネル以外のデジタルサービスについても、APIを使った連携をサポートしているため、企業がもつIT資産を柔軟にアドオンすることが可能になっています。

また、SalesforceやServiceNowといったサービスともノーコードで実現する連携モジュールをもっています。現在利用中のIT資産を開発不要で連携できる点は非常に強みになると考えています。
ⅳ.近年の需要に対するソリューション ~AIやチャットボット対応など~
近年需要が高まっている機能の一つにボットを利用した応答サービスがあります。弊社の提案の中でもよく見かけるようになったので、これらの対応状況についてご紹介します。
CXoneは、仮想エージェント管理する機能を有しており、ボット連携もノーコード/ローコードでの連携を実現しています。
現時点ではこの管理機能を利用してGoogleのDialogflow(CX,ES)とCXone Smart Assistサービスを連携可能です。また、Amazon Lex、IBM Watson AssistantやAzure Bot Serviceについては今後正式リリース(※)を控えています。
また、ボット作成に関して、ボットビルダーという機能のリリース(※)を控えています。この機能はノーコードでボットを作成するツールになります。リリース情報を見る限り、動作アイコンをドラッグ&ドロップしてボットを作成できるという機能のようです。ボット作成はまだまだ専門性が必要なものなので、簡易操作で作れる機能は非常に心強いと思います。この機能は市場にお届けできるのが楽しみな機能になります。
CXoneはナレッジベースツールもオーダーできるのですが、弊社としては未検証のためお届けできるのはもう少し時間が掛かりそうです。
(※)未リリースの機能については、2022年11月時点の情報になり、今後変更になる場合がございます。
まとめ
今回はコンタクトセンター向けのクラウドサービスをご紹介いたしました。
三井情報では今回ご紹介したCXoneやGenesys Cloudを始めとしたコンタクトセンター向けのクラウドサービス、オンプレミス製品などを多数提供しております。長年のコンタクトセンターシステムの導入で培った経験をもとに、新しい時代のコンタクトセンター作りに貢献していけるように日々研鑽をしております。
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岩井川
業務ソリューション技術部 第二技術室
コンタクトセンター向けのクラウド製品の評価、通録・音声認識の評価・導入支援に従事。
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